第232話 【激戦・4】
グレンやベル同様に、上位悪魔の一匹と戦闘をしているウォルドレット。
担当上位悪魔の名は、憤怒の悪魔。
最後の上位悪魔であり、その中でもベルと同様の別格の存在。
「中々、やるな人間」
「それは、どうも~君も結構耐えるね。かなり、強い魔法使ってるんだけど?」
「ふんっ、この程度の魔法。我には効かぬ」
憤怒の悪魔とは名ばかりに、その悪魔は冷静にウォルドレットと戦闘をしていた。
互いに強力な魔法の使い手。
若干、魔量の総量が上手なのは憤怒の魔法。
だが使える魔法の数で言えば、ウォルドレットが圧倒的に多い。
更にウォルドレットには強力な味方、黒影族のクロが居る。
憤怒の魔法が放つ強力な魔法は、大体クロが吸収してウォルドレットには一発も当たっていなかった。
「小賢しい種族だ。我の魔法をいとも簡単に飲み込みおって」
ウォルドレットに対しては冷静な憤怒の魔法。
しかし、自分の魔法を飲み込み平然をしているクロには若干イラついていた。
「ふふっ、悪魔の魔法も飲み込むクロ達が悪魔界を占領しなくて良かったね~」
「……人間。それ以上の事は言えば、胴と頭部を引きちぎるぞ」
それまで戦闘中は怒りを露わにしなかった憤怒の悪魔は、ウォルドレットの煽りに物凄く反応した。
それを見たウォルドレットは、ニヤリと笑みを浮かべた。
そしてクロを両手で持ち、顔にスリスリとさせながら憤怒の魔法を煽り始めた。
「ふふっ、僕に攻撃が出来るならすれば~? まあ、魔法で攻撃してもクロが居るし、僕も反撃するから無理だと思うけどね」
「ッ!」
憤怒の悪魔の怒りのポイントが〝黒影族〟だという事に気が付いたウォルドレットは、クロを見せながらそう煽った。
すると、憤怒の悪魔は予想通り、先程までの冷静な攻撃から破壊的な攻撃が多くなった。
「お~、クロ。こんな凄い魔法も飲み込めるのか、凄いな~」
「~」
しかし、それら全ての攻撃は〝クロ〟によって全て飲み込まれてしまった。
そして一旦魔法が落ち着いた所で、ウォルドレットは反撃の魔法を憤怒の悪魔に放った。
その魔法は今までの魔法よりも、早く威力の高い魔法だった。
「ガハッ」
「ふふ~ん、僕が今まで本気だと思ってた? 残念、僕も力を温存してました~」
「このっ、クソ人間がッ!」
散々煽られた憤怒の悪魔は器である肉体が壊れそうな程、魔力を蓄積させ吠えた。
そんな憤怒の悪魔を観察していたウォルドレットは、ニヤリと笑みを浮かべ「馬鹿だね~」と更に煽った。
「さっきまで冷静だったのに怒りに任せて、そんなバカでかくなっちゃって……ねえ、僕が何で君を煽っていたか気づいてた?」
「……」
「無言って事は今気づいたのかな? こっちには、君たちの事を良く知ってる仲間が居るんだ。当然、君との戦い方もベルから念のために聞いてたよ。冷静な時は面倒だけど、怒ると単純で戦いやすいって」
グレン達は事前に上位悪魔がどんな者達なのか、ベルからそれぞれの特徴などを教えて貰っていた。
その中でも特に悪魔界でも名の知れていて、力を見せていた者達の事は詳しく教えて貰っていた。
その中に、ウォルドレットが相手をしている憤怒の悪魔は入っていた。
「クロから魔法を飲み込まれる時、君大分イラついてたよね? 最初、魔法が効かない事に対してかな? って思ってたけど、そうじゃなくてただ〝黒影族〟に対してイラついてただけだったんだよね」
考察をそう披露したウォルドレットは、目の前で魔力を蓄積して体が大きくなった憤怒の悪魔を見上げた。
「弱点ってのは隠しておかないと駄目だよ。分かり易いと、敵に付け入られるからね」
「……人間。話はそれだけか? 確かに、そこの黒い奴に対し怒り冷静さはなくなってる。しかし、冷静でなくなった我がお主に負ける?」
憤怒の悪魔はそこで両手に広げ、獰猛な顔で吠えた。
「我は、憤怒の悪魔サタン! 人間如きに負ける訳が無いであろう!」
そう叫ぶと膨大な魔力を放出しながら、ウォルドレットへと巨大な超威力の魔法を放った。
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