第207話 【出発・3】
「まあ、でも別に嫌いな魔力がじゃないみたいだから、そんな落ち込むなよ」
「でも、好かれる魔力じゃないのは変わらないんだろ! それだけで十分悲しいんだよ……」
ガリウスはそう叫ぶと、悲しげな表情で窓の外を見た。
「こんな見た目だけどよ。子供の頃から、妖精と仲良くする事が夢なんだよ……」
「「えっ!?」」
ガリウスの呟きに対し、グレンとカグラは驚いた声を出した。
二人の驚きに対し、ガリウスはジト目で二人を睨んだ。
「おい、お前等絶対俺の見た目で驚いただろ?」
「自分でも分かってんなら良いだろ、というかそれマジなのか? お前が妖精と仲良くなるのが夢って」
「……マジだよ。子供の頃は外で遊ぶより、家の中で本を読んだり母親と菓子を作ったりしていたからな、その時に妖精が出る本とかを読んで妖精といつか友達になりたいって、子供ながら夢に思ってたんだよ」
恥ずかしそうにガリウスは、自分の過去の事をグレン達に教えた。
「ガリウスさんにもそんな過去があったんですね。子供の頃から剣を振ってるイメージでした」
「俺もカグラと同じイメージだったわ、まさかガリウスが俺みたいな感じだったとは思わなかったぞ……」
グレンはガリウスが、まさか自分と同じタイプの子供時代を送っていた事に内心凄く驚いていた。
「えっ、グレンさん自分と同じ子供時代って、グレンさんも子供の頃は外で剣とか振ってる感じじゃなかったんですか?」
「ああ、というか基本一人で居たからな、子供の頃は虐められていたから」
「グレンさんが虐められてたんですか!?」
カグラは信じられない! と驚いた顔をした。
そんなカグラの様子にグレンは、自分の失踪事件関連の事を知ってるかカグラに聞くと、知らないとカグラは言った。
グレンはそんなカグラに自分の過去の事を教えながら、失踪事件の事を伝えた。
「そう言えば、カグラはグレンの功績は知ってても、過去はヴォルグさんが言ってないって言ってたな」
「そうなのか? てっきり、俺に関わってる奴等は全員あの事知ってると思ってた」
「初めて聞きましたよ。でも、そう言われたら王都に戻って来てヴォルグ伯父さんにグレンさんの事を聞いてた時、少し様子がおかしかったですね。その事を私に隠すかどうか迷っていたのかもしれませんね」
「元々王都で活動してる冒険者は、あの事件の事を話そうとはしないからな、伝えない限り伝わらないだろうとヴォルグさんも思ってたんだろうよ」
あれから数ヵ月経った今でも、王都で元々活動していた冒険者はあの事件の事を忘れた者は居ないとガリウスは言った。
「そんな事があったんですね……その、何て言ったらいいか分かりませんが、グレンさんが死ななくて本当に良かったです」
「今では俺もそう思ってるよ。ありがとな」
カグラからの言葉に、グレンはそう感謝の言葉を返した。
その後、暗い雰囲気を変える為、ガリウスはグレンに妖精の話を聞き、グレンはガリウスの意図が通じてその話題に乗る事にした。
「そう言えば、グレンは妖精界に行った事があるんだろ? あの世界ってどんな風になってとか聞いても大丈夫か?」
ガリウスからの質問にグレンは、外で妖精の子供達と一緒に飛んでるフレイナへと視線を向けた。
(どうしたの?)
(いや、ガリウスから妖精界について質問されてな、どんな所か答えても良いか聞こうと思ってな)
(何処にあるかさえ言わなかったら、別に話しても良いわよ)
そうフレイナから許可をとったグレンは、ガリウスの質問に対して一つ一つ答えていった。
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