第163話 【獣王・3】
場所は変わって、獣人国の中央都市にあるレオナードが住んでる王城へと移動して来た。
「あんだけ自然あふれてたのに、森を出たらこれだけ発展した街があるってなんか違和感だな……」
「あそこは昔から神聖な地として、争い事があったとしてもあそこだけは守られて来た場所だからそうなってるんだよ」
「成程な、やっぱりそれは妖精が関係してるのか?」
レオナードの言葉にグレンは、フレイナにそう聞いた。
「私は知らないわね。多分、この地に来た妖精の子達が何かしたんじゃないかしら?」
フレイナの返答を聞いたグレンは、特に興味もない話題だったためそれ以上の事は聞かなかった。
その後、王城の一室である畳が敷いてある部屋に通された。
「畳か、やっぱり文化の違いを感じるな」
「そういや、グレン達の国だと畳は珍しい物だったな、俺も修行にしに行って驚いた記憶があるな」
レオナードは昔の事を思いだしながら、笑いながらそう言った。
「それでさっきの話の続きだが、悪魔はどういった者達なんだ?」
「さっき話した通り魔法特化の奴等なんだが、口で説明するのも難しいし俺が戦った時の映像があるからそれを見せるよ」
「おぉ! グレンはもう戦ったのか!」
悪魔と戦闘経験があると言ったグレンに対して、レオナードはグンッとグレンに顔を近づけた。
そんなレオナードの顔をグレンは左手で押し返し、魔道具を起動させた。
そして映像を見終わったレオナードは、グレンに向かってこう言った。
「グレン、戦おうぜ!」
「何で、そうなるんだよ! 悪魔について話し合いするって言っただろ!」
「悪魔の事は大体分かった。ようは魔法が強くて、魔力で肉体強化もしてるから強い敵って事だろ?」
自信満々にそう言ったレオナードに対し、グレンはこいつ本当に分かってるのか? という疑いの目で見つめた。
「んで、そんな悪魔とグレンは戦った事があるんだ。それなら、話は早いだろ? 悪魔に勝ったグレンと戦えば、ある程度俺の戦力も見る人が出来るし、俺もグレンを通じて悪魔の強さを体験できる。いい案だと俺は思うぞ」
「……そう言われたら、良い案だと思えてくるが。お前、結局の所俺と戦いたいだけだろ?」
「そうじゃないとは言えんな、なんせ十数年振りに再会した相手がこんな強く成長していたら、戦士としてそんなお前と戦いたいと言う気持ちが芽生えるのはおかしくはないだろ?」
自分の気持ちを偽らないレオナードの態度に、グレンは溜息を吐いた。
「……国王がそんな勝手に戦いとかしても大丈夫なのか?」
「少し前まで戦いばかりしていたのに、それを禁ずるなんておかしいだろ? 名声で国王になった訳じゃない、俺の持つ力でこの座を取ったんだからな」
「まあ、確かにそうだな……」
「それに別にさっきの映像みたいにガチでやる訳じゃない、あそこまでの戦闘は流石に折角この地を支配した意味が無くなるからな」
レオナードの言葉にグレンは「どういう事だ?」と聞き返した。
「言った事が無かったか? 俺が大陸を支配したのは、この大陸が他に国に比べて悲惨な状態だったから、自分で統一して争いを無くそうとしたんだよ」
「……そう言えば、前に一回そんな事言ってたな、自分達で自分達を苦しめてるから俺が何とかするって」
「ああ、最初は俺だって説得しようとは考えたんだぜ? だけど、説得しても聞かないから何百年も争いが続いてるって分かって説得を諦めて、俺はこの大陸を支配して自分のやり方でこの大陸を豊かにしようと思ったんだ」
「そうだったのか、てっきり俺はお前が戦いが好きだから、流れで国王になったのかと思ってたよ」
「……実際その気持ちもあったな」
レオナードの国を統一した訳を聞いたグレンは、少し感動して言った言葉にそんな返しをされ「おい」とツッコミを入れた。
その後、結局レオナードの意見は真面だとフレイナからも言われたグレンは、模擬戦形式で戦闘をする事になった。
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