第133話 【戦いの後・2】
「それで、さっきチラっと言ってたけど褒美を授ける為に王城に出向かないといけないのか?」
あの後、無言で食べ進めたグレンはあっという間に、用意された料理を完食した。
それなのに苦しそうにしていたグレンの姿にキャロルは内心呆れつつ、グレンからの質問に答えた。
「そうにゃ。悪魔退治に貢献したグレンに褒美を授けるって言ってたにゃ」
「……それって裏でちょっとお金をもらうって感じだよな?」
「王族を助けた相手に、そんな裏でコソコソ渡すと思うかにゃ? ちゃんと王城で大々的にやる予定って言ってたにゃ」
「マジかよ。また貴族連中の前に出るのかよ……」
「そうにゃ。でも、前より人は少ないにゃ」
キャロルは以前の、昇格祝いで王城に出向いた時と比べて人が少ないとグレンに言った。
「確かにそうだけどよ……確実に前より視線が多くなってると思うんだよな……」
「それはそうでしょね。以前よりグレンの価値は更に上がってるもの」
「価値って、まあSランク冒険者に加えて悪魔退治もしたからな……」
「ええ、それに私達の事もバレたでしょ?」
フレイナの言った通り、悪魔事件でグレンは妖精達に街の安全の為に動くように指示を出した。
それによって、港街の住人は沢山の妖精とその妖精を纏めるフレイナの姿を確認した。
そしてその妖精達がグレンの周りで心配気に見ていたり、フレイナがグレンを介抱している所を見られていた。
「確かにそっちの方が今は、話題性はあるにゃね。妖精に愛されし者って、グレンの事を言ってる人もいるにゃ」
「……だからか、なんかやけに家の外が騒がしかったのは」
起きて直ぐに眼の能力で周囲を確認して、多くの人が家の周りに居るを事をグレンは知っていた。
「妖精と契約したい人だったり、妖精を研修してる人、あとは単純に妖精が好きな人が集まってるにゃ。あたしも入るのに苦労したにゃ」
「……妖精界を出る時にフレイナが隠した方が良いって言ったの、合ってたな」
「そうでしょ? グレンが思っている以上に私達は、人間族にとっては注目を集めるのよ。今も昔もね」
フレイナからそう言われたグレンは、取り敢えず妖精関連に関しては一先ず置いておく事にした。
「それでその俺の褒美を渡すのはいつなんだ?」
「にゃ? 今回は意外とアッサリ引き受けるんにゃね」
「王家関連で断ろうとしても無理だって散々身をもって分かったからな、嫌な事はさっさとして風呂にでも入って全部忘れたいんだよ」
ため息交じりにグレンはそう言うと、キャロルは納得してグレンの質問に答えた。
一応、グレンがいつ目覚めるか分からなかったが、グレンが目覚めたと報告を受けて直ぐに日程を明後日行うと決まったとキャロルは伝えた。
「随分と急だな」
「今回は〝悪魔〟って今までにない敵で民衆を安心させる為にって、思いもあるみたいにゃ。式は王城で行うにゃけど、その後にグレンの強さを見せるのも計画してるって言ってたにゃ」
「……もういいよ。どうせ断っても無理だし」
諦めたようにグレンはそう言うと、諸々の連絡を伝えたキャロルは王妃の所に戻ると言って家を出て行った。
それからグレンは外に入る人の数を見て、普通に出て行けないと判断して転移眼でクランハウスへと移動した。
クランハウスにはいつも通り、メンバー達が居て突然現れたグレンに驚いた者も居た。
「グレンさん! 目覚ましたんですか!?」
クランにはグレンが眠ったままだと伝えられていて、心配に思っていた者が多くグレンの周りにメンバー達は駆け寄った。
そんなメンバー達にグレンは「心配かけて、すまないな」と言ってガリウスの所に行くと言って、メンバー達を置いてリーダー室へと向かった。
「おっ、今じゃ王家を救った勇者と言われてるグレンじゃないか」
「……妖精以外にも変な名が出回ってるのかよ」
ガリウスが言った呼び名に面倒くさそうに反応したグレンは、そのまま部屋の中に入った。
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