第10話 【強く・3】
2020/11/10:文字を追加しました
◇
「それじゃあ、早速だけどグレン。限界まで、魔法を撃ち続けましょうか。的は私が出すから、正確に当てて頂戴ね」
「おう! 魔法精度には自信あるぜ!」
フレイナの言葉に、グレンはそう言った。
グレンには悪い噂が流れてる中、一つだけ良い噂が流れていた。
それは、魔法剣士としての実力という噂だ。
魔法剣士とは、魔法と剣術を同時に扱う者の事で、近接も遠距離も得意な事からパーティーではかなり重宝される職業の一つだ。
そんな職業の者達の中でグレンの腕はトップクラスで、魔法使いや剣士からその実力だけは一目置かれていた。
「やっぱり、グレンの魔法の精度は本当に良いわね」
「だろ? 実力だけは、どんなに悪い噂が流れても認められてたからな」
実際、グレンはその実力だけで引き抜きされそうになった時もある。
当時はまだアレイン達とパーティーを組んでいた為、その提案は受けなかったがその時受けて居ればグレンは妖精界には居なかったかもしれない。
「グレン。もっとスピード上げても行けるかしら?」
「まだ余裕だし、もっと速く的を出してくれても良いぜ」
その後、的の速さを上げられたがグレンはそのスピードについて行った。
当初の魔力を空にするという目的を忘れ、フレイナは徐々に速度を速めて行くが、グレンはその速さについて行き、意地の張り合いが行われた。
結果として、グレンの魔力が尽きるまでフレイナの的の速度にグレンは付いていった。
「はぁ、はぁ……グレンの魔法の力をちょっと下に見ていたわ……」
「妖精界に来て魔法の訓練はしてなかったけど、素の力が上がってたお陰で前よりも力が上がってたみたいだな。まあ、そもそも眼の訓練をしていたから何処にどう来るのかって、分かるしな」
【妖精眼】とこれまで培ってきた経験が合わさった今の力は、自分が思っていた以上だとグレンは内心感じていた。
「それで、魔力は空になったけどここからどうするんだ?」
「ええ、ここまでは前準備だったものね。それじゃ、本当の訓練を始めましょうか」
そうフレイナが言うと、パチンッと指を鳴らすと沢山の妖精が訓練場へと入って来た。
その妖精達は全て、グレンと契約をした妖精達だ。
「これからやる訓練は、この子達の力を借りるわ」
「了解。よろしく頼むな、お前ら」
そうグレンが声を掛けると、妖精達は「まっかせて~」と嬉しそうにグレンの周りを飛んだ。
それからフレイナはグレンと妖精達に、訓練の内容を説明した。
訓練の内容は至って簡単で、グレンの中に契約している妖精の力を通わせ、妖精の力を自分の中に入れるイメージをするという内容だった。
「これは、一度でも成功すれば次からは簡単に出来るんだけど、それは一体の妖精と契約者の話でグレンの場合、ここに居る子供達全員と通わせないといけないわ」
「な、成程な。そりゃ、大変な訓練だな……」
「ええ、だからやり易いようにグレンには魔力を空にしてもらったのよ。そうした方が通わしやすいし、沢山出来るからね。それじゃ、まずはお手本として私と通わせましょうか」
そう言うとフレイナはグレンの手を握って目を瞑り、グレンもフレイナと同じく目を瞑った。
「グレン。魔力を渡すから、それを体に流すイメージをしながら受け取ってね」
「お、おう。分かった……」
フレイナの指示に返事をしたグレンは、その後直ぐに流れて来たフレイナの魔力を掴み体に流そうとした。
しかし、他人の魔力を掴むという事自体初めてな為、中々上手くつかみ切る事が出来ない。
何度も掴んでは離れ、掴んでは離れを繰り返したグレンは、徐々に感覚を掴んで行くが成功にまだ届かない。
「ふぅ~……む、難しいな」
「ええ、でもこれが出来たらグレンの力は今より、格段に上げられるから頑張りましょう」
フレイナの言葉にグレンは「分かってるよ……」と答え、訓練を再開した。
そして、再開して一時間程が経過して、遂にグレンはフレイナの魔力を掴み、体に流すことが出来た。
「ッ! 来た! 来たぞ、フレイナ!」
「ええ、成功したわね!」
グレンとフレイナは、やっとの思いで成功した事に笑みを浮かべて喜んだ。
ハイタッチをしたグレンは、自分の体を見つめてその変化に気が付いた。
「凄いな、この感覚。今なら、ドラゴンと戦えそうな気がするよ」
「ふふ、戦えるだけの力はあるわよ? でも、もっと強くなる事が出来るわ」
「それって、まさかこの状態に更に彼奴らと魔力を通わせるのか?」
「ええ、でもまずは別々に一度成功させてからね。さあ、グレン。訓練の続きをしましょうか」
フレイナからそう言われた俺は、この状態の解き方を聞いて、素の魔力枯渇状態に戻った俺は、再び魔力を放出してから次の妖精と魔力を通わせ始めた。
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