第206話 【出発・2】
それから少しして、テントに兵士の人が夕食の準備が出来たと伝えに来てグレンは外に出た。
テントの中からでも分かっていたが、既に陽は落ちて辺りは暗くなっていた。
「グレン、こっちこっち」
「んっ? ああ、もう皆来てたのか」
自分を呼ぶ声が聞こえそちらを向くと、既にいつものメンバー達が集まって待っていた。
「はい、これグレンの分貰っておいたよ」
「ありがと、グラム兄さん」
グラムから自分の分の夕食を受け取ったグレンは、そのままグラム達と同じテーブル席に座り、グレンが来たので食事を始めた。
「グレン、俺も混ざっても良いか?」
食事が始まって少しして、アーノルドはそうグレンに声を掛けた。
「別に良いぞ、お前らも良いだろ?」
そうグレンが同じ席で食べていたグラムやガリウス達に聞くと、皆頷きアーノルドを迎え入れた。
「お前こそいいのか、兵士達と一緒に食べなくて」
「いつも一緒に食べてるからな、こういう時くらいは構わないさ」
アーノルドは笑みを浮かべながらそう言い、グレンは「そうか」と返事をした。
その後、食事を終えたグレンは、無理を言って用意させた簡易の風呂で疲れを取り、テントの中に入り眠る事にした。
そして翌日、予定していた時刻に野営地から出発した。
今日は馬車のメンバーを少し変え、グラムとウォルドレットは別の馬車に行き、その代わりにガリウスとカグラが同じ馬車に乗る事になった。
「それにしても、全く魔物が襲ってこないな。前にここら辺を依頼で来た時、何度か魔物に襲われたんだがな……」
「魔物避けを使ってるってのもあるが、ここ最近魔物の生息地域が変わってるって言ってたな」
「そうなんですか? その話、私聞いてないですけどガリウスさんは聞いてます?」
「いや、俺も知らんな。グレンは何処でその情報を聞いたんだ?」
「家に押しかけて来たキャロルに聞いたんだよ。出発ギリギリまで、色んな所で情報を探ってたキャロルが魔物の生息地域が変わってる事に気付いてな」
その情報が出発ギリギリに判明した事もあり、部隊全員に通達する事は出来ないと判断した。
その為、その情報が確実なのかグレンが妖精に調べさせ、確実だという事だけを確認してこの話は終わっていたとガリウス達に言った。
「成程な、まあ俺みたいに気付く奴もあまりいないだろうし、悪魔との戦いの前に変な緊張感を持たせない為に話さなかったんだろ?」
「まあ、それもあるな」
グレンがそう言うと、ガリウス達は納得したような顔で頷き、この話は終わった。
そして話は、妖精の事に変わった。
「そういや、数日前にまた契約してる妖精が増えたと言ってたが、今どのくらいと契約してるんだ?」
「……あの後、また少し増えて約600の妖精と契約してるよ。500の時でさえ、魔力量が人間の域を超えてるって感じてたが、更に100増えてもう自分でも魔力の限界が分からなくなってきた」
「俺なんて契約すらした事無いのにほんと羨ましいぜ……カグラも契約してるんだっけか?」
グレンの妖精との契約してる数を聞いたガリウスは落胆し、隣に座るカグラにそう聞いた。
「はい、私はグレンさんみたいに沢山の妖精とは契約していませんが。一人の子と契約してますよ」
そうカグラが質問に答えると、ガリウスは羨ましそうにグレン達を見つめた。
「なあ、グレン。俺もいつか妖精と契約出来ると思うか?」
「……」
「えっ、何だ。その沈黙は!?」
ガリウスの質問に対して、グレンは言葉が詰まりガリウスの顔から視線を外した。
そんなグレンの様子にガリウスは驚き、グレンの肩を掴んで揺らした。
「一応、前にガリウスから相談受けただろ? 同じような事を」
「ああ、言ったな」
「それでさ、フレイナにガリウスと契約したい妖精っているのか? って聞いたんだよ。そしたら、ガリウスの魔力。平凡というか、なんかパッとしないらしくて、契約したいと思う妖精はほぼ居ないって……」
言い難そうにグレンは真実をガリウスに伝えると、ガリウスは「うそ、だろ……」と呟き固まった。
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