第233話 【激戦・5】
サタンの魔法は、激しい魔力の波動を放出しながらウォルドレットへと向かって行った。
そんな魔法に対して、ウォルドレットは逃げずクロを両手で持つとクロはその魔法を全て吸収した。
「ッ! この、ゴミ種族めッ!」
またもや自慢の魔法を忌み嫌う相手に無効化されたサタンは、更に怒りを増幅させた。
そしてあろうことか、魔法を捨て肉弾戦をウォルドレットに仕掛けようと、肉体を強化させウォルドレットへと接近して行った。
そんなサタンとウォルドレットの戦いを上空から、グレンとベルは眺めていた。
「グレン、手助けはしなくて良いのか?」
「んっ? 危なくなったら入ろうとは思ってたが、今あの戦闘に入ったら俺がウォルドレットに怒られそうだからな」
怒りに任せ暴れているサタンとは違い、ウォルドレットは笑みを浮かべ楽しそうに戦っていた。
「あんな激しい戦いしてるのに、笑顔を浮かべてるんだぜ?」
「悪魔の、それも上位悪魔と一対一で笑顔で戦う奴なんて化け物か狂人くらいだが、あいつは両方だな……」
グレンの言葉に対し、ベルも呆れた顔をしてそう言った。
「それじゃ、下の連中の加勢はどうする。一応、元とはいえあの皇子がいるから多少はこっちが優勢みたいだキッそうだぞ?」
「そっちも様子見だな、あいつら自分達が訓練してどれくらい強くなったのか試したいって言って、本当に危なくなった加勢してくれって言われてるんだよ」
「悪魔との大事な戦いなのに、そんな事して大丈夫なのか?」
「一応、俺の下に付いてはいるが全員が高ランクの冒険者だからな、冒険をしてみたいんだろうよ」
「人間ってのはつくづく変な奴等だな……」
ベルはそう言うと、ウォルドレットから重い一撃をくらい吹き飛ばされたサタンの方へと視線を向けた。
「ベル、どうした?」
「なあ、グレン。さっきの上位悪魔達との戦いで俺も感じたんだがよ。手応えあったか?」
「正直そこまで無かったな、一瞬で終わってこの程度か? って思った」
「だよな、そこが何か気になってよ……他の悪魔達もそうだが、なんか動きが鈍いんだよな。下の連中と戦ってる悪魔、下位とはいえ人間にあそこまで一方的にやられてるのはおかしい気がするんだ」
ベルのその言葉にグレンは、下で妖精達に指示を出しているフレイナを呼び出した。
「どうしたのグレン?」
「なあ、フレイナ。さっき俺が片付けた悪魔達だが、偽物とかそういった類のものじゃないよな?」
「違うと思うわよ? どうしたの、アッサリ倒したから何か気になったの?」
フレイナの言葉にグレンは頷いた。
そんな風にグレン達が話していると、急に上空の〝黒雲〟に異変が起きた。
「ッ! フレイナ、ベル! 下の連中を守るぞッ!」
その異変にグレンは、直ぐにそう指示を出した。
グレンの言葉にフレイナとベルは、直ぐに反応をして下で戦っていた者達を一カ所に集め結界を発動させた。
「グレン、ウォルドレットはどうするんだ?」
「あいつは大丈夫だ。クロもついてるからな」
そうグレンが言ったと同時に上空の黒雲が増幅し、大爆発を起こした。
黒雲に溜め込まれていた魔力がそれにより、放出され帝都の城は木端微塵となり城下町も酷い有様へと変貌した。
その変貌に部隊の者達は驚き固まっていると、上空に一体の人影をグレンは視認した。
「ッ!」
その人影から放たれる魔力の濃さ、そしてこの場からも感じる圧にグレンは一瞬怯んでしまった。
「……あいつら、何の準備もせずにいたんじゃなかったんだ」
「ベル、何か知ってるのか? あいつは何者なんだ?」
「……悪魔の集合体。それがあいつだ。六体の上位悪魔、そして数百の下位悪魔が集められている」
ベルのその言葉にグレンは息を飲み、上空に佇む悪魔はそんなグレン達を見てニヤリと笑みを浮かべた。
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