第21話 【帰還・1】
最後の風呂を楽しんだ翌日、グレン達はグレンと妖精達が初めて会った森の中に居た。
「出口はここだったんだな」
思い出の地と言える程、思い出深くはない場所に出たグレンはそう言葉を漏らした。
「フレイナどうする? こっから、歩いて向かうのも良いっちゃ良いけど、今晩の宿の事を考えたら転移魔法で王都に移動した方が良いと思うんだけど」
「そうね。宿は大事だし、王都の近くまで転移魔法で移動しましょうか。楽しい事は、後にとっておきたいしね。皆も良いわよね?」
「「は~い」」
フレイナの言葉に、妖精達はそう返事をしてグレンと魔力を結び【妖精眼】の力で王都の近くに転移して移動した。
先に転移する前に、その場所を確認して飛んだので周りには誰も居ない場所に飛べた。
「初めて戦闘以外で使ったけど、転移って便利だよな……」
一瞬にして王都を守る壁が見える所まで移動出来た事に、グレンはそう呟くとフレイナは「ふふん」と嬉しそうにほほ笑んだ。
「でしょ、便利よね。私があげた眼」
〝私が〟という所を強調して行ったフレイナの言葉に、グレンは「ああ、本当にありがとな」と素直にお礼を言った。
その言葉にフレイナは、更に顔が崩れたが既にグレンは王都に向けて歩き出していて、そんなフレイナの様子には気づかなかった。
その後、王都に近づいたグレン一行。
妖精達は既に姿を消して、グレンの後を付いていっていた。
「あれ、グレン。向こうの列に並ばなくていいの?」
「ああ、あっちは普通の人用の通路なんだよ。俺は、ほらAランク冒険者だから、こっちなんだよ」
王都の出入口は、2カ所設けられている。
一つは一般人用の出入口で、大体昼間等は長い列が出来ている。
そしてもう一つの出入口は貴族や高位の冒険者、それに近い位のある者が通れる出入口でこちらのが優先的に出入りが出来る。
グレンのAランク冒険者の証は高位冒険者の中に入り、優先された出入口を通る事が可能である。
そうしてグレン達は、その優先通路を通り王都の中に入ると、そのまま冒険者ギルドへと目指した。
「ここは、変わってないな」
そうグレンが呟くと、ギルド内に居た冒険者達の視線がグレンに少し集まった。
王都のギルドは人の入れ替えが激しいが、中にはグレンの事を知っている者も居て、姿を消していたグレンが現れた事に驚いている者も居た。
「カードの更新をしに来た」
「ッ!?」
グレンの言葉に目の前に居る受付の男、ルドガーは目を大きく開けた驚いた顔をした。
「は、えっ? お、お前、グレンなのか?」
「疑うならカードを確認しろ、俺は正真正銘。お前の知り合いのグレンだよ」
信じられない者を見たという顔をしたルドガーは、バッと渡されたカードを確認した。
そこには自分の知り合いで行方不明となっていた相手の名前、出身地、ランク等が書かれていた。
「グレン!?」
改めて目の前の人物が姿を消していたグレンと認識したルドガーは、部屋中に響く程の声を上げた。
そしてバッと受付から飛び出して、グレンに抱き着いた。
「ちょっ、ルドガー!? 男同士、それもオッサンに抱き着かれるとか嫌なんだが!?」
「うるせぇ! お前、俺達がどれだけ心配したか分からねぇだろッ!」
「わ、分かったから! ち、力を込めるな!」
グレンの言葉に、ルドガーは反論して更に力強く抱きしめて来た。
元冒険者であるルドガーの力は、それなりに強く苦しくなったグレンは逃げる為に転移でルドガーの腕の中から逃げ出した。
行き成り、グレンが消えて力の行き先が無くなったルドガーは、そのままバタッと地面に倒れ、何が起こったのか分からないという表情をした。
「ぐ、グレン。お前、今何をしたんだ?」
「まあ、色々とあったんだよ。取り敢えず、カードの更新をしてくれよ。期限ギリギリだからさ」
そう言うグレンは、ルドガーに手を貸して起こしてやり、カードの更新をさせるように言った。
その後、無事にカードの更新を終え、期限がまた伸びたグレンは一安心した。
「グレン。お前、目の色が……」
カードの更新を挟み、落ち着いたルドガーはグレンの変化にようやく気付いた。
ルドガーからの指摘にグレンは「取り敢えず、ここじゃ話は無理だ」と言い、ルドガーを連れてある場所へと向かった。
そして訪れた場所は、王都でも名が知れ渡り大商会と呼ばれている商会の建物。
「あら、ルドガー様。今日は、どういったご用件でしょうか?」
建物の受付に現れたルドガーと、見知らぬ男であるグレンに対して、商会の受付の女性はそう声を掛けた。
「今、フローラは居るか? ちょっと、緊急で話し合いをしたいんだが」
「商会長様でしたら、会長室に居ます」
そう受付の女性が言うと、フローラの元へ連絡が行き部屋に入っても良いと許可が下りた。
そして、グレン達はフローラの待つ部屋へと向かった。
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