第227話 【黒雲下の戦い・3】
グレンとウォルドレットは、その男の魔力を見ただけでこいつもまた上位悪魔の一人だと直ぐに認識した。
「ベル。あいつは、何の悪魔だ?」
戦いが終わりグレン達の横に戻ってきていたベルにグレンがそう尋ねると、ベルはその男を睨みながらその悪魔の正体を伝えた。
「強欲の悪魔。上位悪魔7体のうちの一体だ」
「やっぱりか、それでそいつは味方の応援にでも来たのか?」
未だ上空に佇むその悪魔から目を離さずそうグレンが言うと、ベルが「いや」と否定する言葉を口にした。
グレン達の会話が聞こえていたのか、その悪魔はニヤリと笑みを浮かべた。
その悪魔は空中に浮かせている傲慢の悪魔の胸を自身の手で突き刺すと、黒い球の様な物を取り出した。
「うぇ、何してんのあいつ……」
「……悪魔には死の概念が無かったと伝えたよな? だが、それに近しい概念はオレ様達にもある。それは、自身の貯えた力を奪われるという事だ」
本来の姿であれば、そんな事も出来ない。
しかし、人間の体に入っている悪魔からはそいつの力を奪う事が出来ると、ベルはグレン達に伝えた。
「成程な、って事はアレは止めた方が良いって事だよな? あいつ、俺達の会話を聞いてるって事はわざと遅らせてるって事だよな?」
「あいつも性格が悪いからな、たださっきの奴とは違って名の通り〝強欲〟であいつは今まで沢山の悪魔の力を奪い取って来てる。さっきの奴よりも強いぞ」
ベルのその忠告を聞いたグレン達、ここは一斉に攻撃かとグレン含めその場に居る者達が戦闘態勢に入ろうとした。
しかし、そのグレン達を止める者がいた。
「……ウォルドレット、何してんだ?」
「ん? いや、さっきのベルの戦い見てたら、ウズウズしちゃってさ! 僕も一人で戦ってみたいなって、危なくなったらちゃんとグレン達の手も借りるからさ挑戦してみても良いかな?」
「良いかな? ってお前な……」
ウォルドレットの言葉にグレンが呆れて溜息をつきと、了承を得る前にウォルドレットはグレン達の前から消えて上空に浮かんでいった。
「ベルから見てウォルドレットとあいつが戦ったら、どっちが勝つと思う?」
「オレ様はウォルドレットの全てを見た事が無いから分からないが、強欲の奴の方は何度か戦いを見た事があるから大体の戦い方は知ってる。奴は接近戦は苦手だが、遠距離での攻撃は得意で何種類の魔法を同時に使って来る」
「魔法使いタイプって事か?」
「傲慢とは違い接近戦に持ち込めば一気に行けると思うが、あいつは自分の弱点も理解してるから接近戦に持ち込む事がまず難しい」
ベルがそう言うのと同時に、ウォルドレット達の戦いが始まった。
初手ウォルドレットは、強欲の悪魔に対して魔法を放つと、同系統の魔法を強欲の悪魔は放ち相殺をした。
その行為にウォルドレットは笑みを浮かべ、更に魔法を放つと同じように強欲の悪魔も続けた。
「……もしかして、あの悪魔とウォルドレットって性格似てんじゃないか?」
ベルの言葉にグレンは、思うところもあり「そうかもな」と呟いた。
そんなグレン達が話してる間もウォルドレットと強欲の悪魔は、互いに魔法をぶつけ合い笑い合っていた。
「おい、人間。お前、名前なんて言うんだ?」
「ウォルドレットだよ。君は? 強欲の悪魔としか聞いてないけど」
「グリードだ。ウォルドレット、お前今まであった事のある人間の中で一番面白いぞ! その体、俺にくれないか?」
「はは、嫌だね」
悪魔の言葉に、ウォルドレットはそう否定した。
すると、グリードはウォルドレットが普通に返答した事に笑みを零すと、獲物をみつけた狼の様な表情をした。
「はは! なら、奪ってやるさ!」
グリードはそう叫ぶと、先程までのぶつけ合いの魔法を遥かに超える魔法をウォルドレットに向けて放った。
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