第238話 【集合体の悪魔・5】
グレンが悪魔を〝最強の魔法剣〟で切り裂いたのは、その戦いをしたから見ていたベル達も見ていた。
絶命の瞬間まで叫び、激しく魔法を乱発すると集合体の悪魔。
その悪魔に対しグレンは、ただ魔力を剣へと流し悪魔をこの世から消し去った。
「……ふぅ~。他の悪魔と違って、最後少し抵抗されたな」
これまでの悪魔だったら、あの魔法剣が切り裂いた瞬間この世から消え去っていた。
しかし、6体の上位悪魔の集合体である〝集合体の悪魔〟は数秒間持ちこたえたが結局、その身はこの世から消えた。
グレンはそんな悪魔に少し称賛するような感じで呟くと、全身から力が抜け落ち落下し始めた。
(お疲れ様、グレン。よく頑張ったわ)
そんなグレンを実体化したフレイナは優しく包み込むと、地面に降りグレンを横に寝かせた。
「……流石のグレンも魔力を使い果たしたみたいだな」
そんなグレンの元に離れた場所から見ていたベル達が集まって来て、寝ているグレンの姿を見たベルはそう言った。
「ええ、子供達の魔力も大分使って私以外の妖精達も疲弊してるわ。後の事は、貴方達に任せてもいいかしら? グレンを静かな場所で休ませてあげたいから、一時間くらいあればグレンも眼を覚ますと思うから」
「ああ、結局オレ様は何の役にも立たなかったからな、グレンが寝てる間に掃除くらいはやっておく」
「頼んだわ」
ベルとそう話したフレイナは、グレンと妖精達と共に転移魔法でその場から消えた。
フレイナが居なくなった後、ベル達はまず他の所に散り散りになっていた者達を一度集める事にした。
「んっ? グレンがいないようじゃが、何処か行ったのか?」
帝都の戦いを知らないマーリンは、グレンが居ない事に気が付きそうウォルドレットに尋ねた。
「グレンなら戦いで魔力の底が来て、今は休んでるよ。流石に僕もあんな戦いをした後に、グレンに掃除をさせるのは気が引けるし、この位は僕達が頑張ろうって見送ったんだ」
「成程の、儂も遠くからじゃが強大な魔力同士が戦って居るのは気が付いておったが……あんな奴と戦ったグレンは、相当化け物じゃな儂以上に」
「マーリンも僕も、普通の人間からしたらそりゃ強者な部類だけど、グレンはもう一つ先の次元に行っちゃったよね。だって、上位悪魔6体が集まった悪魔を一人で戦って勝っちゃったんだから」
そうウォルドレットが言うと、マーリンは「掃除が終わったら、後で詳しく聞かせてくれ」とウォルドレットに言った。
そんなマーリンの言葉に、ウォルドレットは「勿論、話すさ」と笑みを浮かべて言った。
「あんな凄い戦いを話さないって僕の気持ちが収まらないよ。詩人に話して、これからの時代に残しておくべき戦いだったな、だよね皆」
そうウォルドレットが帝都で戦っていた部隊の者達に聞くと、その者達は揃って頷いた。
「あの戦いは本当に凄かった」
「迫力っていうか、その次元の違う戦いで」
「言葉で言い表せない自分の語彙力が憎い……」
「こ、ここまで言わるほどの戦いをしておったのか……この場に居る者達の殆どは、Sランク冒険者でそれ相応の修羅場をくぐって来た者達じゃぞ?」
戦いを見ていた者達が口を揃えて「凄い」や「次元が違う」と言っている事に、マーリンは自分が見れなかった事を内心悔しがっていた。
「これなら、儂も無理して魔法剣取得してそっちに行けばよかった……」
「それが無理だったから、グレンや僕に教えたんでしょ? それに、途中からだけど映像も少しとってるから、それで我慢してよ」
「なにっ!? ウォルドレット、それは本当か!」
「うん、最後の戦い。僕とベルって基本的に、皆を守るだけで特にやる事が無かったんだよね。だから、戦いを見る序にとっておこうかなって」
ウォルドレットはそう言うと、異空間から録画の魔道具を取り出した。
それを見たマーリンは「後で絶対に見せるんじゃぞ!」と言って、その後の悪魔捜索を張り切って行った。
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