第128話 【港の決戦・1】
そして旅行最終日、グレン達は初日に見た王家が所有している船に乗って海に出ていた。
毎回この街に旅行に来た際は、こうして船に乗って釣りをしたりするのが定番だとアルがグレンに教えていた。
「釣りか、昔やった事はあるけど最近は全くやってなかったな……」
「グレンも釣りとか、やった事有るんだな。なんか、そういうのやった事が無いイメージだった」
「いっても俺は教会育ちだからな、川で釣りしたり普通にしてたぞ? というか、基本的に一人で出来る事をやってたからな」
性格を変える前も後も、基本的に一人行動のグレンは当時の思い出を少しだけアルに語った。
基本的にアル達の情報には、王都に来た頃からのグレンの情報が多く、幼少期のグレンの情報は殆ど知れていなかった。
その為、グレンの幼少期の話をアルとラフィは興味津々で聞いていた。
「グレンさんが虐められてたって信じられないですね……」
「というか、一人で居る事を寂しいって感じてたって事も驚いたよ」
グレンの過去を聞いたアル達は、今のグレンからは想像も出来ない内容にそう感想を言った。
その後、釣り場のスポットの着いてグレンは釣り竿を借りて、アル達と一緒に釣りを始めた。
「ぐ、グレン。これって、なに?」
「んっ? ああ、ニアは初めてって言ってたな。こいつをこの針の先に付けるんだよ」
帝都から出た事が無いニアは、釣りが初めてで釣り竿と用意された餌に困惑してグレンに聞いた。
グレンはニアの釣り竿と餌を取り、針の先に餌を付けてやり釣り竿を渡した。
それからグレン達は、他愛もない話をしながら釣りを楽しんだ。
一番釣れたのは以外にもリシアナで、その事に驚いたグレンに「毎年私が一番釣ってるのよ?」と自慢気にリシアナは言った。
そうして船の上での釣りを楽しんだ王家一行とグレン達は陸に戻り、別荘へと帰宅した。
「グレン、この後風呂一緒に入らないか?」
「別に良いが、話し合いは良いのか? 明日、出発だから話し合いがあるって言ってなかったか?」
帰宅後、夕食を食べたグレンは少し休憩して風呂に入ろうと考えていた所に、アーノルドが一緒に入ろうと言いに来てそう言葉を返した。
「話し合いならもう終わった。いっても毎年恒例だしな、近衛騎士は入れ替えもそこまで無いから連絡事項だけ言って終わったんだよ」
「そうか、まあそれなら良いけど……んで、そこで隠れて見てる王子様はどうするんだ?」
アーノルドの後方、廊下の曲がり角から見ていたアルに対してグレンはそう声を掛けた。
グレンからそう言われたアルは体をビクッと反応させ、一緒に入るとグレン達に言った。
その後、グレンはアーノルドとアルと一緒に別荘の露天風呂に入浴した。
最終日という事で、ゆっくりと入り堪能したグレンだった。
「ふぅ~、最初はこの旅行に護衛として参加させられて嫌だったけど、あの露天風呂と出会えたのは良かったな……偶にで良いから、ここに入り来れないかな」
「それは難しいでしょ、王家所有の別荘なんだから」
グレンの言葉に、フレイナがそう返した。
「眺めも良いし、湯の温度も良いしで最高だったな~」
「そうね。眺めも最高だったし、良いお風呂だったわね」
流石にアーノルドやアル、他の男も居たため旅行中は一緒に風呂に入らなかったフレイナ。
しかし、折角の風呂があるのに入らないのは勿体ないとグレンが言い、キャロル達と一緒に入ってきたらどうだ? と提案した。
その提案をフレイナは受け、旅行中はグレンとは入らずキャロル達と一緒に入り、グレンと同じく風呂の気持ちよさを堪能していた。
「これなら、また護衛としても参加しても良い気がするな……」
そうグレンは言ってベッドに横になり、眠りにつこうとした。
その瞬間、グレンとフレイナは近くに強大な魔力の反応を感じ取った。
「急いで結界を張れ!」
グレンがそう言うと、妖精達は一瞬にして港街を囲う結界を張った。
そして次の瞬間、港街の上空から太陽と見間違う程、大きな火の玉が街目掛けて振って来た。
一瞬の判断で結界を張らせた事で、街には被害が出なかった。
それを確認したグレンは、急いで戦闘の準備をして外へと出た。
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