第101話 【発散・1】
港街ハブーンで犯罪者組織〝シャドースネーク〟のアジトを襲撃したグレン達は、犯罪者達を牢屋へと入れた後、聖女達に今日の出来事を報告をしていた。
「成程、そんな所に隠れていたのですね……」
「はい。俺達が襲った際、普通に酒を飲んでいたりしていたので、俺達の事を警戒している素振りは全くありませんでした」
「ふむ……王都の話は流石に言ってる筈じゃろうから、何かしら向こうも対策を練って居ったのかのう?」
グレンの言葉に、マーリンがそう聞いた。
その問いに対して、グレンは「多分、その対策俺は気づいたかもしれない」と言った。
「今回襲撃した時、フレイナが警戒してくれていたおかげで悪魔付の人間が何処に居るのか瞬時に知る事が出来たんだが。その時、倒した奴に悪魔の本体ではなく力の一部を貸し与えるみたいな感じで本体の一部を付けられた人間が居た」
「悪魔の一部が付いた人間が……」
「それはまた厄介な存在が居たもんじゃ」
聖女はその悪魔の一部の力を持つ者の存在に難しい顔を作り、マーリンはその存在が面倒事を起こすだろうと予測して溜息を付きながら言った。
「まあ、俺でも簡単に倒す事は出来たので、ティアさんやマーリンでも対処は出来ると思います」
「そうなのですか? ……まあ、そうですね。悪魔の力を一部でも持ってるという事は危険な者には変わりないですし、今よりも警戒を強めて調査に挑んだ方が良いですね」
聖女はグレンの言葉を聞き、今よりも警戒を強めて調査に挑むと言い、今回の話し合いは終わった。
話し合いが終わった後、グレンとキャロルは牢屋へと戻り、捕まえた犯罪者達の尋問を行う事にした。
一度目、悪魔の力を知らずにいつの間にか逃げられていたという事から、今回は監視の数も増やし更には結界も強める等、前回よりも牢屋の強化を行っている状況だ。
「グレン君、何か情報引き出せたかにゃ?」
「イマイチだったな……持ってた情報も既に俺達が知ってる内容ばかりだったし、あそこにいた奴等は殆どが下っ端だったみたいだ」
グレンは犯罪者達に対し、魔法により強制的に人格を変え持ってる情報を引き出すというやり方をとった。
その為、キャロルや他の兵士達には目のやり場に困るという事で一人でやったが成果は無かった。
「結局、成果としてあったのは悪魔の力を一部持ってる奴がいるって事だけだったな……」
「そうにゃね……でも、それでも十分じゃないかにゃ?」
「……欲を言えばもっと欲しかったな」
キャロルの言葉に対してグレンはそう言い、今日の所は解散してまたそれぞれ別行動を取る事になった。
そうして翌日、グレンは少し早めにクランへと向かい、リーダー室でガリウスに愚痴を零していた。
「……珍しいな。グレンがそこまで、愚痴を言う何て」
「色々やってるのに成果が無いからな……正直、もう帝国に突っ込んで全て解決したいってのが俺の今の気持ちだな」
「怖い事言うなよ。それで戦争なんてなったら、マジで俺達も大変な事になるんだからな?」
コソコソと調査を続け、我慢を続けているグレンは普段だったら言わない過激な事を口にした。
そんなグレンを見て、ガリウスはグレンが相当溜まっているんだなと感じた。
「グレン、今日の訓練だが迷宮に行く予定だし、お前だけ下に行ってストレスの発散でもしてきたらどうだ?」
「……それは、俺としては嬉しいけど良いのか? ガリウスの負担が大きくなるぞ?」
「そこは調整するよ。訓練側に回ってる幹部の奴を引き上げれば、グレンの穴は埋められるしな」
ガリウスのその言葉に、グレンは「それなら」と提案を受け入れる事にした。
その後、幹部達をリーダー室に呼んだガリウスは、グレンがストレスが溜まっている事を伝え、それの発散の為に一人行動をさせる事を伝えた。
幹部達はグレンが色々とやってくれている事を見ていて、その提案を受け入れた。
そうしてグレンは、今日の訓練時間は溜まりにたまったストレスを発散するという事が決まった。
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