第172話 【罪・4】
「世界の秩序を保たせる役割を担当している方で、神すらも裁く力を持つ方の様です」
神を裁く力と聞いたグレンは、「そんな神様が居るんですか?」と聞いた。
「神も全てが良い神ではありませんからね。人と同じく、良い神様も入れば悪い神様も居ます。そして悪い神に対して、裁きを下すのが〝審判の神〟という訳です」
「神にも色々居るんですね」
「はい、ちなみに私に加護を与えて下さってる方は〝聖邪の神〟という方で聖なる力と邪なる力。二つの力を持つ神様です」
「聖なる力と邪なる力……聖なる力と、聖魔法って分かりますけど邪なる力とはどういうのなんですか?」
「……そちらに関しては、私もあまり使いたくないんですよね。危ない魔法が沢山ありますし、神様からも私には合わないから使わない方が良いと言われてるんです」
聖女はグレンの問いに対してそう答えると、エミリーの方へと視線を戻した。
「神様を通して、エミリーさんに加護を与えている神様に話を聞きました。貴女に加護を与えたのは、やり直しのチャンスを与えたからと言ってました」
「やり直し、ですか?」
「貴女は周りに流され罪を犯した過去がありますが罪を自覚し、謝罪をしていたのを見て、罪を償うチャンスを与えたと伝えられました」
「罪を償うチャンス……でも私、役に立てる力何て……」
聖女の言葉にエミリーはそう言おうとすると、その言葉を聖女は止めた。
「貴女にやる気があるのでしたら、力は私が鍛えてあげます。〝審判の神〟の加護は、聖魔法に対しても効力を上昇させられると言ってました」
「そ、そうなんですか?」
「はい、それに【念話】も使えると聞いておりますので、そちらも合わせて訓練を行えば貴女にしか出来ない事がこれから先沢山あるとおもいます」
聖女にそう言われたエミリーは、顔を俯かせ少し考えると顔を上げ「私を鍛えてください」と聖女に向かって頭を下げた。
その後、エミリーについて王妃達と話すべく、グレン達は一度王城へと戻った。
そして国王と王妃に、エミリーの事を伝え彼女を制限付きで外に出す許可を貰った。
「……本当に私だけ、出ても良いのかな」
王妃達から許可を貰い迎えに来ると、自分一人だけが牢から出される事に申し訳なさそうにエミリーは言った。
「仕方ないだろ、エレナとユリは未だに反省を見せてないみたいだからな、流石にそんな奴等を外には出せないだろ?」
「あの二人、教会に居た時からプライドが高かったもんね……」
「まあな……それとエミリーにあいつ等の事を考えられる暇は、今だけだと思った方が良いぞ、ティアさんは優しそうに見えて意外と怖いからな、訓練で手なんて抜いてたから恐ろしい事になるぞ」
「そこは頑張るよ。折角、神様からもチャンスを貰ったんだし、やれることはやるつもり……それに、グレン君に迷惑かけた分を少しでも返したいし」
エミリーは最後の言葉を言い難そうに言うと、グレンは「頑張れよ」と小声で返した。
グレンの言葉が嬉しかったエミリーは「うん、頑張る」と笑みを浮かべて返事をした。
その後、準備を終えてエミリーと一緒に牢から出たグレンは、兵士に見送られながら転移で城へと移動した。
「ほ、本当に一瞬で周りの風景が変わちゃった。凄いねグレン君」
初めて転移を経験したエミリーはそう言い、グレンはエミリーを聖女が待っている部屋へと案内した。
「ティアさん、連れてきましたよ」
「ありがとうございます。グレンさん」
部屋に入り聖女にそう言葉を掛けると、聖女は部屋の中でなにやら何かの準備をしていた。
そんな聖女に対しエミリーは、改めてこれから世話になるため「よろしくお願いします」と頭を下げてそう言った。
「それでティアさん、それは何をしてるんですか?」
「これですか? 神様に祈りを捧げる場所を準備してるんです。私は何年も祈りを捧げていて、どこでも祈りを捧げる事は出来ますが。エミリーさんは、加護を貰って直ぐな上に今まで祈りを捧げた事が無いと言ってましたでしょ?」
「私の為に聖女様が用意してくれたんですか!?」
「本職である聖職者として、祈りの場を作っただけですよ。それに今後、エミリーさんは色々と大変ですからね。最初は優しくしておかないと、心が持ちませんから」
「……え?」
聖女の最後の言葉に驚きと恐怖を感じたエミリーはそう声に出すと、横にいるグレンに涙を目に浮かべながら見た。
そんなエミリーにグレンは何も出来ない為、「生きろよ」とだけ言って、この場を去る事にした。
翌日、エミリーは聖女の弟子と悪魔対策部隊のメンバーに伝えられ、共に戦う者として発表された。
その際、既にエミリーは若干壊れた目をしていたが、グレンは出来るだけ見ないように歓迎の拍手を送っていた。
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