第22話 【帰還・2】
「どうしたの、ルドガー。いきなり来――」
部屋で待っていたフローラは、部屋の扉が開いたと同時にそう入って来たルドガーに声を掛けた。
そして、ルドガーと一緒に入って来た人物、グレンの姿に言葉を失った。
「こういうことだよ」
驚いたフローラは、グレンを指さして固まり、ルドガーはこうなる未来を予想していて、そう声を掛けた。
その後、色々とあり落ち着いたフローラに、ようやく話し合いを始める事が出来た。
「お前ら、一年でキャラ変わり過ぎだろ……前、抱き着くなんてした事も無かっただろ……」
「俺もするとは思わなかったよ。ただ感情が高ぶって、やってしまったんだよ」
「ルドガーと同じく。それよりグレン、貴方が今まで何をしてたのか、教えてくれるんでしょ?」
「ああ、勿論。そのつもりで二人を集めたんだからな」
グレンはそう言うと、パーティーを抜けた後の事から話し始めた。
パーティーと故郷から追放され、自暴自棄になり脳を破壊。
妖精に出会い、妖精達と契約をして訓練をしたり、一年間起きた事をフローラ達に話した。
「「……」」
「うん、まあそうなるよな。だから、証拠というか証人もいる。フレイナ、姿を現してくれ」
そうグレンが言うと、フレイナはルドガー達の前に姿を現した。
それまでそこには誰も居なかったのに、行き成り綺麗な女性が現れ、ルドガー達は驚いた顔をした。
「こうして会うのは初めてね。私は、妖精族の長フレイナ。今は、グレンと契約してる妖精の一人よ。よろしくね」
「「……ま、マジ?」」
ルドガーとフローラは、フレイナの挨拶にそうグレンに聞いた。
「マジだよ。フレイナ、妖精の姿も見せてやってくれ」
「ええ、良いわよ」
フレイナはそう返事をすると、自身の体を妖精の方へと変えた。
更に信じられないといった顔をした二人に対し、数名の妖精にも姿を現してもらい信じさせることにした。
「一年会って無いだけでこんなに人って変わるのか?」
「まあ、俺が特別だったというのは認めるよ。妖精と出会う人間なんて、数が少ない上に人間で初めて妖精界に入ったからな」
「本当よ。あれだけ探し回って、見つからない訳よ。全く別の世界に居たんじゃ、探しようも無いわ」
フローラはグレンの話を聞いて、そう言葉を漏らしてお茶を飲み溜息をついた。
「それに最初の脳の破壊って、そうなる前に私達に相談しても良かったんじゃないの?」
「今、考えたらそう行動したかもだけど、あの時は既に性格も全て変えてたからな。ルドガー達も気づいてるだろ、俺の雰囲気が変わってるの」
「そうだな、前に比べて年相応の好青年といった雰囲気になってるな」
「それが本来のグレンと言う訳なの? 全く、別人みたいよ」
そのフローラの言葉に、グレンでは無くフレイナが答えた。
「そうね。貴女の言葉通り、今のグレンが本来のグレンで合ってるわよ。王都で暮らし始めた頃のグレンは、既に脳の改造をしていたから、別人に思うのは当然ね」
「成程な、確かに王都で初めて会った時のグレンは既に、何処か変な感じがしてたな……」
「王都に来てから悪化した記憶はあるけど、その前に既に何回もしてたからな。よく耐えてたと思うよ俺の体」
「最後は、脳も眼も破壊してたけどね」
フレイナの言葉に、グレンは「そうだったな~」と軽く言葉を返した。
そこでルドガー達は、思い出したかのようにグレンの眼を指摘した。
「それでグレン。その眼は、どういう事なんだ? 色が前と違うだろ?」
「ああ、これね。二人だからまあ話すけど、他言無用だからな?」
グレンの言葉に二人は「分かってる」と即答し、二人の想いを感じ取ったグレンは眼について説明した。
眼の力を聞いた二人は、本日何度目か分からない驚いた顔をして言葉を失った。
それから暫くして、二人は正気に戻り話し合いを再開した。
「えっと、じゃあさっきの転移はその眼の力の一部なのか?」
「ああ、そうだよ。何なら、今も実演しようか?」
そうグレンは言うと、立ち上がり二人の前から部屋の隅に転移した。
そして再び、転移で二人の前に戻って来てソファーに座った。
「とまあ、こんな感じだな。他のは、戦闘向きの力だからここじゃ実演は厳しいかな?」
「そうね。他の眼の力は、ここじゃ使えない物だから証明は難しいわね……ああ、鑑定眼なんてどうかしら?」
「ああ、その力があったな」
フレイナの指摘にグレンは、思い出したかのようにそう言い。
壁に飾ってあった絵を鑑定して、その作者と名前を言い当てた。
「あ、合ってるわ……グレンは鑑定魔法使えなかったし、その力もその眼なのね……」
「本当に贅沢な力だな……」
フローラとルドガーは、そうグレンの眼をジッと見つめながらそう言った。
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