死
父親の書斎の棚の、上から三番目の引き出しから、護身用の拳銃を取ってきた。
幼い頃、父がそこに隠したのを偶然見たことがあった。
初めて手に取る拳銃は、想像していたよりも重い。
これが命の重さかと思う。
人を殺すための道具。
そう考えるとあまりにも軽いとも思えてくる。
これからこれで自身の命を絶つのか。
カーテンを閉め切った暗い自室を見回す。昼なお暗い。
これまでの人生が頭をよぎる。
幸せだったときもあった。
しかし今は違う。
愛してくれる人もいた。
でも今はいない。
もうあのころには戻れない。
死を選ぶよりほかはない。
目をつぶり、銃口を自分のこめかみに押し当てる。
震える指で、撃鉄を上げる。
引き金を引き、人生の幕を引いた。
もうこれ以上悲しみ、思い悩むことはないんだ。
世界が消えていく。
視界の闇が濃くなる。
脳髄が頭から流れ出す。
もうなにもみえない。