第223話 【静かな帝都・3】
その後もグレン達は帝都の中を進み続けるが、出会うのは自我を失い彷徨う人だけで悪魔を一匹も見る事が無かった。
「ここまで悪魔が居ないと、逆に不気味だな……ベル、上位の奴等はまだ待ち続けてるのか?」
「そっちも動く気配が無いな、城内から魔力が動いていないな」
「上位の奴等はなにを考えるんだろうな、俺達の事は既に分かってる筈だろ?」
「ああ、流石にあの魔道具を外した時点で俺達が帝都に居る事はあいつらも気づいてるはずだ」
グレンの質問対しベルがそう答えると、グレンは「そうだよな……」と顔を顰めた。
正直、相手が待ち構えている場所に態々向かうのは嫌だなと感じていた。
「なあ、悪魔って罠とか使ったりするのか?」
「……どうだろうな、まずこうやって人間を警戒した事すらなかったから、あいつらがどんなものを用意してるのか俺ですら分からない」
ベルの回答にグレンは「そうか」と呟き、取り敢えずもしもの可能性も考えて罠に警戒するように言った。
「でも罠って言っても、城内にいるなら城ごと吹き飛ばせばいいんじゃない? どうせ、城内に人間はいないだろうし」
「……お前、それよくウィルドの前で言えたな」
「えっ、駄目なの? 悪魔が根城に使った城なんて、正直もう使いたくないと思うんだけど?」
注意をしたグレンだがウォルドレットの言葉に、グレンは心の中で「確かに」と思ってしまった。
それは他の者も一緒で、話を聞いていたウィルドへと視線が集まった。
「僕の気持ちとしては、どちらでもいいかなって感じだよ? 悪魔の根城にされた事で何か呪われてそうだし」
「別に悪魔だからと言って自分達が使う場所を呪ったりしないぞ? まあ、あいつらがどういう事をしてるか、俺も分からないから強く言えないが」
「まあでも、これでウィルドの気持ちは分かった。取り敢えず、城の様子を見て怪しい雰囲気が出ていたら壊す事も考えておこう」
そうグレンは言って、城を残すか残さないかの議題を終わらせた。
「まあでも、先に城をどうするか決めておいて良かったよ~、僕もう最初から城なんてぶっ壊すつもりだったから」
「……お前いつからそんな物騒なキャラになったんだ?」
「えっ、逆にグレンは罠があるかも知れない場所に、態々律儀に入るつもりだったの?」
ウォルドレットはマジかと、驚いた顔をしてそう言った。
「いやまあ、俺は罠を解除して悪魔と戦おうと思ってたぞ?」
「それ迷宮とかだと無暗やたらに壊したら、危ないからそうしないといけないけど、今回はただ敵の根城を叩くんだから、そんな効率の悪い事しても意味がないよ。どうせ、戦ってる途中で壊れるんだから」
「……確かに言われてみればそうだな、今回に関しては俺もお前も力を抑えて戦う何て最初から考慮してないし」
「うん、だから城に悪魔が居るって聞いた時、お城壊さないといけないから片付けが大変だろうなって考えてたんだよね」
そう言われたグレンは、ウォルドレットの方が色々と考えていたのかと内心少しショックを受けた。
「グレンさん、城を残して欲しいとは僕も思って無いので全力でやってもらって構いませんよ」
結局、少し前の話し合いで残すかもしれないとなっていたが、グレンとウォルドレットとの話で結局最初から壊す前提で戦う事が決まった。
しかし、もし城の中に人間の魔力を感じ取れたら、奇襲紛いの城攻撃は無しで城内に入ると話し合いで決まった。
「ここまで人の気配全く感じないのに、城に居るのかな?」
「人質とかだったら、ありえるだろうな。ここまで帝都の街中に人が居ないってなると、もしかしたら逃げた悪魔分を補うために連れていかれた可能性もあるだろ?」
そうグレンが言うと、ウォルドレットは「成程ね~」と呑気に言った。
それからグレン達は帝都の中を進み、目的の悪魔達が集まっている城の前に辿り着いた。
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