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第224話 【静かな帝都・4】


 王国の城よりも大きい帝都の城は、上空に黒雲があり禍々しい雰囲気を漂わせている。


「ベル、気になってたんだがアレは雰囲気づくりか? それとも何かの魔法か?」


「両方だな、人間相手に臆して無いぞという意思表明とあの黒雲は悪魔族の能力を上げる魔法の一つだ。城に近づいた事で、俺もその恩恵を貰ってる」


 そう言うベルに対し、グレンは鑑定を使うと確かに能力値が上がっていた。


「悪魔達はベルが人間の味方をしてる事を知ってるんだろ? 何でこんなもの用意してるんだ?」


「俺一人だからだろうな、向こうは6体の上位悪魔が居るから俺一人に恩恵があったとしても使った方が良いと判断したんだろうよ」


「成程な、確かに6対1なら数的にも有利だし俺でも使うな……それでその恩恵を貰ったベルなら、どのくらい戦えるんだ?」


「俺達は互いにこれまで本気で戦った事がないから、確実に勝てるとは言えない。ただ負ける可能性はほぼ無いとは思うぞ」


 ベルは自信満々にそう宣言すると、グレンは「そうか、なら一体は任せられるな」と笑みを浮かべて言った。


「そういうグレンはどうなんだ? 俺を基準と見た時、何体なら相手出来るんだ?」


「……正直な所、俺自身も分からん。訓練の時は必死になって、悪魔への対策を色々用意してるから効果があればって感じだな、そうじゃなくても一対一に持ち込んで始末していけば何とかなるだろうとは予想してる」


「強気な意見だな」


「勝てないという思いは今の所無いな、向こうが俺に対してどういう対策をしてるかでも状況は変わるだろう。ただ俺だけを対処しようとしていたら、それはそれでありだとは思ってる。俺以外に警戒しないといけない人間が居ないと思い込んでいた方が、ウォルドレットの力は刺さるだろうからな」


 グレンはそう話を聞いていたウォルドレットへと、視線を向けて言った。


「そうだね~。僕も警戒してない相手なら、あの魔法剣をズバッて決めれるから楽だと思うな~」


「それにこいつの厄介な所は、従魔との連携も出来るという点だろう。俺の場合、妖精達の力は借りてるが連携は慣れてないからな、もしウォルドレットの存在を軽く見てくれていたら人間側としては有難いな」


「確かに、グレン程では無いがあの魔法剣も使えるしな」


 ふむ、とグレンの言葉を聞いたベルは納得した様子でそう言った。

 グレン達に頼りにされていると言われたウォルドレットは嬉しそうな顔をして、ウォルドレットの周りをウロチョロしていた従魔を抱きかかえた。


「……なあ、帝都に入ってからずっと気になってたが、その従魔は何だ?」


 昨日までその魔物の姿を見た事が無いグレンは、今更その魔物に指摘をした。

 全体は50㎝程で猫とあまり変わらないが、その見た目は真っ黒で目も鼻といった顔の形から足などもなく、ただの黒い生物であった。


「そう言えばこの子ずっと寝てたから、紹介するの忘れてたね。この子は、クロ。僕の従魔の中で一番強い子だよ」


「……何の魔物何だ?」


「う~ん、僕もそれは分からないんだよね~。ただまあ強いし、僕に懐いてくれたから従魔にしたんだよね」


 ウォルドレットはそう言うと、クロを抱きかかえ頭の上に乗せて撫で始めた。

 グレンはその様子を見て、ふと隣に視線を移すと、ベルが目を見開いて驚いた顔をしていた。


「お前、あの生物が何か分かるのか?」


「……絶滅したと聞いていたが、生き残りが居たんだな。種族の名はその見た目から〝黒影〟と呼ばれていて数百年前、悪魔界から人間界に移り住んだ者達だ」


「元悪魔界の生物……強いのか?」


「基本性格は穏やかだが、その能力は凄まじく強く性格が穏やかな奴等じゃなかったら今頃この世界も悪魔の世界もこいつらの住処になっていた筈だ」


 ベルの言葉を聞いたグレンは、詳しく話を聞いた。

 力の詳細はベルも昔の事過ぎて曖昧な部分があったが、一番の強み。

 魔法を一切効かないと聞いたグレンは、どうやってそんな生物が絶滅したのか疑問に感じた。


「絶滅した理由は俺達悪魔族も知らないが、悪魔の中でもそういった事に興味を抱いてる奴の話曰く、こいつらは寂しがり屋で誰からも相手されず追い出され続け、孤独死をしていったんじゃないかと言ってたな」


「……おかしな種族だな、でも何でそんな奴がウォルドレットの従魔になってるんだ?」


 改めてその謎に行きついたグレンは、ウォルドレットにどうやって出会ったのか聞いた。

 するとその出会いは以外にもあっさりとしたもので、クロが寝ている所にウォルドレット達が現れ、そのまま仲間になったとウォルドレットは言った。

 そのあっさりとした内容にグレンは溜息を吐き、この場でこれ以上追及する時間も無い為、これについてはこれ以上掘り下げない事にした。


「取り敢えず、そいつも戦力として見ていいんだな?」


「勿論、戦うの嫌いな子だけど僕が大変だから手伝ってって言ったらやる気を出してくれたから、大丈夫だよ」


 ウォルドレットがクロを両手で持ち前に出すと、クロは体を使ってやる気がある風に見せた。

 ベルも認める程の戦力だから大丈夫だろうと思ったグレンは、戦闘の合図をこの場に居る者達に送った。

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