第228話 【黒雲下の戦い・4】
その魔法に対し、ウォルドレットはその場に留まったまま魔法に何かしら対応しようとしなかったる
しかし次の瞬間、ウォルドレットの前に黒い壁が現れると、グリードの放った魔法はその壁に吸い込まれて消えた。
「……黒影族か」
グリードはその壁の正体を一発で見破ると、ウォルドレットは頭に乗っているクロを優しく撫でた。
「力が通用するか試したいって言ってたけど、無事に通じてるみたいだね。よくやったよクロ」
「~」
主人に褒められたクロは、嬉しそうに揺れた。
そして魔法を吸い込まれたグリードは、クロを睨みつけた。
「ちっ、今更〝黒影族〟に嫌な気分にされるとは、思ってもいなかったぜ……」
静かにそう呟くと、グリードは複数の巨大な魔法を同時に放った。
今度はその魔法に対し、ウォルドレットは避けて反撃の魔法を放った。
そして先程よりも激しい、魔法戦が始まった。
「なあ、あいつって基本普通の人間だよな? グレンと違って、バカみたいな数の妖精と契約してるとかそういうの無いんだろ?」
「聞いた話ではそう言うのは無いな、ただあいつの場合何かあってもおかしくないとは思ってるよ。賢者や聖女の名に隠れて、力を持ってる冒険者は沢山いるがその中でもウォルドレットは異質な存在だと俺も思ってる」
魔法、従魔、剣術、それらの才能を全て持っていて、人脈も他国を渡り歩いてるだけあり沢山ある。
「正直、あいつは従魔と強い相手以外に興味を持たない奴で良かったと俺は思ってる」
そうグレンが言うのは、力を持ち馬鹿な考えをしてきた者達を目の当たりにしてきたからこその本音だった。
その後、ウォルドレットとグリードの戦いは激化して、いつの間にか両者共に地面に降りて来ていた。
「ふぅ~……君、何かまだ隠してるよね?」
「……よく気付いたな」
「だって、君の魔力殆ど減ってないからね。流石に気が付くと、僕の事舐めてるの?」
「まあ、舐めてるぞ? そこに居るグレンは危険人物だと認識してるが、お前はただ魔法がちょっと使える人間だ」
グリードはウォルドレットの質問に対して、真顔でそう返答した。
「やっぱり、そっか~。まあ、確かにグレンには劣ってるって自覚してるけど、そこまでハッキリ言われるちゃうとさ~……怒るよ?」
「——ッ!」
グリードの言葉にウォルドレットは、今までのふざけた様子から一変して能面のような顔つきとなり、グリードへと襲い掛かった。
魔法戦によって、魔力を殆ど削られていたウォルドレットだった。
しかし、いつの間にかその魔力も回復していた。
「あんなウォルドレットさんの姿見た事ない……」
同じ部隊に所属していた一人の冒険者がそう言うと、他の者達も同じような事を言い。
グレンもまたあんなウォルドレットは見た事が無く、様子の変化に驚いていた。
基本、笑みを浮かべているウォルドレットだが、喜怒哀楽はハッキリとしている人物なのはグレンも知っている。
しかし、あんな冷たい表情をしたウォルドレットは、今まで見た事が無かった。
「さっき、ウォルドレットをグリードが馬鹿にしていたが、あれでウォルドレットが切れたのか?」
「切れたとしても、あんな冷たい表情をするか? 怒ったウォルドレットは何度か見た事があるが、あんな姿は見た事が無いぞ……」
その後、周りが驚く程変化したウォルドレットは休む事無くグリードを襲い続けた。
そして〝最強の魔法剣〟をグリードの腹部へと突き刺し、そのままグリードをこの世から消し去ってしまった。
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