第13話 【成果・2】
翌日、通わせが無事に終わったので訓練の時間が増え、朝から魔法の訓練をしている。
訓練内容は色んな事をやっていて、偶に模擬戦などもしている。
「さっ、グレン。今日も訓練頑張りましょうね」
「おう。今日は、模擬戦の日だったよな? 今日こそ、フレイナに勝つぜ」
「ふふ、子供達との通わせも終わったし、どれ位グレンが強くなったか楽しみだわ」
前回は良い所まで行ったが、結局フレイナに負けてしまった。
俺はリベンジに燃え、準備運動を入念に行い試合会場へと移った。
◇
試合会場は、訓練場から出て直ぐの所の野外。
流石に戦いとなると激しさもある為、グレンの為にとフレイナが一夜で作った場所である。
そんな試合会場には、グレンと契約している妖精達が沢山集まって観戦席から「グレン頑張って~」と応援している。
「ほんと、グレンは人気ね」
フレイナは周りから聞こえる声援に、グレンを茶化す様にそう言った。
言われたグレンは「まあ、もう慣れたな」と呆れ口調で返した。
「あら、グレンったら今日は随分と気合入っているみたいね。やっぱり、この間の負けが悔しかったの?」
「当たり前だろ? あそこまでいい試合したのに、負けたんだからな……今日こそは、絶対に勝つからな?」
闘志を燃やした目でグレンがフレイナにそう言うと、フレイナはブルッと体を震わせ「楽しみだわ」とフレイナもまた好戦的な目をして答えた。
そんな二人の間に、この試合の審判役の妖精が出て来た。
「長、グレン。準備はい~い?」
「いつでもいいぞ」
「私も良いわよ」
「んっ、それじゃ合図出すよ~。さ~ん、に~、い~ち、はじめっ!」
審判役の妖精はそう言うと、空高く火の魔法を放った。
「ブォンッ!」
合図が上がった瞬間、グレンとフレイナの両者は魔力を一点に集め、そのせいで風圧が起きた。
そして次の瞬間、グレンは【火属性魔法】フレイナは【風属性魔法】の威力が凄まじい魔法を放ちあった。
当然、その魔法はぶつかり合って、相殺された魔法の力に爆風を発生した。
「この程度の魔法は、流石にもう対応できるわね」
「まあな、散々鍛えられたからな」
そう平気そうに言うグレンだが、この魔法自体は外で言うと、それこそ国に仕えている魔法使いのトップクラス。
もしくは、そのトップクラスの者達が集まって使用するようなレベルの魔法である。
フレイナは元々、妖精の長という立場もあり、人間とは比べ物にはならない程の魔力と魔法の技術を持っていた。
対するグレンだが、この半年間でちょっと出来る魔法剣士から、化物へと変化していた。
「今度はこっちから行くぜ、フレイナ!」
よくて一匹、人生で妖精と出会わないという人間のが多い。
そんな中、グレンはフレイナが先頭切ってやったというのもあるが、沢山の妖精と契約して、素の能力値自体が妖精界に来る前と遥かに変わっている。
純粋な力だけで言えば、人間界に居る〝化物級〟と呼ばれる者達と同格レベルだ。
「ッ! 中々、やるわねグレン! でも、私だって負けないわよ!」
「ハハッ! そうこなくっちゃな!」
グレンとフレイナ、当初のバチバチとしていた雰囲気は消えて純粋に戦いを楽しみ始めた。
「あ~、また始まったね~」
「長って、グレンと戦ってる時が一番いい笑顔だよね~」
「多分、二人だけの空間だからだよ~、私達あの中に入れないし~」
「「「絶対にそれだよね~」」」
観戦してる妖精達は、楽しそうに戦う自分達の長を見て呆れた口調でそう言った。
そんな風に子供達に言われているとは知らず、フレイナはグレンとの戦いを存分に楽しんでいた。
戦いこそ真剣ではあるが、以前まで手を貸す事さえ出来なかった愛しき相手との特別な二人だけの時間。
乙女心というより、母心寄りのフレイナは純粋に成長するグレンを近くで見れて、嬉しく思っていた。
「はぁ、はぁ……」
「ふぅ~……」
模擬戦が始まってから、大体一時間が経過した。
両者、激しい攻防を続けて魔力の消費も激しく、息を荒くしていた。
「次で決める」
覚悟を決めた目でグレンはそう言うと、フレイナは「全力で来なさい」と煽り、互いに魔力を高め始めた。
数秒間の静寂。
その次の瞬間、グレンとフレイナはこれまでの試合の中で見せて来た魔法を上回る魔法を放った。
強力な魔法がぶつかり合ったが、最初の魔法とは違い相殺せずに競り合っていた。
これは、両者これが最後の一撃という事を分かっていて、魔法を放った後も魔力を出し続けていた。
「くっ……ここで負けてたまるかぁぁぁ!」
丁度真ん中で止まっていた二人の魔法だったが、グレンの意地と根性。
ついでに負けっぱなしで積もり積もっていたストレスをグレンは、この魔法に乗せ更に威力を増した。
そして遂にこの半年間で初めて、フレイナの魔法を撃ち破った。
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