第137話 【調整・3】
「ああ、それとグレンにもう一つ預かってた物があったんだ」
ドルトムが先に出て、俺も出て行こうとしたらガリウスにそう言われて俺は足を止めた。
「もう一つって、またマーリンか?」
「いや、もう一つの方は聖女様からだな」
「ティアさんから?」
俺はそう聞き返して、部屋の中に戻った。
そしてガリウスは机の下から取り出した箱を開けると、そこには鉱石の様な物と手紙が入っていた。
「何だこれ?」
「分からんな、取り敢えず手紙読んでみたらどうだ?」
ガリウスにそう言われた俺は、手紙の封を切り中身を読んだ。
手紙には先の悪魔との対戦の労いの言葉と、これから悪魔が活発になるだろうから気を付けるようにと書かれていた。
そして肝心の箱の中身の事だが、またしても驚く内容だった。
「——だ」
「んっ? 何て言った?」
「神聖石だ」
「……はっ? いやいや、そんな馬鹿な」
俺の言葉にガリウスは、疑うように俺が持っていた手紙を取った。
そしてその手紙を読み終えると、手が震えながら箱を指した。
「ま、マジで?」
「鑑定使ったら、本物だった。フレイナ、お前の眼から見てもこれは本物だよな?」
「ええ、本物ね。それも純度がかなり高い物ね」
フレイナの言葉に、俺とガリウスは言葉を失った。
俺達が驚いた〝神聖石〟とは、聖国だけが所有している世界で一番貴重な鉱石。
その名の通り、この世界を見守っている神の魔力を聖女が鉱石の形に整えた物だと、俺は聞いた事がある。
「ここまでグレンの力を信用しているのも」
「信用とか、そういう次元で頷けるような物じゃないぞこれは……」
俺は驚きながら、フレイナの言葉にそう返した。
流石にこれは今すぐにでもティアさんに確認を取ろうと思い、通信魔道具を使いティアさんに連絡を入れた。
「どうしましたか、グレンさん?」
「どうしましたかって、分かってるでしょティアさん? なんてものを渡してるんですか」
「必要だと思い渡したんですよ。武具を全て失ったと聞いたので、それでしたら新しい装備にそれを使っていただこうと思いまして」
ティアさんは通話越しでも分かるほど、楽しそうにそう言った。
「いや、それは有難いんですけど……」
「グレンさんは、色々と自分の力を自覚した方が良いですよ?」
言い返そうとしていた俺の言葉に遮り、ティアさんはそう俺に言って来た。
「武具のせいでグレンさんが悪魔との戦いに負けるなんて事になったら、人類は非常に困るんですよ。でしたら、武具程度私達でなんとかしようと師匠と話し合ったんです」
「……だからって、地竜の素材と神聖石って流石に限度というか、色々超えてませんか?」
「超えてませんよ。ですので、グレンさんは気にせず渡した素材を使って装備を整えてください」
ティアさんはそう言い切ると、プチッと通信を切った。
「……なんか聖女のイメージが少し崩れたな、もうちょっと人を説得していくタイプかと思ってたんだが」
「意外とティアさんはあんな感じだぞ」
言い返す事無く通信を切られた俺は、何とも言えない感情でガリウスの言葉にそう返した。
しかし、これは困ったな神聖石を使って武具を作るとなると、相当腕が良い奴じゃないと無理だな……。
「ドルトムは流石に防具の方で忙しいよな?」
「ああ、地竜の素材の加工は難しいと本人も言ってたからな」
「さっきの話だと、武器も地竜の物を使うって言ってたけど、その分を神聖石でって変えても難しいよな?」
「本人じゃないから言い切れはしないが、流石のドルトムでも短期間でそんな難しい素材を二つも加工して装備を作る事は難しいだろうな」
ガリウスの言葉に、俺は「そうだよな」と呟いた。
それから取り敢えず、ドルトムを呼び戻して先程の話を伝えると「無理じゃな」と俺達と同じ意見だった。
「素材量的に考えると、神聖石は武器に加工した方が良いの」
「ああ、良くて剣が二本作れる量だしな。防具にするには厳しい量だな」
取り敢えず話し合いを行った結果、地竜の素材は防具に神聖石は武器に加工する事を決めた。
しかし、肝心の神聖石を加工してくれる鍛冶師の当てが全く見当がつかない状態だ。
「ドルトム、お前が認めてる鍛冶師は居ないのか?」
「居るには居るが……そいつらがそいつの加工をしてくれるかはわからんの、儂でも地竜の素材を扱う事自体初めてじゃから緊張しておる」
「そうか……どうすっかな……」
その後、取り敢えず俺の方でも鍛冶師を探すと言って俺達は解散した。
それから訓練が終わり、家に帰宅した俺はもう一度ティアさんへと連絡を入れた。
「どうしましたか、グレンさん?」
通信に出たティアさんに俺は、今日の話し合いの事を伝えた。
「すみませんグレンさん、言い忘れてましたね。神聖石の加工については、こちらで人を用意しています。明日辺りには、そちらに着く予定です」
「えっ、鍛冶師も用意してくれたんですか?」
「流石に神聖石の加工は、一般の方には難しいですからね」
それからティアさんは派遣した人の特徴等を伝えると、あちらは今から会議の時間みたいで通信を切られた。
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