第14話 【成果・3】
フレイナの魔法を撃ち破ったグレンは、破られて放心していたフレイナにとどめの一撃を加え、初めてフレイナとの模擬戦で勝ち星を得る事が出来た。
「いよっしゃぁぁぁ!」
その喜びは生まれて一番の嬉しさと言える程で、グレンは喜び妖精達も一緒に喜んでいた。
そんなグレン達の傍でフレイナは一人、ムスッとした顔でいじけていた。
「フレイナ、負けたからってそんなにいじけるなよ……」
「だって! まだ、負けたくなかったんだもん!」
フレイナは大きな声でそう叫ぶと、グレンの胸に飛び込んで泣き始めた。
流石に負かして泣かせてしまった手前、グレンはフレイナを引きはがすのを躊躇った。
そのままの状態で、暫くヨシヨシと背中をさすって落ち着かせることにした。
◇
「もう。落ち着いたか?」
「……落ち着いたけど、もう暫くこのままで」
試合が終わってから、もう10分程経つのにまだ抱き着かれたままだ。
「いや、真面目にこの体勢がきついんだけど」
「我慢して」
「えぇ……」
完全にこれは、いじけモードだな。
全く、負けたからってこんなにいじけるなよな、こっちなんて何百回と負け続けたんだぞ……
「長~、一人じめズルい~」
「そうだ~そうだ~」
「私達も仲間に入れてください!」
「ちょっ、まっ、お前ら!」
待て待て待て! フレイナだけでも辛い状態なのに、何でお前らも来るんだよ!
そんな俺の悲鳴には誰も意に介さず、我先にと俺へと妖精達が群がった。
フレイナには正面から、そしてそれ以外の全方位から妖精達に囲まれた。
「……もう、いいや。好きにしてろ」
俺は観念して横になった。
それから、俺は戦いの疲れでいつの間にか寝ていたようで、気付いた時には部屋のベッドに寝かされていた。
「んで、何で俺の横にフレイナが居るのかな?」
「えっ、運んであげたから一緒に寝てもいいかなって」
眼を開けて横を見ると、フレイナと目と目が合ってマジで驚いた。
「別に寝ても良いけどさ、そんな顔を近くにされてたら起きた時に驚くって考えて欲しいんだけど」
「だって、近くで見てたいし? あっ、お風呂に入る?」
「……ああ、そうだな。風呂にするか」
俺の言葉に平然と答えるフレイナとのやり取りに疲れた俺は、もうそれ以上聞いても意味がないと思い風呂に入る事にした。
いつもの様にフレイナ達と一緒に湯船に浸かり、今日の戦闘の反省会を始めた。
「なあ、フレイナ。今日の俺の魔法どうだった?」
「戦闘中? それとも最後の?」
「どっちもだな」
そう俺が聞くと、フレイナは「そうね……」と、少しの間考え込んだ。
「戦闘中に関して言えば、もう完璧だと思うわよ。増えた魔力も上手に使ってるみたいだし、魔力に無駄は無いわ」
「成程、それで最後に関しては?」
「……押し負けた手前、あまり強くは言えないけど、あれは無駄の多い魔法だったわ。あんな魔法を連発してたら流石のグレンでも魔力切れを起こしたり、折角覚えた魔法の精度が狂うわ」
「あ~、やっぱりそうか……」
実際に放った本人として、最後の魔法に関してはただ無駄に魔力を込めてしまったと自覚していた。
アレが魔法として成り立ったのは俺の魔法の知識と、フレイナ達と契約して上がった魔力量のおかげだ。
「感覚としては一瞬のことだったから、今は体に弊害は出てないと思うけど、今後あの魔法はやめておこうかな」
「そうね。今よりもっと強い魔法を使いたいなら、もっと鍛錬を積んで技術を上げるしかないわ」
「そうだな、まあでもフレイナに一度勝てたから、取り敢えずの目標達成という事にしておくかな……」
「ええ、いくら無茶な魔法だったとしても、勝ちは勝ちだものね」
そうして反省会を締め、それからは妖精達から試合の感想を聞いたりと楽しい風呂の時間を過ごした。
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