第124話 【王族と旅行・1】
王族の旅行は定期的に行われており、その度に王都を出る際に王族を見送りする列が出来る。
グレンはそんな見る側の立場だったのだが、今回は護衛として参加する事になり、王家の兵士達と並んでいた。
「……」
「グレン君、笑顔にゃ。皆が見てるにゃよ?」
キャロルにそう注意をされたグレンは、ムスッとした表情から無理やり笑みを作り若干怖い顔となった。
その後、無事に王都を出た王家一行は護衛達も馬車に乗り目的地へと向かった。
「嫌だって言ったのに、何でやらせたんですか……」
「その方が民が安心できるからだな、グレンの名は自分が思っている以上に信頼があるんだよ」
グレンの愚痴に対してそう答えたのは、デュレイン国国王グラヴィスだった。
グレンは現在、王家が乗る馬車にキャロルとニアと共に乗っている。
「信頼……正直、自分はそこまであるとは思えませんけどね」
嫌な思いをしたばかりのグレンは、卑屈そうに国王の言葉にそう返した。
そんなグレンと国王のやり取りの横では、ニアは楽しそうに王子達と話をしていた。
昨日まで緊張していたニアだったが、実際に王族と会って少し話をして怖くないと感じたニアは同年代である王子達と普通に会話をしていた。
「グレン君、そろそろ機嫌を治すにゃよ。ちょっと、目立っただけにゃ気にする事は無いにゃ」
「……はぁ、お前の言葉を聞くのは癪だが確かにそうだな。取り敢えず、任務に集中するとするか」
グレンはそう言うと、外で楽しそうに飛んでついて来ている妖精達に周囲の状況を聞いた。
「一応近くには、魔物も怪しい奴も居ないみたいですね。何かあったら直ぐに報告するように言ってるので、取り敢えず安心して旅を楽しんでください」
「そうか、分かった」
国王は報告を聞くと、窓を開けて馬に乗っている近衛騎士団長アーノルド・ブレッグに近く魔物は居ない事を伝えた。
報告を聞いたアーノルドは「了解いたしました」と返事をして、国王は窓を閉めた。
「グレン、いつ魔法剣を教えてくれるんだ?」
そうして、国王との会話が終わるとニア達と楽しそうに会話をしていたアルがそうグレンに尋ねた。
「馬車の中でどう教えるんだよ? 今日は、確かこのまま進んだ街で一拍するだろ? その時に教えるから今は待ってろ」
「絶対だぞ? そう言って、教えなかったら権力でグレンを縛るからな」
「怖い事言うなよ! どうせ、やる事無いし逃げねぇよ!」
怖い言い回しをしてきたアルに対して、グレンは叫びながらそう答えた。
そんなグレン達の会話を見ていたニアは、不安そうに「グレン、王家にそんな風に話して大丈夫なの?」と聞いた。
「こう話す様に言われたんだよ。一応、公の場では言わないって約束だけど、それ以外は敬語を無しで話す様に命じられてるんだよ」
嫌そうな視線をアルに送りながら、ニアに伝えたグレン。
「グレン、何だよその目は」
視線に気づいたアルがそう聞くと、グレンはその言葉を無視して王女との会話を始めた。
「そう言えば、アル達は学園に通ってるんだよな? 学園ってどんな所なんだ?」
「どんな所ですか……そうですね。貴族社会を学園内に収めた感じですかね?」
「窮屈」
「そうね。今も昔も学園は大人の貴族社会を子供に移し替えたようなものね」
「ああ、一度変えてやろうとしたが結局今の形に戻っていたな」
ラフィ、アル、王妃、国王の順にグレンの質問に答えた。
それらの回答に、キャロルが今の学園について簡単に説明をした。
デュレイン国王立学園は創立当時は、平民も通える〝学び舎〟として創られた。
しかし数十年後が経った頃、平民と貴族の間で問題が起き、その問題が大きくなってしまった事で貴族だけが通える学園と制度が変わった。
その結果、大人同士の貴族社会とは別の子供同士の貴族社会が学園内に出来上がった。
「子供貴族社会……なんか色々めんどそうだな」
「ええ、面倒ですよ。私に取り入れば、何でも出来ると思っている方が居たり、教師の中にも媚を売る者は居ましたから」
教師に関しては、父である国王に報告して学園から追放したと王女は付け加えて言った。
そんな学園の情報を聞いたグレンは、自分が平民として生活出来て良かったと安心した。
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