第156話 【これからの動き・1】
会議は朝早くに始まり、陽が沈むまで続いた。
グラムの合流により、悪魔対策本部は今までより詳しく帝国の現状を知れた。
それにより、これまで動くに動ききれなかった対策本部は本陣である帝都が混乱している。
その混乱に乗じて、大胆に行動しようと言う話が出たが、具体的な案は出なかった。
「結局、何も話はまとまらなかったな……」
話し合いが終わり、帰宅したグレンはリビングの席に座りそう言葉零した。
「国、というより世界の存続を賭けた戦いだからね。慎重になるのは仕方ないよ」
「……そうだな。そう言えば、グラム兄さん前に家族は他国に身を寄せているって言ってたけど、そっちとは連絡とか取ってるの?」
ふと家族の事が気になったグレンは、そうグラムに聞いた。
「いや、悪魔は感知能力も高くて父さん達が生きてるって知ったら、何されるか分からないから連絡は取ってないよ。ただベルの力で、父さん達が生きてる事は分かってるよ」
「へぇ、ベルにそんな力があるんだ」
「闇の上級悪魔のベルだから出来る技って、自慢気に言ってたよ」
グラムは教えて貰った時の事を思いだしたのか、笑いながらそう言った。
「それにしても僕は、グレンがあそこまで王族と仲が良いとは思わなかったよ」
「まあ、それはね……色々とあって、王族からは気に入られてるな。良い様に使われてる時もあるけどね」
苦笑しながら、グレンはそう言った。
その後、ニアの作った夕食を食べて風呂に入ったグレンは、一日話し合いをして頭を使ったため、早めに寝る事にした。
そして翌日、二日振りの訓練ではグレンは自分も動きたい為、模擬戦をする事にした。
「カグラ、相手頼めるか?」
「良いんですか?」
グレンがカグラに対戦を申し込むと、カグラは驚いた顔でそう聞き返した。
「ああ、嫌ならガリウスとかに頼むが」
「いえ、やりましょう!」
他の者に頼もうとしたグレンに、カグラは勢いよくそう言った。
審判役は前回と同じく、ガリウスに頼む事にした。
「グレン、カグラ。準備は良いか?」
「ああ、いつでもいいぞ」
「はい」
ガリウスの言葉に二人がそう答えると、ガリウスは左右に分かれてる二人を確認して「はじめ!」と開始の合図を言い放った。
合図と共に先に動いたのは、前回とは逆でグレンだった。
「ッ!」
前回の時よりも早く、そしてより鋭い攻撃をしてきたグレンに対し、カグラは一瞬怯んでしまった。
そして僅かな隙が生まれ、グレンはその隙を逃す事無く、一瞬でカグラを転倒させて首筋に剣を押し当てた。
「「……」」
たった数秒で試合が終わった事に、カグラも含め周りで見ていた者達も驚き言葉を失った。
「すまん。カグラ、無心でやりすぎた。大丈夫か?」
「あっ、いえ、大丈夫」
放心していたカグラは、グレンの言葉に意識を取り戻してそう返答した。
「あの、グレンさん今の動きは魔法を使っていましたか?」
「いや一切使ってないぞ? 俺も二日振りに体動かして、ここまで動けるとは思ってなかったよ。なんか、体が軽いんだよな」
グレンはそう言うと、軽くジャンプしたり剣を振ったり自分の体がいつもよりも動きやすいと感じていた。
そんなグレンの様子をメンバー達とみていたグラムは、グレンの体を見て「成程」と呟いた。
「んっ? グラム兄さん、何が〝成程〟なんだ?」
「いや、ちょっとね。グレンが自分の動きに驚いていたから、体を見させてもらったら以前のグレンより魔力の通りが良くなってるなって」
グラムの言葉にグレンは自分の体を【妖精眼】で見ると、確かに以前よりも魔力の通りが良くなっている事に今更気が付いた。
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