第145話 【カグラ・1】
悪魔対策部隊。
その中の魔法剣隊として集められた者達と模擬戦をする事になった俺は、準備運動をして、魔法で作った対戦場へと入った。
相手は、ヴォルグさんの姪のカグラ。
ヴォルグさんの血筋と聞いただけでも凄い相手だと分かるが、カグラは自身の名前だけでも冒険者達からは一目置かれた存在だ。
幼少期からヴォルグさんに剣を習い、齢10歳にしてBランク相当の魔物を単独で討伐を達成し、最年少記録を樹立した。
その後も着実に実績を重ねていき、いくつもの記録を持っている。
何故、俺が数日前まで殆ど知らないカグラの事をここまで知っているのか?
それはあの日、カグラと会った日に俺はヴォルグさんの所へカグラの事を聞きに行ったからだ。
◇
「そういやカグラも魔法剣部隊の中にいたな、それでグレンがカグラに魔法剣を教えているのか?」
ヴォルグはグレンと同じく、悪魔対策部隊の一員として呼ばれており、魔法剣部隊に姪であるカグラが居る事をグレンが来て思いだした。
「はい、今日から教え始めたんですけど……そのヴォルグさんから見て、カグラってどういう奴なのか聞きたいなと思いまして」
「ふむ、成程な。まあ、一言で言ったらカグラは〝剣の天才〟だな」
「剣の天才ですか?」
ヴォルグの言葉に、そう聞き返したグレン。
そんなグレンの顔が面白かったか、ヴォルグを笑みを浮かべてカグラの幼少期の話をグレンにした。
カグラが初めて剣を握ったのは生後半年程の時、ヴォルグがカグラを見に行った際に自分の剣を握ったのが初めてだった。
その時、ヴォルグが直感でカグラは凄い剣士になると感じ取り、5歳の誕生日には腕の良い鍛冶師に5歳の体に合う剣を作り送った。
その貰った剣をカグラは幼少期、血豆が出来るほど振り回し、ヴォルグはそんなカグラの師匠として剣を教えた。
「グレン、お前も俺の元で修行した事があるから覚えてると思うが、俺が修行としてする事覚えてるよな?」
「はい、実戦的な剣術勝負でヴォルグさんに一本入れるまで試合をする奴ですよね? 大体、最初の頃は当てれず時間切れで終わってましたけど……」
「カグラは当時、まだ現役に近い俺の修行を始めて半年で俺に攻撃を当てたんだ」
「……マジ?」
ヴォルグの言葉に、いつもは敬う対象であるヴォルグに対してそんな口で尋ねる程、グレンはその言葉に驚いた。
「嘘ついてどうする? その後はもう俺も調子に乗ってな、色々カグラに教えてやったら全て覚えて行ってよ。気付けば最年少記録を沢山量産しちまったんだよ」
ヴォルグはそう言うと、カグラの持つ記録をグレンに教えた。
「……だから剣の天才ってヴォルグさんは思ってるんですね」
「ああ、魔法とか他の事は置いておいて剣術に関して言えば、経験さえ積めば俺よりも凄い剣士になるだろうよ」
◇
数日前の出来事を思い出しながら、俺は対戦相手のカグラを見つめた。
「こうしてグレンさんの剣を交えられるだけでも、今回参加した甲斐があります」
「そう言ってくれると、俺も嬉しいよ。ヴォルグさんが認めた天才剣士と剣を交えられるんだからな」
「あ~、二人共。準備は良いな? ルールは魔法剣のみでの戦闘だ。それ以外は禁止だし、使った時点で失格だからな」
俺とカグラ、二人の準備が出来たのを確認したガリウスは改めてルールを言った。
その言葉に俺とカグラが返事をすると、ガリウスは会場から出て「はじめッ!」と開始の合図を言い放った。
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