第104話 【発散・4】
ストレス発散を行った日から数日後、報告会の際にグレンは聖女達に帝国へ行く事を伝えた。
「帝国に行くですか……確かに、敵が帝国だとあちらは気づいていないかもしれませんが、そんな大胆に行動しても大丈夫なのでしょうか?」
グレンの話を聞いた聖女は、そう心配そうに言うのに対して、マーリンはその提案に賛成気味だった。
「儂は良いと思うぞ? グレンの所属は国では無く、一人の冒険者じゃ。冒険者が国を跨いで活動するのはおかしくないからのう」
「そうですが、師匠。グレン君はこれまでデュレイン国でしか、活動してきてないです。そんな方が行き成り、帝国へ行くとなると向こうも何か感づいたりしませんか?」
「ティアの思うところも分かるが、数十年同じところに居た冒険者が気まぐれに違う国に行くという事は普通の事じゃよ」
「それに帝国には冒険者が多く通う迷宮もありますから、それを理由に入国は出来ると思います」
マーリンとグレンの言葉に聖女は、「う~ん」と意見に賛同するのを渋る様に唸った。
「それに万が一何かあれば、帝国からデュレイン国まで転移で帰ってきますから大丈夫ですよ」
「そう言えば、グレンさんは転移も使えましたね……分かりました。ですが、目立つような事はしないでください。グレンさんが目立つと、何かしら起こりそうですから」
「……俺、自分から面倒事は起こした事有りませんよ?」
「分かってます。ですが、私の勘でグレンさんが動くと何かしら起こりそうなんです。なので、極力目立たない様に行動してください。それが条件です」
聖女からそう強く言われたグレンは、「は、はい」と返事をするしかなかった。
そんなグレンの反応に、話し合いに参加してはいるが報告する事が無く聞き専をしていたキャロルは、グレンの横で腹を抱えて笑っていた。
話し合いが終了した後、取り敢えずキャロルの頭に拳骨を落とした。
そして帝国へ行く事が決まった事をガリウスに伝える為、キャロルを外に放り出してクランハウスへと向かった。
「成程な、帝国に行く事が決まったのか……」
「ああ、また暫く居なくなるのは悪いと思ってる」
「気にするな。それに出て行く訳じゃないからな、ちゃんと帰りを待ってるよ」
ガリウスは申し訳なさそうにしているグレンに対しそう言うと、ルドガー達には伝えたのか尋ねた。
「最初はガリウスに伝えておこうって思ってな、お前に伝え終わった後に行く予定だ。それにフローラには、帝国で必要になる物を用意してもらうしな」
「……準備が必要って、マジで戦争を起こすつもりじゃないだろうな?」
「それはしないつもりだ。ただ色々と調べたい事があるから、それの為に道具が必要ってだけだ。それに俺は長期の旅は久しぶりだから、その道具も用意してもらわないといけないんだよ」
戦争が起こさないか心配なガリウスに対し、グレンはそう言葉を返した。
それから、グレンは帝国へ行く日を伝えてからクランハウスを出て行き、フローラとルドガーの所に寄って話し合いで決まった事を伝え回った。
そして報告会から数日後、グレンは荷物を纏め帝国行きの馬車に乗り、隣国である帝国へと向かった。
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