第225話 【黒雲下の戦い・1】
作戦その1は本来であれば、城内に乗り込んで出て来た悪魔を倒して行く予定だった。
しかし、城の前でウォルドレットが言った。
〝城ごと吹き飛ばす〟
という案を聞き入れたグレンは、取り敢えずそれを実行する事にした。
「最後に確認だが、ウィルド。やっていいんだな?」
「うん、一思いにやっちゃって良いよ。この後の事は、その時にグラムと考えるから」
ウィルドに確認をとったグレンは、ウォルドレットとベルに合図を送り三人の超威力の魔法を同時に放った。
的である城に三人の魔法が当たると、結界の様な壁が現れた。
しかし、三人の力があまりにも強く、その壁は数秒と持たず砕け散った。
壁のせいでいくらか威力が落ちたが、城の左右の塔と城門から数m先を消し飛ばした。
「流石に対策されてたみたいだが、ごり押しで行けたな」
「そうだな、特にグレンの魔法は威力が桁違いだったな、それが妖精の力か?」
「ああ、妖精と契約すると魔力が増えるからな、俺の場合数百の妖精と契約してその分魔力が上がってる」
「……本当にこっちの味方になって良かったとつくづく思うぜ」
ベルは呆れた口調でそう言うと、もう一人の魔法を放った人間、ウォルドレットの方へと視線を移した。
「それでグレンは妖精の力で強化されてたから強いのは何となく想像できてたが、お前も中々魔法の威力高かったな」
「まあね~、魔物と戦うのに魔法って便利だから頑張って覚えたのが役に立ったよ」
「ウォルドレットは数年前から、賢者の次位に魔法の腕は高かったからな……流石にマーリンを超す事は出来てないが、魔法に関して煩いあのマーリンが認めてる一人だからな」
ウォルドレットの力に感心していたベルにグレンはそう説明をすると、待機していた者達と一緒に壊れた城門から敷地内へと入った。
城の知識内に入ったグレン一行だが、その瞬間グレン達は地面に手を付くほど上から押さえつけられる圧を感じた。
その圧にグレン、ウォルドレット、ベルは平然としているが、他の者達は苦しそうな表情をして何とか立ち上がった。
元悪魔憑きであるウィルドでさえ、苦しそうな顔をしている。
「向こうも黙って待ってる訳じゃないって事か」
「みたいだね~、それにしてもこの重力の魔法。かなり凄いね」
「こいつは俺と同じ上位悪魔の一人の技だな、あいつは範囲攻撃に長けた能力をしてるから他の奴とは別で動いてるんだろうよ」
「【傲慢】だったか?」
「そうだ。傲慢の悪魔、上位悪魔の中でも上位三体に入る悪魔の一人だ」
そうベルが言うと、先程と同じような重力の圧を感じると目の前に一人の男が現れた。
現れた男にグレン達は身構えると、その男はベルを見つめ怒気を含ませた声色で話しかけた。
「おい、ベル。いつから俺達を裏切るつもりでいた?」
「お前等とグレン、どっちに味方になった方が良いかオレ様の冴えわたる頭脳で考えた結果だよ」
ベルは煽る様にその男に言うと、その煽り言葉にまんまと怒気が高まった男は咆哮を上げた。
「グレン、これであいつは単純な魔法しか使えなくなったぞ、後は殴り合いだ」
「事前に言ってた力は強いが馬鹿な悪魔とは、こいつの事だったのか?」
「ああ、傲慢な奴でな自分が一番強いと思っていて他者から見下されたり、馬鹿にされる事が一番嫌いな事なんだよ。普通の時は多種多様な魔法で相手を追い込むが、怒りに任せて魔法を使うようにすれば後は簡単な力と力のぶつけあいって訳だ」
「だからわざと煽ったんだな……まあいい、ベル。こいつはお前がやってくれるんだろ?」
そうグレンが聞くと、ベルはニヤリと笑みを浮かべた。
「当たり前だ。オレ様の力の証明には持ってこいだし、最後の始末の時以外は手を貸すなよ」
「了解。まあ、その肉体はグラム兄さんの大事な肉体だから多少の怪我は仕方ないが、腕を吹っ飛ばしたりしたらぶん殴るぞ」
グレンはそう言うと、やる気満々のベルを置いて戦う気満々だったウォルドレットに「今回はあいつの獲物」だと伝え観戦するように言った。
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