第179話 【更なる強さ・4】
それからカグラとの模擬戦をした後、他のメンバーからも誘われたグレンは一人一人時間を決めて申し込んできた者達を全員相手にした。
久しぶりに考え込まない戦いが出来たグレンは、訓練に来る前よりも気持ちが軽くなっていた。
そうして翌日、気分転換をしたおかげなのか前回の訓練時よりも、悪魔クラスの魔法成功率が少し上がっていた。
◇
「こう実際に体感すると、俺って結構精神に左右されてるんだな……」
「そうみたいね。私もずっとグレンの事を見てたけど、こんな一面があるなんて気が付かなかったわ」
気持ちによって強さが変わる。
実際、それを認識して改めて自分の事を思い返すと、そういう場面が確かにあったなと感じた。
「……やりはしないけど、アレを使えば今より強くなれるかもな」
「私は反対よ。グレンが苦しむ姿はもう見たくないもの」
脳を魔法で改変するという俺が開発した魔法を指した言葉を言うと、フレイナは顔を顰めて反対と言って来た。
「例えばの話だ。俺も今、あの魔法を使おうとは思わない」
そう俺が言うと、フレイナは「絶対に駄目よ」と念を押してそう言って来た。
その後、今日は調子も良いなと思った俺はいつもより長めに訓練を行い。
フレイナから陽が完全に沈んだ事を伝えられ、夕食をニアが作った待っている為、急いで帰宅する事にした。
「すまん、ニア。今日は遅くなった」
「大丈夫だよ。グレンが頑張ってるの知ってるから」
ニアはそう言うと、先にグラム兄さん達に出した夕食を温めなおして持ってきてくれた。
「訓練順調なの?」
「ぼちぼちだな、今日は調子が良かったけど明日どうなってるか俺も分からないしな……」
「グレンが困ってる何て珍しいね」
ニアはクスクスと笑いながらそう言い、俺は「俺も一応人間だしな」と言葉を返した。
それから俺はニアと話ながら夕食を食べ、風呂に入った俺は部屋に入り今日の訓練の感想をフレイナに聞いた。
「そうね。特に今日はいつもより成功してたし、良い感じだったの思うわ。でもやっぱり、まだ実戦で使えはしないわね」
「……正直、この訓練を初めてからずっと思ってたけど、これを本当に実戦で使えるのかが微妙なんだよな。現状成功率は3割程度で、これを確実に使えるようになるには後半年は欲しいが、その前に相手が動き出すと思うしな」
「そうね。使えるようになる前に相手が動き出したら意味ないものね。現状、博打覚悟で撃って成功したらよかったと思える程度だしね」
フレイナの言葉に「その通りなんだよな……」と言葉を返し、俺はベッドに横なり他に良い攻撃方法は無いかと考えながら眠りについた。
◇
それからグレンは結局、他に良い案は浮かぶ事無く成功率を出来るだけ上げる為、訓練を続けて行った。
そして訓練を初めて1週間が経過した頃、ようやくマーリンの予定が少し開いた事をグレンは知ると、マーリンに訓練を見てもらう事にした。
「儂が居ない所で何か訓練をしておるとは聞いておったが、まさかグレンが本格的に魔法を訓練していたとはの……」
「ああ、本当は最初の頃にマーリンに相談したかったんだが。忙しそうにしてて、声掛け辛くてよ」
「それはすまんの、魔法部隊の方に獣人国から参加した者がおって、その者達に一から教えて居ったから時間が無かったんじゃ」
「知ってるよ。それに元々居たメンバーにもお前が使ってる魔法をいくつか教えてるって聞いて、流石にそんな忙しい奴に個人的な相談は止めておこうと思ったんだよ」
そうグレンが言うと、マーリンは「気を使わせたようじゃの」と言った。
「それで儂は何も知らんのじゃが、どんな魔法を訓練しておるんじゃ?」
「悪魔が使ってる魔法だ」
「……悪魔が使ってる魔法?」
グレンの言葉に対し、マーリンは首を傾げながらそう言葉を返した。
そんなマーリンにグレンは、どんな魔法を訓練しているのか一から説明をした。
「成程の悪魔には悪魔の使う技をぶつけると……」
「そう言う事だ。それで魔法に詳しいマーリンに相談したかったんだ」
「魔法の事で頼られるのは儂も嬉しいんじゃが、流石に儂も悪魔の魔法は使え無いしの……」
「そこは分かってる。別にマーリンに悪魔の魔法を教わろうとは思ってない、ただ魔法が上達するやり方とか何かそう言うのを教えて欲しいんだ」
「ふむ……分かった。悪魔との戦いにはグレンが必須じゃ、儂の持っておる魔法に関しての全ての知識を使いグレンの訓練に付き合おう!」
マーリンがそう言うと、グレンは困惑した顔で見つめた。
「いや、流石に訓練に付き合うって部隊の訓練はどうするんだ?」
「既に基礎は教え込んできた。後は、自分達の力でどうにでもなるし、偶に様子を見に行けばよい。それにグレンを強くした方が、悪魔との戦いが有利になると理解しておるからの、部隊の者達も納得してくれるじゃろうしな! グレン、儂の全てを教えてやるからの楽しみにしておくんじゃ!」
そう力強く言ったマーリンに、相談だけのつもりだったグレンは「変な方向に話が進んだな……」と困り顔でそう言った。
その後、グレン達は直ぐに王城へと出向き暫く部隊の訓練に出れない事を伝えた。
その理由を説明された部隊の幹部達は、反対意見は一切出なかった。
そうしてグレンは、マーリンという心強い仲間を手に入れ、期待の言葉も聞いたグレンはより訓練を頑張ろうと気合を入れなおした。
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