第135話 【調整・1】
悪魔共との戦いから目覚めて数日が経ち、俺は一人で迷宮まで来ていた。
目覚めて直ぐにキャロルから「式典があるにゃ」と言われた時は、また嫌な事が起こったと落ち込んだ。
だが、その行事も既に終わり、俺はガリウスに許可を貰い一人で迷宮に力の調整にしにやって来た。
「グレン、昨日死んだような目してたのに動いて大丈夫なの?」
「大丈夫だ。というか、今日の日の為に昨日の苦行を乗り越えたんだからな……」
フレイナの言う通り、昨日は本当に散々だった。
式典までは何とか我慢できた。
しかし、その後の貴族達との話だったり、戦いを披露するので俺は徐々に嫌気が増して行った。
元々、ああいう目立つ所に立つような人間じゃない俺は、ストレスが溜まり昨日は陽が完全に沈む前に眠るぐらいに疲れていた。
「それより、フレイナ。ちゃんと見ててくれよ。俺も一応、あの時は使え居たけど今どうかは分からないからな」
「ええ、分かっているわ」
フレイナはそう俺の言葉に返事をして、俺は心配に思いながら先に進んだ。
今回来た迷宮は、いつもの迷宮では無い場所で魔物のランクが少し高い所へと来た。
いつもの場所だと下に降りないと、ランクの高い魔物と戦えないのが不便だと感じ、序盤からランクの高い魔物が居る場所を今回は選んだ。
「おっ、ゴブリンのランクが高い奴だな。早速、魔法剣使ってみるけど、危なかったら頼むな」
俺はフレイナにそう言って、剣を抜いていつもの様に魔法剣を使おうした。
すると、いつも使っている以上に魔法剣が出来るのが早く、更には剣に通した魔力も前よりも上がっていた。
「やっぱ、あの時の戦いで感覚が壊れてるな……」
俺は出し過ぎた魔力を調整して、俺に気付きこちらに襲い掛かって来たゴブリンを一撃で仕留めた。
思っていた以上に魔力が増えた事で、剣に通す魔力の調整が難しくなったな……。
「グレン、折角魔力が増えてるんなら、その増えた分を有効に使ったらどうなの? 前のままで戦おうしたら、意識がそっちに向かうし、新しく戦闘に使いやすい魔力の流れを掴んだ方が良いんじゃない?」
「それもそうだな、前の状態で戦おうとしたら意識がそっちに集中したしな……取り敢えず、前の倍で一回戦ってみる」
俺はそう言って、剣に通す魔力を今の倍に増やした。
「んっ、さっきよりかは楽に感じるな……でも、もうちょっと増やせそうだな」
魔力の感覚を調べながら、俺は剣に流す魔力の調整を行った。
その結果、魔力が増える前の時から約2.5倍程の魔力を通して戦うのが良いと感じた。
「2.5倍か……魔力量的には特に不安では無いが、この状態で普通の魔物と戦った時に素材が傷つかないか心配だな」
「そこは、グレンの腕次第ね。最初は、素材を傷つけにくい風の魔法を付与して戦ったらどうかしら?」
「そうだな、雷だと絶対に素材を駄目にして無駄な戦いになるのが目に見えて分かるからな」
俺はそうフレイナの提案を受け入れ、雷の魔法剣を一度解除して風の魔法剣を発動させて戦いを続行した。
その後、調整を終えた俺は迷宮から出て素材をクランの鍛冶師達に渡す為にクランハウスへと転移した。
「グレンさん、おかえりなさい」
「ああ、ただいま。一応、持って帰れそうな素材は持ってきた。ただ最初の方は、調整が難しくて駄目にしたからそれは捨てて来た」
そう言って俺は、鍛冶師達の前に今日の手に入れた素材を出した。
量的にはそこまで多くは無いと俺は思っていたが、鍛冶師達は喜んで素材を受け取ってくれた。
「あっ! グレンさん、お貸しした装備ですがどうでしたか?」
素材の受け渡しを終えると、鍛冶師の一人がそう俺に聞いて来た。
俺の装備は悪魔共との戦いで全損してしまった為、新しく作ってくれと鍛冶師達に頼んだ。
すると直ぐには出来ないと言われ、取り敢えず余り物であった装備を借りて迷宮に調整に向かった。
「そうだな、悪くは無いけどやっぱり自分に合って無い感じがしたな」
「やはりそうでしたか……」
「だが、装備の質は変わってないから、そこまで使い難さは感じなかったぞ」
俺の言葉に落ち込みそうになった鍛冶師にそう言うと、笑顔を取り戻して俺の装備を全力で作りますと言った。
それから俺は、鍛冶師達と別れて家に帰宅した。
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