第127話 【王族と旅行・4】
王家の旅行に護衛として半ば強制されたグレン。
港街ハブーンの王家所有の別荘宅の庭にて、近衛騎士団長アーノルドと模擬戦をしていた。
「ふんっ!」
身長がグレンより高く、約2m程あるアーノルドは大剣をグレンに向かって振り下ろした。
その攻撃に対してグレンは片手剣で、簡単にその攻撃を弾き返した。
攻撃を簡単に返されたアーノルドだったが、グレンの強さを知っており驚かずただ攻撃を続けた。
「昔より、剣が鋭いな。訓練したと聞いていたが、グレンの成長速度はやはり面白いな」
「我流の剣術だから、近衛騎士団の団長からみたら粗末なものじゃないか?」
「そうでもないぞ、実戦で鍛え続けられた剣術の方が俺は戦いが苦手だしな。それにグレンの戦い方は、俺の一番苦手とする魔法と剣術を合わせた技だからな」
近衛騎士団長アーノルド・ブレッグ。
歳は32と若く、歴代の近衛騎士団団長において最年少でこの役職に就いている。
得意な戦いは剣術で「剣の天才児」と幼き頃は呼ばれ、今ではデュレイン国最強の剣士とまで呼ばれている。
またグレンとは、グレンが姿を消す前から顔見知りである。
繋げたのは、デュレイン国王都支部冒険者ギルドのマスターをしているヴォルグである。
ヴォルグを尊敬しているグレンは、ヴォルグの一番弟子であるアーノルどの事も知っていて、何度か手合わせもした事がある。
「まあ、でも今は魔法剣は使わないよ。流石に王家所有の別荘宅の庭を破壊したら、後が怖いからな」
「グレンなら許されそうだがな、王家から気に入られてるみたいだし」
アーノルドは笑みを浮かべてそう言うと、グレンは困った顔をして「何でか、分からんがな」と答えた。
その後、模擬戦は続きは王家は楽しそうに二人の戦いを観戦した。
また二人の戦いに一番熱狂していたのは、言わずもがな第一王子であるアルであった。
グレンを憧れの対象と置き、アーノルドの事も信頼する家臣を思っているアルは二人の戦いを見て、より剣術を学ぶと決意した。
「ふぅ~、王家の別荘なだけあって風呂は最高だな~」
模擬戦後、汗を流す為にグレンとアーノルドは風呂に入る事にした。
別荘の風呂には露天風呂があり、その眺めは絶景でグレンは初日の入浴時間は軽く2時間は超えていた。
「そういや、グレン。一年の姿を消した後、やけに風呂が好きになったって聞いたが何かあったのか?」
「色々とあったな、まあ話すと長いが。簡単に言うと、風呂の良さに気付いたんだよ」
「成程な……」
アーノルドはグレンの言葉にそう言うと、グレンに向かって頭を下げた。
「グレン、」
「良い。あの時は俺がそう決め込んでいたから、お前が助けなかったせいじゃない」
王族から色々と聞いているアーノルドは、グレンがどうなったのか詳細に聞いていた。
自身もグレンと関わっていて、それに気づいていながら手を貸せなかった事を悔やみ、グレンに謝罪をしようとした。
しかし、それを察したグレンはアーノルドが言い終わる前に止めた。
「それにあれがあったから今、俺は自分の為に色々と出来てるからな。結果的に良かったと思ってるよ」
「……だが、お前は一歩間違えたら死んでいたと」
「それこそお前が謝罪する意味は無い」
キッパリとグレンからそう言われたアーノルドは、納得がいかない顔で「分かった」と返した。
「だが! 今後、お前が困ってたらお前が拒否しても助けるからな? 覚悟しろよ」
「何でそれに覚悟がいるんだよ! ……あの時の俺はもういない、だから俺が困ってたら助けてくれよアーノルド」
そうグレンから言われたアーノルドは、我慢していたのか大粒の涙を流した。
それからグレン達は、辛気臭い話はやめてゆっくりと風呂に入る事にした。
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