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或る殺人鬼の行動記録  作者: 日向
2/3

File.2 20歳 女子大生 長瀬観月

時系列的には前回より前のお話です。

冬。冬はいい。白く澄んだ空気は心地良いし、暖かい暖炉の前で読書をすれば穏やかな気持ちになれるし、それに肉が腐らない。


11月。街では早くもクリスマスの息吹が漂い始め、建物の陰からそっと顔を出している。道行く人々はみな足早に歩いていくため、こうやって何の用事もなくゆっくり散歩していると、まるで川の真ん中の石にでもなったかのような気分になってくる。夕方の大通りは一段と騒がしく、忙しなく、ただ歩くにも煩わしい。つい最近ここに越してきたので周辺を知っておこうとこんなところまで出てきたものの、流石に散歩には不適当であったか。ものの10分でこれほど疲れるとは。とりあえずどこかで休憩しようと思い立ち、人の流れから出て脇道に抜けていった。

………

大通りから抜けて数分、またぶらぶらと歩いていると少し先に喫茶店が目に入った。聞いたことのない名前の店だったが、窓から覗くとまばらに客がいるのが見えた。ここなら少しの間くつろげるだろう。その店に決めることにし、洒落た木製のドアを押して中に入った。店内は落ち着いた雰囲気で、シックな色合いの天井では大きなファンがゆっくりと回っていた。ウエイターがやってきて、窓際の席に案内された。ファミリーレストラン等のボックス型の席ではなく、丸テーブルに2つの椅子というシンプルなものである。コートを脱いで対面の席に掛け、ようやく椅子に腰掛けることが出来た。ほおっと大きく息をつく。存外疲れてしまった……

………

適当にコーヒーを頼み窓の外を眺めていると、背後でまた喫茶店のドアの開く音がした。いらっしゃいませー、などと言うウエイターの声。パタパタという薄っぺらな靴の音と、コツコツと軽く響くハイヒールの音が次第に近づいてくる。目を閉じて音に耳を澄ませる。若い痩せ型の女、ヒールはそこまで高くないな…勘だが恐らくブーツ。となると会社帰りではないだろうし、大学生か?

…おっと、もうすぐ横を通り過ぎるな。そこで答え合わせだ。

まずウエイター、そしてその次に…

………

結論から言うと、次にはっきりと意識を取り戻したのは体感20秒後くらいであった。その間の記憶はほとんど残っていない。が、彼女の後ろ姿だけは強烈に脳に焼き付いていた。

今、彼女は右斜め前の席に腰掛けている。結果的に予想は大当たりだった。彼女はどう見ても大学生。しかも多分2年生。一番遊んでいる時期だろう。綺麗な黒髪のショートボブに軽くパーマをかけている。

ファッションは上から順に、黒のニットのベレー帽、ワインレッドのぴったりしたセーターに大きめサイズのジージャンを羽織っており、膝上のグレーのタイトスカートと肌色のストッキングを身につけている。靴も予想通り短めな黒のブーツだった。ドクターマーチンとかいうやつだろうか……

いや、そんなことは。そんなことはどうでもいいのだ。彼女の特筆すべき事項はただ1点、その柔らかく引き締まった太ももである。今もこれ見よがしに脚を組んでメニューなど眺めているが、もはや視点を太ももから動かすことすら叶わない。それほどまでに美しい。

伊達に特異な性癖を拗らせているわけではないのだ。たとえストッキング越しであろうとも太ももの良し悪しは一目見ればすぐに分かる。彼女の脚は日常的に鍛えられている。尻の位置も非常に高かった。ふくらはぎも綺麗な曲線をしている。確実に何らかのスポーツを、しかもテニサーやレクリエーションサークル等ではなく本格的に活動をしている。

それにしても、脚を組み替えるたびに浮き出るあの筋肉の流線といったら!それでいて決して太くないというのが驚異的である。体型管理もしっかりしているのだろう。ますます好感が持てる…

…おっと、流石に見過ぎだろうか。よだれが垂れていないか咄嗟に確認してしまった。いけないいけない……

危うく醜態を晒すところだったので、急いでまた窓の外なんかを眺めたりして何気ない風を装う。

数分の間そんなことをしていて、またチラリと彼女の方を見ると何やら本を読んでいるようだった。誰の本だろうか。目を細め、横目で表紙をじっっっと見る。……川…之介…?もしかして芥川か?!なんと、これは驚いた。彼女がもし文学部生なら川端か、もしくは異端を気取って谷崎なんか読みそうなものだが、まさか芥川とは。最高じゃないか。それはもう最高としか言いようがない。

