第146話 【カグラ・2】
「ッ!」
最初、様子見から始まるかと思っていた。
しかし、そんな俺との予想とは反対にカグラは、初速から超速度で詰めて来た
「早いなッ」
判断を誤った俺は一瞬出遅れたが、なんとか受け止める事が出来た。
「様子見かと思っているだろうと思いましたから」
「……俺の戦い方は大体知ってると」
「はい。色々と調べさせて頂きましたから」
カグラの言葉に対して、俺は意識を切り替えた。
今の動きから、ヴォルグさんからの聞いていた通りカグラの剣術スタイルは速さに力を入れたタイプだと理解した。
力だったら能力値的にも俺が負ける事は無かったが、速さだと不覚を取った時が命取りだな……。
「ふぅ~」
一度呼吸を整えた俺は、剣を握ってる力を強くしてカグラに向かって振るった。
直撃する。
そう感じ取った瞬間にカグラはブレるようにその場から消え、視界の左端に映った。
「早いだろ、それは——」
ただその動きは最初見た物と同じであり、脳内に記録していた。
昔の俺だったらその次の一手で沈んでいたが、今の俺には〝最強の眼〟がある。
「——ッ!」
俺は足の力を抜き、フワッと体が落ちる感覚と共に、頭上をカグラの剣が通った感覚を感じ取った。
そして再び足に力を入れて、カグラの間合いから距離を取った。
「グレンさんは、やはり凄い方ですね。今の攻撃、初見で避けた人は伯父以外に見た事無いですよ」
「ハハッ、それはどうも」
「ええ、ですから今から更に速度を上げますね——」
言葉を言い終わる前から、カグラの動きは既に動いていた。
そりゃそうだあれだけ動いてて、息切れの一つもしてない。
だから今まで動きが本気ではないと、薄々勘付いていた。
「ああ、俺も上げるぜ」
速度が速い敵に対して、どう対応するか。
それは俺自身が早くなれば、速度の問題はほぼ意味がなくなる。
俺の師匠は、妖精のトップだ。
フレイナは魔法の力も凄いが、素の身体能力もその名の通り凄まじい力を持っている。
「ッ! 驚きました。私の速度に付いてこれるなんて」
「普段しないから周りがボヤけて気持ち悪いけどな、何とかついて行けてるよ」
ただし長時間するのは、今の俺には無理そうだとは言えなかった。
本来、俺の戦い方は敵の実力を見計らい、適した攻撃をするというのが俺の戦い方である。
ただ今この場では、純粋な素の力と魔法剣のみしか使えない。
であれば今の一番適した戦い方は、相手と同じ土俵の速度勝負が一番マシだと俺は判断した。
それから俺とカグラの戦いは続き、互いに徐々に体力が削れて行った。
速度は同じであるが経験値の差で、この戦い方に有利なのはカグラ。
しかし、攻撃手段である魔法剣自体は俺の方が有利な為、手数では負けてるが体力の削り具合で言うと俺の方が上である。
「はぁ、はぁ……」
互いに体力限界が近づいているのは、理解していた。
そんな俺達は無言で、互いに次の一手で決めるという雰囲気を出した。
距離を取り、息を整え、剣を構えた俺達は視線が合い、互いに動いた。
どちらが勝ってもおかしくない状況の中、勝利を掴んだのは俺だった。
ギリギリの所でカグラは、慣れない魔法剣で魔力を消耗して判断が鈍り、俺の攻撃が直撃した。
攻撃が当たったカグラは防具を着ていた事、俺も疲労から威力がそんなに出てなかった事も重なり、吹き飛びはしたものの軽傷で済んだ。
「グレンさん、負けました。やはり強いですね」
「ギリギリだったがな、だが良い勝負が出来たよ。お疲れ、カグラ」
倒れているカグラに手を差し伸べると、カグラは俺の手を取り起き上がった。
そして傷だらけの俺達は、フレイナに回復魔法を掛けて貰い休憩する事にした。
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