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第211話 【皇子・3】


 それから暫くして、ウィルドは落ち着くと、ふとグレンの方へと視線を向けた。


「どうしました?」


「そう言えば、グレンは生まれてからずっとデュレイン国で過ごしてたって言ってたけど、どうやって生活してたのか聞いてもいいかな?」


「どう生活してたって普通ですよ? 教会の他の孤児達と一緒に生活して、12歳の時に冒険者になって、それからずっと冒険者として過ごしてますよ」


「意外と普通なんだね? てっきり、波乱万丈な生活をしてきたのかと思ってたよ」


 自分の生い立ちは、特に変わり映えの無い普通だと言ったグレン。

 そんなグレンの言葉に、ウィルドは意外そうな顔をしてそう言った。


「まあ、多少いじめとかいろいろありましたけどね」


「えっ、グレンが虐められてたの!?」


「よくある子供内のやつですよ」


 驚くウィルドにグレンはそう言うと、ウィルドは「あのグレンがいじめられっ子だったんだ」と言った。

 その後、グレンとウィルドは互いに幼い頃の話に盛り上がり、今日の野営地に着くまでの間にグッと距離が縮まった。


「グラム兄さん、話って何?」


 夜中、皆が寝静まった後、グレンはグラムに呼ばれてテントの外に出た。


「うん、ウィルド皇子の事でちょっと、グレンには話しておこうと思ってね」


「ウィルドの事?」


「多分、妖精の長は気づいて居たと思うけど、ウィルドの心の成長か悪魔が憑いた時から変わってないんだよね」


「……んっ? どういう事だ?」


 グラムの言葉に首を傾げたグレンは、詳しく説明するように求めた。

 皇子と再会してから、グラムは少し違和感を感じていた。

 それは皇子の言動や、行動、性格のちょっとした違和感で、自分ではその違和感に気付けず寝ていたベルにウィルドの事を観察してもらった。

 その結果、ウィルドの心が幼少期の時から止まっている事が判明した。


「……成程な、俺も今日話しててなんか子供に話を聞かせてるみたいに感じてたが、それのせいだったか」


「うん、人の数か多い所だったりすると、皇子も帝国の皇子としての振る舞いは出来てたけど、馬車の中での会話はどう見ても子供っぽさが出てたからね」


 グラムの言葉にグレンも皇子との会話の中での、ちょっした違和感の正体に気が付き「そう言う事だったのか」と呟いた。


「……成程な、それで元悪魔憑きが悪魔が抜けた後、混乱して狂っていたという事件はそういう事だったのか」


「うん、皇子は子供ながら相当な精神力を持ってたから、現状を理解する力があったけど、他の人達は現状を理解できずにあの騒動があったんだと今は思うよ」


「ウィルドの奴、凄い奴だったんだな……普通の大人でもあんな狂ってたのに、自分の命の危険を理解して、あの帝都から逃げ出したんだからな」


 話を聞いたグレンは、感心したようにそう言った。

 その後、心は子供のままであろうウィルドのフォローを二人ですると決めて、グレン達はそれぞれのテントに戻り眠りについた。

 そして翌日、これまで通りなら馬車のメンバーを変える所だが。

 昨日の話もある為、知ってる者同士が良いだろうというグレンの判断で、帝都までは〝グレン、グラム、ウィルド〟は固定で馬車に乗る事にした。


「グレン、グラム。僕の事、気付いた?」


 馬車に乗り、移動を始めると突然ウィルドはそう口にした。


「どういう事ですか皇子?」


「うん、だって昨日まではグレンもグラムも僕と話す時、楽しそうにしてたけど、今日は心配してる目をしてるからね。グラムは知ってるでしょ、僕の勘が鋭いの」


「そうでしたね……」


 ウィルドの言葉に、グラムは言葉に詰まりながらそう言った。


「確かグラムには、上位悪魔。グレンには妖精の長が居るんだったかな? 流石にその方達に、心の成長が止まってる事は騙せないか」


「ウィルドは気づいてたのか、自分の心の成長が止まってる事に」


「そりゃ、本人だからね。自我が戻った時、体だけ大きくなってて流石の僕でも驚いたよ」


 驚いた。

 それだけで済ましたウィルドに対し、グレンは怖さを感じた。

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