第175話 【罪を犯した者・3】
その後、訓練を行ったエミリーは昼食を食べる為、食堂に向かっていると賢者と廊下ですれ違った。
「あっ、賢者様!」
声を掛けずに先を行こうとした賢者をそう呼び止めたエミリーは、コートに関してお礼の言葉を賢者に言った。
「うむ、ちゃんと貰ったようじゃな。儂には必要の無い物じゃったが、お主には必要な物じゃろ?」
「はい、本当にありがとうございます」
「よいよい。ティアの訓練について行っておるようじゃしな、これからも頑張るんじゃぞ」
「はい!」
賢者の言葉にそう返事をしたエミリーは、午後の訓練をより真剣に取り組んでいた。
そうして日々の訓練を真面目に受け続けたエミリーは、訓練を初めて一週間が経った。
「エミリーさん、聖魔法のレベルかなり上がりましたね」
「聖女様の教えが上手いからですよ。それに自分の出来る事は、これくらいしか今はないですから」
訓練初日は初級の魔法すら使えない程にレベルが落ちていたエミリーだったが、この数日間でかなり技のレベルが上がっていた。
「最初は本当に心配でしたが、これだけ使えたら対悪魔に向けて作戦に組み込めそうですね」
「それは良かったです。本当に……」
自分が使えると知れたエミリーは、少しだけ笑みを浮かべてそう答えた。
その理由は、聖女と最初に会った際、どの程度の魔法が使えるか見せて欲しいと頼まれたエミリーは久しぶりに聖魔法の魔法を使った。
しかし、長い間怠けていた生活をしていたせいで、殆どの魔法は効果が薄く、唯一使えたのが治療魔法くらいだった。
その結果を見た聖女は落胆した表情でエミリーを見つめ、エミリーも申し訳ない気持ちとなった。
「【念話】の方も順調だと聞きましたが、今はどの程度使えるのですか?」
「はい。最大距離は隣国の王都まで届き、一度の【念話】で3人までなら会話が可能となりました」
【念話】の訓練には聖女は関わる事が出来ていない為、現在の成果を聞くとエミリーはそう答えた。
訓練方法がイマイチ知られていない【念話】だが、フレイナの助言により効果のある訓練方法を聞き、エミリーはそれを実戦していた。
その成果はちゃんと出ていて、訓練を続けていく中で距離も順調に伸び、一度の会話人数も増えていた。
「3人ですか、最低人数はクリア出来ている感じですね」
「はい。後の問題は距離ですね」
「そうですね。帝国は他の国より、国土が広いですから最低でも聖国辺りまで距離が延び人数も増やせたら、作戦に使えると思います」
聖女からそう言われたエミリーは、「頑張ります」と気合を入れた表情でそう返事をした。
「それでは今日も訓練を頑張りましょうね」
「はい、今日もよろしくお願いします」
聖女の言葉にそう返事をしたエミリーは、聖女の横に並び神へお祈りを始めた。
その後、順調に聖魔法と【念話】の技術を上げて行くエミリーの姿勢に、徐々に周りのメンバーはエミリーの事を次第に認めて行った。
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