第12話 【成果・1】
妖精達との魔力の通わせを始めてから、半年が経過した。
午前中は通わせ、午後は魔法の訓練と分けていたおかげでこんなに時間が掛かってしまったが、無事に全ての妖精との通わせを終わらす事が出来た。
「しかし、最初に比べたら妖精の数が本当に増えたよな……通わせをしてる途中も日に日に増えてて、いつ終わるんだ? ってマジで考えてたよ」
「最近になってようやく落ち着いたものね。グレンが妖精に好かれてるのは分かってたけど、まさかここまで多くなるとは長の私でも分からなかったわ」
妖精界に入った時は、この場所には50もいない位の数しか妖精は居なかった。
しかし、今はその10倍程の数の妖精が一緒に暮らしていて、全て俺と契約を結んでいる。
「なあ、フレイナ。契約って複数人に出来ないのに、こんな数が俺についても大丈夫なのか?」
「別に大丈夫よ。契約もグレンが無理矢理じゃなくて、逆にこの子達が勝手に契約してるもの」
フレイナを初め、俺から妖精に契約を持ち込んだ事は一切ない。
全て相手が勝手に契約をしていて、俺も気づいた時にはこんな数になっていて驚いた。
「それで、あれだよな。こんな数になる前に、フレイナには止めて欲しかったな……」
「私がまずグレンに勝手に契約なんてしてるから、止める事が出来なかったのよね……」
「ああ、そうだったな……」
その後、いつもの魔法訓練を終えた俺は、フレイナ達と浴場に移動した。
そう言えば、妖精界に入ってから前まで結構あった〝欲〟が無くなったな。
「なあ、フレイナ。前の俺を観察してたって、前言ってたよな?」
「ここに来る前の事? それなら、見てたわよ?」
「ならさ、知ってると思うけど俺って結構な頻度で娼館で性欲を発散してたと思うんだけど、今フレイナの体を見てもそう思わないのって何か知ってるか?」
「グレンが私の体を見てもあまり反応しないから気づいてたけど、その言葉を直接言われると傷つくわね……まあでも、心当たりならあるわよ?」
フレイナは若干怒った顔でそう言うと、その心当たりについて話してくれた。
以前の俺は、脳に雷魔法で治療と称してまあ強い暗示をかけていた。
その暗示によって感情の発散を全て性欲に持って行って、それで心が壊れるのを防いでいたとフレイナは言った。
「ああ、成程な。納得がいくな、あの頃の記憶もあるからどうやってあの状態を保っていたのか俺自身、不思議に思ってたんだよな」
「ギリギリの所で保っていたって感じよ? 迷宮内だと感情の捨て先がない上に、パーティーの女性には欲の対象と見ないように暗示も掛けてて、一時はモンスターに欲が向きそうになってた時もあったわね」
「よく覚えているな……まあでも、あの時はマジでヤバかったな……」
それは駆け出しから中堅者となり、迷宮での活動が増えた頃の話だ。
もうその時に既に、俺と将来を誓った相手も含めてパーティーの女はアレインの女となっていた。
それを知っていた俺は、万が一にも手を出さない為に暗示をかけたうえで一緒に行動を共にしていた。
そして事件が起きたのは、そんな迷宮に潜って3日目の事だ。
長い攻略をするのはこの時が初めてで、そんな時でもアレイン達はお盛んだった。
毎日毎日、テントから聞こえる喘ぎ声と匂いに、徐々に暗示の力を強くしていた俺は、その時現れた魔物を性欲の対象と見てしまったのだ。
その魔物というのが、女性の体を持つ草の魔物アルラウネで、あと一歩理性が戻らなければ、俺は間違いをおかしていた。
「あと一歩の所で気付いて、本当に良かったよ……」
「あの時は私もヒヤヒヤしたわよ?」
「俺も気づいた後は、流石に自分のおかしさに気付いてアレイン達に言って、直ぐに迷宮を出て娼館に向かったよ」
あの時の経験から迷宮には長くても二日か、金に余裕が出来てからは防音用の魔道具を買うように対策をした。
「そう考えると、俺って相当自分に無理を強いていたんだなって思うよ」
「そうよ? だから、もう二度としちゃ駄目よ?」
「ああ、分かってるよ。それに今なら、嫌な事があったらフレイナ達に相談するしな。当時は、相談する相手すらいなかったし、それも原因だったんだろうな」
唯一、悪い噂が流れても俺の事を気にしてくれた人も居たには居た。
しかし、遠い場所に居たし頻繁に会う事も出来ない為、俺は自分が持つ解決策、雷魔法での治療に頼り続けていた。
【作者からのお願い】
作品を読んで面白い・続きが気になると思われましたら
下記の評価・ブックマークをお願いします。
作者の励みとなり、作品作りへのモチベーションに繋がります。