第119話 【新生活・3】
そんな感じに日々の充実感が増えたグレンだったが、帝国から帰国して数日が経った休日にグレンは王城に呼び出されていた。
「……呼び出した理由、聞いても良いですかリシアナ様?」
「ごめんなさいね。本当はグレン君に頼るつもりはなかったのよ? でも、ほら国を助けた事で一部の貴族もグレン君に信頼を置いてるみたいで……」
王妃はそう前置きをしてからグレンに、今回呼び出した理由を伝えた。
◇
「何で、俺が王族の護衛に選ばれるんですか……それって、近衛騎士の仕事ですよね?」
帰国して充実した生活を送っていた俺は、どん底に落とされた気持ちでそう聞き返した。
「それに、今の時期に旅って聖国とか協力してくれてる国から何か言われたりしないんですか?」
「普通の生活を送っていた方が逆に怪しまれないって言われているわ、だから安全面だけちゃんと考えて旅をするって決まったのよ」
聖国のトップって実質ティアさんだったよな? 何で許可しちゃうんだよ!
「それと、グレン君に指名が入ったのは前回の事件解決に貢献した功績とSランク冒険者だから指名されたのよ」
「Sランク冒険者なら、俺以外にも居るじゃないですか。それこそ、マーリンを呼び戻せばいいじゃないですか」
「賢者に旅の護衛は流石に頼めないわよ」
「……」
何でマーリンは駄目で、俺には行けるんだよ!
そう内心叫び、天井を見上げていると俺の顔を覗き込む、馬鹿猫の顔が目に入った。
「ふんっ!」
「にゃっ! い、行き成りなにするにゃ!」
「人の顔をニマニマした顔で見て来たから、その顔を潰してやろうと殴っただけだが?」
叫ぶキャロルに対して、俺は睨みながらそう言った。
って待てよ!? こいつがここに居るって事は、もしかして!
「リシアナ様、こいつがここに居るって事はもしかして……」
「グレン君の予想通り、キャロルちゃんも今回の旅に護衛としてついてもらう事になってるわ」
「……真面目に今回の話って断る事って出来ますか?」
「断る事は可能だけど、貴族達の考えとか抜きでグレン君には護衛に付いてもらいたいわ」
それを言われたら、断る事出来ないじゃん……。
「分かりましたよ。旅行に護衛としてついて行きますよ……」
逃げ道が無いと感じた俺は、そう口にするとリシアナ様は嬉しそうに笑みを浮かべた。
あれっ、でもそういや俺ってリシアナ様や国王とは面識あるけど、他の王族とは面識がないぞ?
「あの~、一つ聞いても良いですか? 俺って、リシアナ様や国王様とは面識ありますけど、その王子や王女とは話した事も無いんですけど大丈夫ですか?」
「……そう言えば、グレン君。私とよく話してたから忘れてたけど、子供達とは一度も面と向かって会話もした事無かったわね」
「あたしはリシアナ様に雇われて長いから、何度か話した事はあるにゃけど、グレン君が話してる姿は見た事無いにゃね」
そんな感じに俺の言葉にそう口にした二人は、まずは俺と王子達の顔合わせが必要だと言われた。
「顔合わせって今からですか?」
「今から、って言いたいところだけどあの子達は今は学園で授業を受けてるから、グレン君が予定が合う日に顔合わせの日を作ろうと思ってるわ」
「そうですか、ちなみに旅行っていつから行く予定なんですか? それと何日間の旅行ですか?」
「予定では、五日後に出発の予定で旅行期間は三日間の予定よ」
五日後か、かなり急だな……。
「分かりました。一応、明日クランのリーダーに話をして、休みを作って貰うように言っておきます。予定が開けれたら、キャロルを使って報告しますね」
「ええ、分かったわ」
こうして俺は、急遽王族の家族旅行に護衛として参加が決定してしまった。
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