決めた。次はあの子にしよう。もうすっかり気に入ってしまった。久々の"食事"に期待で胸が膨らむ。内臓が興奮して震え上がってきた。腕を組んで目を閉じ、頭の中で計画を練り上げていく。同じ手口を使わないのが狩りの鉄則だ。そうやって、今度はどうしようかな…などと考えを巡らしながら彼女が店を出るのを待った。

………

それから数十分後、彼女とほぼ同タイミングで店を出る。それから一定の間隔を空け、彼女の後ろをそっとついて行く。途中、人通りが少なくなった辺りでバッグから帽子を取り出して目深にかぶり、ついでにコートを裏返して着直す。こういう時のため、いつでも軽く変装出来るようにしてあるのだ。

そんなこんなで彼女が家に着いたのは店を出てから20分ほど経ってからだった。3階建て12室の小綺麗なアパートだ。少し離れた建物の陰から様子を窺っていると、彼女が2階の一番手前の部屋のドアを開け、中に入っていくのが見えた。あそこか。アパートに近づいていき、部屋番号を確認する。204。なるほど覚えた。それから計画を練るため、建物の周りを歩いて細かくチェックしていく。広さはおそらく1Kといったところか。これといった防犯装置も無し。これなら余裕そうだ。

裏手に回り、ガスのメーターを見つける。彼女の部屋のメーターに掛かっている点検済みのタグを見てガス会社を確認しておく。前回の点検は1ヶ月前。かなり最近だが、まあどうにかなるだろう。

………

それから数日後。時刻は午後4時。早くも西の空が橙に色付こうとしてる。作業着姿の1人の男が、徐にインターホンを押した。

「はーい……」

インターホン越しに、眠そうな女性の声。

「あっ、○○ガスですー!」

「…?はぁ…ちょっと待ってて下さい……」

声が途切れ、ドアに近づいてくる音がする。

数秒ののち、ガチャリと鍵が開き、それからそっとドアが開けられた。中から、例の彼女か少し戸惑ったような顔を覗かせた。見ると、ドアにしっかりとチェーンをしている。なるほど、無駄にちゃんとした防犯意識があるようだ。ちょっと面倒だが、まあそれくらいは想定の内だ。

「あーっ、どうも!○○ガスの××という者ですー!ガスの点検に参りましたー!」

「ガスの点検…ですか?聞いてないですけど…」

「えっ!一応通知の紙を送らせて頂いてるはずなんですけど、届いてないですかね?」

「いやー…見てないですね…あと1ヶ月くらい前にも点検来ましたよね?」

「あっ、それがですね…そうなんですけど、ちょっとこのアパートの別の部屋でトラブルが起きまして、それで念のため他の部屋のガスのチェックも行なっているんですが…今お時間ございますでしょうか…?すぐ終わるものなんですが…」

「あー…ちょうど今から出かけるところなんですけど…」

「いや、ほんとにすぐ終わるんですよ!あのですね…ちょっと待ってて下さい…」

そう言ってからカバンをごそごそと漁り、数本線が伸びた手持ちのメーターのようなものを取り出す。

「これでですね、お客様のガス台のガス圧を調べさせて頂いて……」

こういう時のために、高圧ガスの取り扱いについての知識を心得ている。それっぽい言葉を並べ立てて説得していると、ようやく彼女も不承不承といった感じではあるがドアを開けてくれた。こうなれば、あとは簡単な話である。上手くいった喜びで、思わず口の端に笑みが浮かぶ。彼女はもう部屋の方に向かって歩き始めている。それを追いかけるようにして中に入り、後ろ手にドアを閉める。部屋へと続く廊下が一気に薄暗くなる。靴を脱いで手早く揃え、バッグからスタンガンを取り出して足早に彼女に近づき、まさに部屋の扉を開こうとしている彼女の頭を、口元を塞ぐようにぐっと引き寄せ、同時にスタンガンを腿に押し当てスイッチを一瞬押した。彼女は言葉にならない短い叫び声を上げ、その場に崩れ落ちる。すぐさま彼女の上に馬乗りになり首元にスタンガンを押し当てスイッチを押すと、数秒間激しく痙攣したのち気絶した。

