第219話 【決戦前夜・4】
それからグレンは、新しく風呂友となったウィルドと風呂トークで盛り上がった。
その話の流れで、帝国の温泉の話へとなった。
「帝国って、温泉とか無いのか?」
「温泉か……僕は聞いた事無いな、秘湯とかはあるかもしれないけど、事業としてそれをやってなかったと思う。もしかしたら、知らない所で温泉を掘ってお店をしてるかもだけど」
グレンの質問に対して、ウィルドは悪魔に乗っ取られていた時の記憶も遡ってそう答えた。
「成程な、悪魔の問題が片付いたら一度調べてみないか? デュレイン国でも沢山、温泉地があったから帝国にもあるかもしれないぞ、温泉はあるだけで人が寄って来る場所だからな」
「……そうだね。人が寄って来るんだったら、そこを観光地にも出来そうだしね。良い提案ありがとねグレン」
温泉を見つけたら、それだけでもそれを楽しみに人が寄って来る。
それを思いついたウィルドは、自分の為にも温泉は帝国に掘り当てたいと思った。
「それに温泉があれば、グレンも帝国に寄ってくれるでしょ?」
「まあ、その温泉が良い場所なら通うだろうな。ただ俺には温泉に博識な知り合いが居るから、そいつからその温泉の評価を聞いてからだろうな」
「それは、頑張って良い温泉を用意しないといけないね」
ウィルドは笑みを浮かべながらそう言うと、夜も遅いので自分のテントへと戻った。
その後、グレンは最終確認と装備を枕元へと準備をしてから眠りについた。
そして翌日、グレン達は早朝に起きて戦う準備を行い待機していた。
「折角朝から用意してたのに遅いよ~。ねえ~グレン、まだ連絡こないの?」
「……予定よりも早めに俺達は起きたからな、他の所は今準備してるんだと思う」
帝都から一番近いグレン達は、他の部隊よりも速い時間帯から待機していた。
その為、他との連携に少し遅れが生じて、早くから準備しているのに既に10分程グレン達は待っていた。
そんな状況に、ウォルドレットは少し不満を感じていた。
「それはそうと、ベル。お前、昨日は緊張してたみたいだが、大丈夫なのか?」
ウォルドレットの事は放置して、グレンは隣に経って居るグラムの体の権利を持ってるベルへと声を掛けた。
「大丈夫だ。ちゃんと一日経って、何とかした」
グレンは心配になってベルに声を掛けると、ベルは普段通りの少し怠そうにそう言った。
こっちの方が昨日よりマシだろうとグレンは、ベルの様にそれ以上は口にしなかった。
「グレン君、聞こえる?」
ベルの様子を確認して直ぐに、グレンの脳内にエミリーの声が聞こえた。
「聞こえるぞ、準備が出来たのか?」
「うん、結界の方も後は私の合図で張れる状態。グレン君の方は大丈夫?」
「こっちはもう待機状態だ。いつでもいける」
グレンがそう言うと、エミリーは「分かった。それじゃ、結界の合図出すね」と言って念話を一度切った。
そして次の瞬間、四方から強力な魔力を感じると、帝国全土を囲む結界が出現した。
「おっ、結界が張られたみたいだね。準備が出来たの?」
結界に気付いたウォルドレットはワクワクと気持ちを高ぶらせながら、そうグレンに聞いた。
「ああ、連絡が入った。結界も張られたみたいだし、俺達も動くとするか」
「よ~し、頑張るぞ~」
結界が張られたのを確認したグレンは、そう言うとウォルドレットは元気よくそう言った。
他のメンバー達もウォルドレットの様にはいかないが、やる気に満ちた目をしていた。
その後、グレンは自分の持ち場に居るメンバー達に声を掛けて、戦闘準備をした状態で帝都へと向かった。
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