第23話 【帰還・3】
その後、グレンが話した全ての事を何とか理解した二人は疲れた表情をした。
「……グレン。この事、本当に俺達に話して良かったのか?」
「最初は、別に隠すつもりは無かったけど、面倒事が起こるって言われて必要以上には話さないって決めたんだよ」
「成程な、それで俺達に話したわけか……」
「そっ、まあ俺が世話になってたというか、当時の俺と真面に付き合いがあるのってルドガー達くらいしかいないけどね」
一年前のグレンは、噂のせいで人との関わりは殆ど無い状態。
関わりがあったのは、ギルド職員であるルドガーと商人であり夜の店のオーナーでもあるフローラ位である。
「ああ、そういやフローラ。店の子達、あれから何もなかったか?」
「一応、何も問題は起きてないわよ。ただ何処かの誰かさんが行き成り消えて、空気が少し暗くなってるわ」
「……あの、お金が出来たらまた遊びに行くんで」
「ええ、待っているわよ」
グレンはフローラの圧に少し、委縮してそう答えた。
するとフレイナから「また女遊びするの?」と、ここからも少し強い圧を受けたグレンは慌てて否定した。
「いや、ほら当時世話になってた人達だから、会うだけだよ! フレイナだって知ってるだろ!」
「えっ、グレン。遊ばないの?」
グレンの否定の言葉に、フローラは素で疑問に思いそう返した。
「いや、さっきも言った通りさ一回脳を壊して、元通りにしたって話しただろ? 元に戻る前の俺って、異常に性欲が強かったのは精神を安定させる為に負の感情を全て性欲に持って行ってたんだよ」
「そ、そんな事をしてたのね……いやでも、そう考えるとあのグレンの遊び方だと説明が行くわね」
「俺その話に入れないんだが、グレンお前どんな遊び方してたんだよ……」
グレンの性欲事情には全く関与していないルドガーは、ただ単にそう会話を聞いただけで引いた様子になった。
そんなルドガーに対して、グレンは「そこまで酷くはなかったと思うぞ……」と答えると、フローラがその言葉を否定した。
「取り敢えず、一人で相手は出来ない状態だったわね。常に3人以上が相手してたし、一番多い時はお店の子全員と遊んでたわね」
「おいおい、マジかよ。全員って、フローラの店の子って20人近くいなかったか?」
「いや、ほらその時は迷宮帰りで相当溜まっててさ……」
「アルラウネに欲情した時ね」
フレイナのその爆弾発言に、フローラとルドガーは「えっ!?」と信じられないと言った顔でグレンを見た。
「グレン。それマジかよ……」
「グレン。貴方、そんな性癖が……」
「ちょっ、違うから! その時、色々とヤバかったんだって!」
冷めた目で見つめる二人にグレンは必死に弁明し、クスクスと笑っているフレイナに「誤解を招く言葉は止めろ」と叫んだ。
その後、何とか誤解を解いたグレンは疲れ果てた様子でソファーにグッタリと座った。
「あ~、マジで疲れた。何で話すだけで、こんなに疲れんだよ……」
グレンはそう愚痴を零し、ルドガー達を見ると何故か微笑ましい目で見つめられている事に気付いた。
「お前ら、何でそんな目で見てるんだ?」
「いや、あのグレンがこんなに感情を表に出してるのが不思議な感覚でな」
「そうね。こんなグレン初めて見たもの」
「……まあ、こっちの俺が本物というか正常だから、これに慣れてくれよ。毎度その目で見られたら、恥ずかしいからな」
そうグレンが言うと二人は笑い、グレンを笑みが零れた。
そんな三人の様子をフレイナは見て、ここに来て良かったと心の底から思った。
「さてと、俺の話が大分長くなったけど、次はそっちの話を聞きたいな。この一年間で変わった事とか、そう言うの聞きたいんだが」
「まあ、そうだよな。一年間、外と完全に遮断された所で生活してたもんな」
そうルドガー言うと、部屋の外から「ドタドタ」と誰かが走って向かってくる音が聞こえた。
その音に、取り敢えずフレイナには姿を消す様に言ったグレンは、部屋をバンッと開けて入って来た人物を見て固まった。
「グレン君ッ!」
「マリアさん!?」
入って来た人物はグレンが幼少期に世話になった相手、故郷の教会で働くシスターのマリアだった。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。





