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第138話 【調整・4】


 神聖石、地竜の素材。

 その二つで新しい装備を作れと聖女と賢者から言われたグレンは、受け取るのも若干嫌がりつつも受け取った。

 それから数日が経過して現在、グレンの眼の前にはその素材で作られた装備が置いてあった。


「まずは地竜の装備からじゃな、まあ分かる通り防御力に優れておる。グレンの戦闘スタイルに合わせて柔軟性を求めて、多少防御力が落ちてはあるが。元の素材が良いから、そこまで落ちてはおらん」


 ドルトムが地竜の素材で出来た防具の説明を終えると、その横に座っている人物。

 聖国から聖女によって派遣された鍛冶師の男が、神聖石で作られた剣の説明を始めた。

 希少な神聖石から作られた剣は、全部で三本。

 二つは普通の片手剣用で、1つは短剣が作られていた。


「刃の部分は全て神聖石の物で、更に持ちて部分も聖女様から預かっていました神木を使わせていただきました」


「なんかまた一つ、貴重な物が増えてる……」


 刃の部分は神聖石、柄の部分は神木を使ったと聞かされたグレンはまた一つ貴重な物が使われている事に少し胃が痛くなった。

 その後、説明を聞き終えたグレンは装備を受け取り、予備の剣は異空間に入れて新装備に着替えた。


「似合ってるなグレン」


 ガリウスは新しい装備に身を包んだグレンにそう言うと、グレンは鏡を見て自分の姿を確認した。

 前回と同じく防具、赤色で全体的に統一されていてグレンは自分で見ても似合っていると感じた。


「ドルトムは本当に防具を作るのも上手いが、渡す相手に似合う物をよく作れるよな……」


「儂だってお主等が鍛えるように、鍛冶の腕を鍛えて来たからのう」


 ドルトムはグレンからの言葉に、嬉しそうにそう返した。

 その後、装備の受け取りを終えたグレンは、早速新装備を試す為に一人で迷宮へと向かった。


「っし、まずは魔法剣だな」


 剣によって魔法剣の魔力の通しが違ってくる為、戦闘を始める前に魔法剣をグレンは作った。


「……」


「どうしたのグレン?」


 魔法剣を作ったグレンが無言で剣を見つめていると、フレイナが心配に思い姿を現してそうグレンに尋ねた。


「神聖石ってマジで凄いんだなって、実感していた所だ。フレイナもこの魔法剣見てみろよ……」


 グレンがそう言うと、フレイナはグレンの持つ剣に視線を送った。


「……凄いわね。グレンが今まで使ってた魔法剣より、魔力が高密度で作られているわね」


「ああ、またこれは威力の調整が難しくなったよ……」


 神聖石で作られた剣で出来た魔法剣は、今までの魔法剣と比べて剣に付与された魔法の魔力密度が何倍にもなっていた。

 魔力密度が高くなると、その分魔法剣の耐久性も上がり、更には付与されている魔法そのものの威力も上げる。


「流石、神聖石と言った所かしらね? 神の力と人の力、二つの力が合わさった奇跡の物質だものね」


「そうだな……」


 それからグレンは、取り敢えず一度この剣で戦闘をしてみるかと思い、迷宮の奥へと進んで行った。

 数分後、魔物の群れが現れ、グレンは慌てる事無く剣に魔法を付与して戦闘を開始した。

 その結果、力を入れなくとも魔法剣自体の威力が半端なく一撃で魔物達を倒し、たったの数秒で戦いは終わった。

 勿論、手加減をしていたつもりのグレンだったが素材は殆ど駄目になった。


「この剣、普通の魔物に対しては魔法剣を使わない方が良いまであるな……」


 魔法剣の強さが異常に上がり、使えない素材しか手に入らないと考えたグレンはそう言った。


「そうね。逆にここまでの威力だと、グレンが本当に鍛えようと思った時以外は普通の状態で戦ったら良いと思うわね」


「それが良いな」


 フレイナの言葉にグレンはそう答えると、それからは普通の剣の状態での戦闘を行い、ある程度感覚を掴めたグレンは転移で帰宅した。

 帰宅後、途中から手に入れた素材を鍛冶師達に渡して、ガリウスの所へと向かった。


「どうだった。新しい装備の使い心地は?」


「良かったな、ただ剣の方は魔力の通しが良すぎて魔法剣を使ったら、素材が完全に駄目になるって分かったから、素材が欲しい時は魔法剣無しで戦いをしようって決めたよ」


「そんなに強いのかその剣?」


「ああ、俺の魔力が高いのも関係してるんだが、異常に魔力の通しが良すぎて魔力密度が普通の剣の何倍も高いんだよ」


 グレンはそう言いながら、ガリウスから離れて魔法剣を少ない魔力で作った。

 しかし、その少ない魔力で出来た魔法剣でも魔力密度が高い事は分かり、ガリウスは驚いた顔をした。

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