第162話 【獣王・2】
裸のレオナードに抱き着かれたグレンは、必死に抵抗したがレオナードは力が強く引き剥がす事は出来なかった。
その為、グレンは転移眼を使い少し離れた所へと転移で逃げた。
「んっ? 転移か? グレン、そんな事も出来るようになったのか!」
「良いから、まずは服を着ろや!」
再び腕をバッと広げたレオナードに、グレンはそう叫んだ。
それからレオナードは近くに置いていた服を身につけ、グレンはその間にレオナードが狩ったクラーケンを調理していた。
「お~、やっぱりクラーケンは美味しいな! この歯ごたえが最高なんだよな!」
グレンが調理したクラーケンを美味しそうに食べるレオナードは、そう笑みを浮かべながら食べ進めた。
「ほういや、ぐえんはなんでここいるんだ?」
「……口の中の物を飲み込んでから喋れよ」
口の中に大量に突っ込んだまま喋ったレオナードに対して、グレンは呆れた口調でそう言った。
「まあ、端的に言うとレオナードに協力してほしい事があって来たんだ」
「そっちの大陸で、悪魔がどうのこうのって騒ぎがあったみたいだが、それ関連か?」
「ああ、まさしくそれだ」
「ふむ……まあ、グレンの頼みなら断る理由も無いしな、別に良いぞ! 獣人国が全面的にグレンに協力してやろう!」
レオナードはグレンの言葉を聞いて、数秒でそう言葉を返した。
レオナードなら受け入れてくれるかな? と思っていたグレンは、余りにもその早い返答に少し困惑した。
「俺が言うのもあれだが、結構重大な事をそんな勝手に決めていいのか?」
「俺はこの国の王だ。勝手に決めて文句言う奴は居ないし、それに悪魔と戦いたいと俺達も思っていた所なんだよ」
好戦的な目をして、レオナードはそう言った。
「それでグレン、悪魔はどれ程強い奴等なんだ?」
「そうだな、基本的に魔法特化型の奴等で魔法で肉体の強化もしていて、そこらの剣だと傷すらつけられないな」
「ほう。魔法で肉体を強化か、俺等が使う【獣化】とは違うやり方が似ているな」
戦闘系の獣人族は、一定の強さを超えると本来の【獣】の強さを最大限に引き出す【獣化】をする事が出来る。
その状態になると、五感や身体的能力が爆発的に上がる。
デメリットとしては使用後、かなり疲労が溜まるが強い戦士程そのデメリットは薄まる。
そんな話をしていると、付近に新たに人の気配が加わり、グレン達の方へと近づいて来た。
「レオナード王、やはりここに居ましたか……」
新たに現れた人物は、疲れた顔をした男でレオナード達の前に現れた。
「ッ! どうしてこの場に人間族が!」
レオナードへと気がいっていたその人物は、グレンの存在に気が付くとブワッと毛を逆立てグレンに対し威嚇して来た。
しかし、次の瞬間レオナードがその男に対して、睨みつけると一瞬にして戦意を失った。
「すまんな、うちの若い奴が」
「いや、別に俺は気にして無いが……あいつ、大丈夫なのか?」
先程の男は、レオナードに睨まれて戦意を失うとその場で気を失い倒れてしまっている。
「ただ威圧しただけだからな、別に大丈夫だ。まあ、このままここに寝かせておくのも可哀そうだし、取り敢えず場所を移しても良いか?」
レオナードからそう言われたグレンは、返事をして移動する事にした。
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