第16話 【一年・2】
「おお、凄いな。皆、消えたけど俺には見えるな。でも、魔法って事は魔力を相当使うんじゃないか?」
姿を消す魔法は、人間も似たような物を使えるが相当な魔力を使うと聞いた事があったグレンは、そうフレイナに聞いた。
その問いにフレイナは、フフッと笑みを浮かべてこう答えた。
「この魔法は姿消しの魔法とは別の、妖精だけが使える魔法だから魔力の心配はしなくて良いわ」
「おお! それなら、それでギルドとか人が多い所では姿を消して、迷宮とか外に居る時は戻して一緒に旅できるな!」
グレンはフレイナの言葉に、嬉しそうに妖精達に声を掛けた。
妖精達もグレンと一緒に喜んでいると、フレイナは「でも」と言葉を続けた。
「これにも欠点があってね。妖精には姿が見えちゃうのよ。だから、妖精と契約してる子にはバレる可能性があるわ」
「あ~、それはもう仕方ないんじゃないか? それにさ、妖精の存在の以前に俺の眼が変わってる所に驚かれると思うぞ?」
旅に出るとはいえ、グレンは最初は元居た古巣である王都に戻るつもりでいる。
他所の国に行くのは面倒だし、それなら迷宮も近場にあり色々と便利な王都で暮らした方が良いとグレンが考えた。
「絶対にこっちの方が気を引くだろうし、妖精達もこれを見たら俺に妖精の長が付いてるって分かるだろ? そんな相手の事をむやみにバラしたりするやつは、そんなにいないと思うぜ?」
「私の魔力に気付いたら、慎重に動くかしら……」
「まあ、あんまり深く考えないで良いと思うぜ?」
グレンは気楽にそう言うのは、別にグレンに取って人間側がグレンについてどう行動しようとも別にどうでも良いと考えているからだ。
これまでの人生の中で、自分の事を認めてくれた人は数少なく、そんな人間側の事を考えて慎重に動くのなんて面倒。
それなら堂々と動いて、何かしらの問題が起きればその時に考えれば良いと思っている。
敵対するのであれば、それなりに対処する。
味方になるのであれば、勝手に味方に付けば良い。
グレンの中で第一に考えているのは、妖精達と楽しく過ごすという事だけだ。
それの障害となるのであれば、徹底的に潰すと考えており、グレンにはそれだけの力が既に備わっている。
「まっ、そう言う訳で次の話に行こうぜ?」
「……ええ、分かったわ」
フレイナはそんなグレンの考えを察して、これ以上の事は言わず次の議題に話を進めた。
その後、人間界でどう過ごすのかという話や、どういった場所に行くのかと言った話をして、一日を話し合いで終えた。
◇
「フレイナって、意外と心配性なんだな」
「えっ? そ、そうかしら?」
「ああ、最初の議題の時もそうだけど、俺が周りからどう思われるか心配してただろ?」
まあ、確かに1年間姿を見せなかった奴が妖精を連れて戻ってきたら、誰だって奇異の目で見るだろう。
それに関して、俺としてはどうでも良いと思っていたのだが、フレイナはそこに関してずっと心配していた。
「今更、俺は周りから良く思われたいとか、噂されるのが嫌って別にどうでも良いのにフレイナ、ずっとそこ気にしてただろ?」
「だって……グレンが落ち込んで、また治療とか言って脳を壊したら、嫌だって思って……」
「それはしないって前に約束しただろ?」
「そうだけど……」
フレイナは俺の言葉に、顔を俯かせて言葉を詰まらせた。
「もう一度言うけど、俺はもう二度と自分に対してあんな事はしないよ。今は、フレイナやこいつらが居る。嫌な事があっても一人で抱え込む心配は無いんだ」
「うん、そうだね……ごめんね。グレン」
「分かってくれたらいいよ」
フレイナは少し泣きそうな顔をしているが、前みたく抱き着いては来ないみたいだな。
あれをされると息も苦しい上に、俺のせいってだけで無理に引きはがすのも気が引けるから、あまりされたくないんだよな。
「さてと、色々と悩んだし、風呂入ってさっぱりするか」
俺はそう言って、フレイナ達と一緒に風呂に向かい、今日も一日の疲れを取り眠りについた。
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