第113話 【帝都での生活・3】
「お前、今日はちゃんと情報収集して来いよ?」
次の日、宿を出る前に俺はキャロルにそう言うと、キャロルは申し訳なさそうに返事をした。
それから俺達は別れて、俺は昨日情報収集をしていた商業区へとやって来た。
「……あの後ろ姿は」
やってきて直ぐに、見覚えのある後ろ姿が見えた。
「ニア、お前何してるんだ?」
「んっ? グレン!」
び、びっくりしたな……いや、まあ後ろから声掛けた俺も悪いけど、そんな驚く反応するか?
「グレン、今日も商業区に用事があるの?」
「ああ、まあ昨日だけじゃ回り切れなかったし、夜回ってた所を昼間回ってみたいとも思ってな、ニアこそ何してるんだ?」
「あたしは武器を新しい買いに来たの、本当は昨日買うつもりだったんだけどグレンと会って忘れちゃって」
えへへ~と笑いながら、ニアはそう言うと今まで使っていたという武器を見せてくれた。
ニアが使っている武器は、俺と同じく片手剣だった。
「ほう。俺と一緒で片手剣なのか……って、盾は使わないのか?」
「うん、私足は速い方だけど盾で持ちこたえられる程の力は無いから、最初から盾は捨てて剣一本でやってるの」
「まあ、女性の冒険者で華奢な奴はそういう戦いをする奴も多いが……お前って、昨日聞いた話だとソロだよな?」
「そうだよ?」
俺の言葉に対して、ニアは首を傾げて何か変な事言ったかな? という感じでそう言葉を返してきた。
「……まあ、別にお前の戦い方に昨日会ったばかりの奴が言うのも変だから、特に言うつもりは無いが怪我をする前に仲間を見つけた方が良いぞ」
「う~ん……今まで一人でやってきたしな~。そうだ! グレンも冒険者なんでしょ? だったら、一緒に依頼を受けてよ!」
名案! という感じで、提案して来たニア。
俺はそんなニアに対して、自分の冒険者カードを見せてやった。
「……え、Sランク? Sランクって、あの冒険者の最高クラスの?」
「ああ、そうだよ。噂位聞いた事無いか? 隣国のデュレイン国で新しいSランク冒険者が誕生したって」
「そ、そう言えばギルドに居た飲んだくれの冒険者達がそんな事を言ってたような……」
「その噂の人物が俺だよ」
そう俺が言うと、ニアは目を見開いて驚いた顔をした。
それからニアは、俺の今までの冒険話を聞きたいと頼んできた。
別に減るものでも無いしと、歩きながらニアに俺の冒険話を聞かせてやった。
「えっ、じゃあグレンって殆どソロでSランクに上がったの?」
「まあ、そうなるが俺を真似ようとは思うなよ? 俺の場合、色々と運が良かったのも絡んだおかげだからな」
主に妖精達のおかげだという事は言わず、俺はそう目をキラキラとさせて聞いていたニアにそう言った。
「う~、でも私今まで仲間って出来た事無いから仲間の作り方分かんないよ……」
「ギルドで適当に仲間募集してる奴等が居るから、そいつらの仲間にさせて貰えばいいだろ? 帝都はそういう制度無いのか?」
「あるけど、私ってほら3年冒険者してるのに未だに下位ランクに居るから、他の冒険者に見向きもされないんだ……」
「さっきまで自分から一人を選んでるみたいに言ってたようだが……」
「そこはほら、少し見栄を張りたいと言いますか……」
モジモジとしながらニアはそう言うと、俺は別に帝都に留まらなくても良いんじゃないかと言った。
「帝都以外……そうだよね。私って親も居ないから何処にでも行けるもんね」
「あんま、悲しい事言うなよ……あ、そうだな。デュレイン国に来るんなら、俺の知り合いも居るから、少しは今より楽に冒険者として活動できると思うぞ」
そう言うと、ニアは笑顔になり「なら直ぐに王国に行く準備をする!」と言って、走り去っていった。
(グレン……)
(……言いたい事は分かる。ただニアを見てたら、教会のチビ達を思い出すんだよ。あいつらと顔が重なって、放っておけないんだ)
(そう。別にグレンが決めた事なら良いけどね)
フレイナからそう言われた俺は、予定通り商業区の情報収集を行った。
そして、二日間の調査を終えて再び俺はグラム兄さんとの密会の場へとやって来た。
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