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第154話 【状況変化・2】


 その後、一先ず情報の整理をする為に飲み物を用意して、一息つく事にした。



「それにしても、さっきのグレンの慌てようは僕も正直驚いたよ。まさか、あさこまで僕を思ってくれてる何て思ってなかったからね」


「……流石に家族が死にかけになってたら心配もする。そこに関わって時間なんて関係ないだろ」


 グレンがそう言うと、グラムは嬉しそうな顔をした。

 それから少し時間が経ち、情報の整理が落ち着いた聖女はグラムに改めて質問をした。


「先程の話からですと、下級の悪魔の大半は逃げたと言ってましたが上級の悪魔はどういった動きをしているのですか?」


「正直そっちは僕も詳しく調べきれなかったけど、僕の調べた限りだと3割が下級の悪魔と同じく逃げ出して、残りが戦う姿勢をとってるね。でも、その残りの悪魔が今後どうなるかは僕も分からないかな」


「上級の悪魔も逃げ出しているというと、それだけ悪魔の数はかなり減っているのではないですか?」


「そうだね。僕に憑いてる悪魔に聞いたら、帝都の悪魔は最初の7割は消えてるって言ってたよ」


 悪魔の数が7割減っていると聞いた聖女は、驚いた表情をして「本当ですか?」と聞き返した。

 そんな聖女に対して、グラムは落ち着いて「ああ」と言葉を返した。


「7割減少……でしたら、此度の悪魔との戦い。人類側にも希望が見えてきましたね」


「まあ、そもそもグレンが居る時点で人間側が簡単に負ける事は無いと思うよ。今、悪魔が迂闊に手を出せないのはグレンの存在が大きいよ」


「そうじゃな、グレンの強さは以上じゃ。あの時、悪魔を消した時点でグレンの存在が人類存続の鍵じゃと儂等も思っておるよ」


「はい、グレンさんが人類側に居て、本当に良かったと思ってます」


 そんな風に3人から言われたグレンは、話が壮大になっていて「居心地悪」とポツリと呟いた。


「というか、俺が人類の存続の鍵とか言ってるけど、この間戦ったのはその下級の悪魔だぞ? 上級の悪魔が俺に怯える必要あるのか?」


「……グレン。悪魔を殺す力って、これまでこの世界には無かった物なんだ。それが今は存在していて、更に敵対してる相手側に居るんだ。それだけでも、悪魔が怯えるには十分なんだよ」


「だとしても、俺の力が通用しない可能性もあるだろ?」


 下級の悪魔に〝最強の魔法剣〟が通用したのは偶然で、上級の悪魔には今のままじゃ通用しないだろうと、グレンは考えていた。

 そんなグレンの考えを否定する言葉をグラムは言った。


「何でそう決めつけられるんだ?」


「僕に憑いてる悪魔が言ってるからね。僕に憑いたおかげで。グレンと敵対せずに済んだって」


「……そう言えば、グラム兄さんに付いてる悪魔は逃げなかったの?」


「僕と居るのは意外と楽だって言ってて、離れるつもりは今の所は無いみたいだよ。ただグレンが僕の体から出ていけって言うんなら、素直に出て行くとも言ってた」


 そんな事情を聞いたグレンは、グラムに付いてる悪魔が本当に不思議な奴だな思った。

 そしてそんな奴と一度、話て置きたいなと思った。


「確かグラム兄さん、その悪魔とは意識の入れ替わりが出来るって言ってたよね?」


「うん、出来るよ? もしかして、話してみたいの?」


「ああ、一度話してみて安全そうならそのままでいいし、危ないと感じたら直ぐに悪魔世界に戻ってもらいたい。ティアさんも一緒に見ますか?」


 グレンの言葉に聖女達は、近くで悪魔を見る機会は無いし何かの参考になるかもと言って一緒に見る事にした。


「それじゃ、今から変わるよ。さっき、話してたから起きてると思うから」


 グラムはそう言うと、スッと体の力を抜き目から生気が抜け落ちた。

 そして次の瞬間、雰囲気がガラッと変わり怠そうな雰囲気を出してるグラムが現れた。


「あ~、初めましてオレ様は、怠惰の悪魔ベル様だ。この世界とは敵対するつもり無いし、そもそも働きたくないから大人しくしてるつもりだ。後、オレ様の事は〝ベル〟と気軽に呼んでくれ」


 そんな風に自己紹介をした悪魔に、グレンはジッと真顔で見つめた。

 グレンからジーと見つめられたベルと名乗った悪魔は、居心地悪そうな顔をした。


「……フレイナ。どう思う?」


「殺気は全く無いし、嘘も言ってないようね」


 二人からそう言われたベルは、少し安心してホッと一息ついた。

 そんなベルの様子を見ていた聖女と賢者は、この悪魔が本当に自分達が警戒している悪魔の一人なのか疑うような目で見つめた。


「それでベル。お前は、何で人類の味方になると決めたんだ?」


「何でって、それはさっきもグラムが言ってただろ? グレンと敵対したくないからだ。お前の力、自分で思っている以上に悪魔からしてみたら恐怖の対象だからな? いくら上級の悪魔であるオレ様でも、悪魔を消し去る力何て持ってないからよ」


「……先程までの話と今の話を聞いた限り、多分ですが悪魔にはこれまで〝死〟という概念が無かったのではないですか?」


 ベルの話を聞いていた聖女がそう聞くと、ベルは頷き「その通りだ」と言った。


「人間が死ぬ。それはオレ様達も知っていたが、自分達が死ぬなんて考える奴は一人もいなかった。だが、グレンの力を見て肉体を失った悪魔が悪魔界にも戻らず、この世からも消えてオレ様達は初めて〝死〟という概念が自分達にも通用すると認識したんだ」


「……それで、悪魔達は俺との戦いを避ける為に自分達の世界である悪魔界に逃げたと?」


「そう言う事だ。オレ様が残ったのは、グラムと一緒に居たかったし、後はオレ様に上から目線で言って来た奴等の死に様を拝みたいから、グラムの体に残った訳だ。……だがそれが駄目なら、オレ様は今すぐ悪魔界に戻る」


 ベルはそう言うと、続けて「グレン、どうしたら良い?」と聞いた。

 グレンはベルからの言葉に、少し考え込み「グラム兄さんは、お前の事認めてるんだよな?」と尋ねた。

 その問いに対して、ベルは「許可は貰ってる」と返事をした。


「……それなら、俺がお前を追い出す理由は一つもない。好きにすればいい」


「ッ! ありがとな、グレン!」


 ベルはグラムの中に居座る事を認めてくれた事に喜び、グレンに対してお礼を言った。

 

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