第150話 【休日・2】
それからキャロルを仲間に入れたグレン達は、当てもなくただ商業区を歩き回った。
目的もないが、キャロルが加わった事で自分達が知らない店を説明してもらえ、それまでよりも有意義だとグレンは感じた。
「流石、情報屋なだけあるな」
「王都は庭みたいなものにゃ」
えっへんと自信満々にキャロルはそう言うと、グレンは前方に見知った者を見つけ声を掛けた。
「珍しいな、お前が朝から活動してる何て」
「んっ? ああ、グレンか久しぶりだな、ってかお前女連れかよ。ほんと、英雄様は違うな」
グレンが声を掛けた人物の名は、ダリウス・ヴェリル。
数年前に王都で行き倒れていた所、フローラに助けられてそれ以降、フローラの商会で護衛として働いている。
実力は高く、冒険者としても活動していてランクは〝A〟と高ランク冒険者。
剣術、魔法を巧みに使う魔法剣士タイプで、口が多少悪く誤解されがちだが性格はよく、暇な時は王都の教会で子供達と遊んだりしている。
フローラからの信頼度は高く、重要な任務も任されており、その為に日中では無く夜中動く事が多い。
「ダリウス君久しぶりにゃ~、今日は一人かにゃ?」
「ああ、会長からの頼まれごとを片付けて来たところだ」
「昼間にお前を動かすって、よっぽどの頼み事だったんだな」
「まあな、それでお前らはなにしてるんだ? グレンが連れ去って来た女も連れて、デートか?」
「連れさって来たって……」
ニアの事を連れ去って来たと言った事に対して、間違いでもないためグレンは言い返す事が出来なかった。
そんなグレンにダリウスは、思いだしたある事をグレンに言った。
「ああ、そういやグレン。お前、また会長の所に顔出してないだろ? 用事がある時しか来ないって、絡まれるの俺なんだからちゃんと顔出せよ」
「あ~……そういや最近、訓練で忙しくてまた顔出してなかったな。顔出せって言われてたのに」
ダリウスの言葉で、前回会った時に言われた事をグレンは思いだした。
それからダリウスは言いたい事も言い終え、眠そうな目を擦りながら別れた。
「グレン君、暇にゃら今からフローラちゃんの所に行くかにゃ?」
「そうだな、後回しにしてまた忘れたら怖いしな……」
その後、グレン達はフローラの所へと行くと、丁度出先から戻って来たフローラとバッタリ建物の前で合った。
「珍しいわね。グレンが用事も無いのに来るなんて」
ムスッとした表情でフローラがそう言うと、グレンは申し訳なさそうに「すまない」と謝罪した。
そして場所を会長室に変えて、近況報告会を行った。
「へ~、グレンがあの子を指導ね……凄い事になってるのね。そっちは」
「ああ、まあ言っても訓練しかしてないからな、フローラの方は何か変わった事とかあるのか?」
「そうね……」
グレンの言葉にフローラは少し考え、グレンの目を見た。
「変わった事は特に無いけど、グレンに頼みたい事があるわ」
「頼み?」
「ええ、グレンは確か転移が使えたわよね? それに今日はお休みで、暇だって」
フローラの言葉に、グレンは不思議に思いながら「ああ、そうだが」と返事をした。
「キャロルちゃん、ニアちゃん。この後、グレンの事貸して貰ってもいいかしら?」
「どうぞにゃ」
「いいですよ」
「本人じゃなくて、何で二人に俺の貸し出しの許可をとってるんだ?」
グレンの言葉を無視したフローラは、先にキャロル達を帰してグレンだけを部屋に残した。
「……それで何だよ。急に俺だけ残させてよ」
「言ったでしょ、頼みたい事があるのよ。ダリウスに任せようと思ったけど、グレンが動けるならグレンの方が安全だもの、どうせ暇なんでしょ?」
フローラにそう言われたグレンは、いつも世話になってるグレンは溜息を吐きながら、頼みの内容を聞く事にした。
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