第17話 【一年・3】
翌日からグレン達は、本格的に旅に向けての準備を始めた。
まず最初にやったのは、妖精界の防衛強化である。
フレイナ自身、妖精界から離れる事は滅多に無い上に、今回はここに居る全ての妖精がグレンについて妖精界を出てしまう。
そんな事はこれまで無く、もしも外部から侵入された際に何も抵抗なく妖精界を荒らされてしまう。
そうならない為、フレイナ達は自分達が居なくても妖精界が守られるように仕掛けや結界を張り巡らせて行った。
「前々から思ってたけどさ、お前らってフレイナには劣るけど色んな魔法使えるよな」
「えへへ~、練習したんだよ~」
「いつか、グレンに会ったら驚かせようと思ってね~」
元からフレイナの所に居た妖精で、グレンに興味を持っていた初期メンバーの妖精達は、新たにグレンに興味を持って集まった者達に比べて色んな魔法を使えていた。
それに対して、グレンが疑問に思うと妖精達は嬉しそうにそう言った。
「この子達、グレンに褒めてもらうんだ~って頑張ってたのよ」
「へぇ、そうだったのか。凄いな、お前ら!」
そうグレンが妖精達に言うと、初期メンバーの妖精達は嬉しそうに飛び回った。
そんなグレン達のやり取りを見ていた後から集まった妖精達は、プクーと顔を膨らませて「私達にも魔法教えてください!」とフレイナに抗議を始めた。
「ええ、良いわよ。今度からは、皆で魔法の練習をしましょうね」
「「はい!」」
フレイナの言葉に、後から来た妖精達は初期メンバーの妖精達に対抗心を燃やして力強くそう返事をした。
「あんまし無茶はするなよ? 別に色んな魔法が使えるからって、差別したりしないから」
「それは知ってる!」
「けど、なんだか負けた気分なのが嫌!」
そう妖精達はグレンの言葉に返して、嬉しそうに飛び回っている初期メンバー達を見つめた。
それから問題が起こる事無く、無事に妖精界に結界と防衛用の罠を設置を終えた。
「これだけすれば、もしもの事があっても大丈夫だろうな」
「そうね。これだけの罠があったら、人間が入って来たとしても対処出来るわ」
「まあ、若干やりすぎな部分もあるけどな……」
妖精界の入り口付近の方は、罠も優しく強制的に妖精界から弾く罠を置いている。
しかし、それらを無理に通り中に入ってきたら、もうそこは罠地獄の始まりである。
単純かつ危険な落とし穴や掛かったら中々治らない幻覚を見せる罠、その他にも精神的にダメージを負う罠などが設置してある。
その後、一通りの作業を終えて疲れたグレン達は、明日はもう妖精界を出る為、最後の風呂に入る事にした。
「この風呂とも暫くはお別れか……取り敢えず、王都に戻ったら風呂付の宿か風呂のある借家でも借りた方が良い気がするな」
「そうね……グレンは家を買うのは視野に入れてないの?」
「今の所は無いな。自分がどう受け入れられ、どう対応されるかで、今後の動きも変えるつもりだしな。もしも、敵対されたら王都での活動は止めて別の国か大陸を移動する事も考えてる」
「確かにその考えもあるわね。分かったわ、私達も最初はお風呂は我慢する事にするわ! 皆も良いわね?」
そうフレイナが妖精達に聞くと、妖精達は「はい!」と元気よく返事をした。
「まあ、なるべく落ち着けるように行動はするよ。自分から敵対する様な事は極力しないつもりでは居るし」
「極力って絶対とは言えないの?」
「絶対は言えないな、既に俺の中で敵対というか〝敵〟として認識してる奴等が居るしな」
「元パーティーメンバーと教会の人間かしら?」
グレンの言葉に、フレイナは神妙な顔つきでそう言った。
「ああ、俺を捨てた相手と仲良くするつもりは無いからな。でも、俺と代わりに入ったラウスや一部の教会の人は敵としては見てないから、そこはフレイナ達も分かっててくれ」
そう言った後、話題を変えて最初に何処に行くのかという話になり、最後の妖精界での風呂は楽しい時間を過ごした。
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