ふぅ……ひとつ大きくため息をつく。一発勝負の正念場はここまで。あとはゆっくりやればいい。

まず脱力した彼女の脇の下を引っぱって部屋に入れ、うつ伏せにしておく。玄関からカバンを持ってきて中から麻縄を取り出し、それで彼女の手足を頑丈に拘束する。それから口にギッシリと綿を詰め、ダクトテープでしっかりと閉じる。最後に彼女をお姫様だっこで持ち上げてベッドに横たえ、長い革のベルトを使ってマットレスに彼女を磔にした。

これでよし、と…。さて、じゃあ着替えるとするか。こんな地味な作業着姿で彼女と対面する訳にはいかない。きちんと正装をしなくちゃね。灰色の作業着を脱ぎ、畳んで鞄の中に入れる。そして代わりにスーツ一式を取り出して着る。そしてさらにウィッグも取り出し、丸坊主にしておいた頭にそっと被せる。部屋を出て洗面台で髪を整え、ついでに顔に何か付いてないかチェック。よし、完璧だ。

部屋に戻り、改めて部屋の中を眺める。ほう…なかなかに綺麗にしてある部屋だ。

入り口から見て右奥にベッド。今は彼女がくくりつけられている。左奥には簡素な勉強机。その隣にテレビ台とテレビが、そして部屋の中心にカーペットと丸テーブルが置いてある。左の手前側にはキッチン。右の手前側には本棚があり、小説や参考書が並んでいる。部屋の一番奥に大きな窓とベランダがあり、可愛い柄のカーテンが掛かっている。

さてと、それじゃあどこから見ていこうかな…と、思案しながら部屋を見渡していると、テーブルの上に財布が置いてあるのに気づいた。そうそう、まずはこれが無くちゃ始まらない。テーブルの脇の座椅子に腰掛ける。財布を覗いてみると、学生証が見つかった。これでようやく名前を知ることが出来る。名前は…ほうほう、長瀬観月ちゃんっていうのか。カッコよくて素敵な名前だ。

今大学2年生で、%%大学の文学部、日本文学専攻。本が好きなんだねぇ。いいことだ。

誕生日は…夏か。てことはもう20歳なんだね。お酒は飲むんだろうか。あとで冷蔵庫も見てみようかな。

あとは小銭やらレシートやらが入っているだけで、めぼしいものは特に無かった。座椅子から立ち上がり、他のものを探す。

あれ…そういえば服はどこにしまってあるんだろう?そう思い探してみると、本棚の隣の細長い棚の上部がクローゼットになっていた。中にはこの前着ていたジージャンや革ジャン、コート、ダウンなどがギッシリと掛けられている。棚の下部は引き出しが3つ並んでおり、中には髪留めやら化粧道具やらが入っていた。

本棚の方を見ると、芥川や太宰などの古い小説から最近の小説家のものまでかなり多く並んでおり、それから大学で買わされるような分厚い哲学書や文学史書などもある。その中で、一際古めかしい薄汚れた本が目に止まった。試しに引き抜いてみると、それは詩集であった。何度も読まれた跡があり、角もボロボロになっている。作家の名は、北原白秋。明治から昭和にかけて活躍していた詩人である。パラパラとめくってみると、あるページの端が折り返してあるのに気づいた。そのページに書いてあった詩のタイトルは「白鷺」というもの。気になったので声に出して読んでみることにした。


白鷺


白鷺は、その一羽、‬

睡蓮の花を食み、‬

水を食み、‬

かうかうとありくなり。‬


白鷺は貴くて、‬

身のほそり煙るなり、‬

冠毛の払子曳く白、‬

へうとして、空にあるなり。‬


白鷺はまじろがず、‬

日をあさり、おのれ啼くなり、‬

幽かなり、脚のひとつに‬

蓮の実を超えて立つなり。‬


……なるほど、詩には全く明るくないので真意は理解しかねるが、美しい作品である。

月並みな感想だが、正直この詩の内容にはあまり興味はない。ただこういう詩を彼女が好んでいるという情報こそが千金より価値のある事柄なのだ。

ベッドの方に向かい、彼女の寝顔を見に行く。やっぱり可愛いなぁ…と思いながら顔を眺めて、ふと思いつく。そうだ!化粧を直してあげよう。さっきのゴタゴタでところどころ乱れてしまっている。不完全な化粧の状態で人に対面するのは恥ずかしいだろう。さっきの棚から化粧道具を一式取り出し、ベッドまで持ってくる。それから汚れた部分を丁寧に落とし、落ちてしまっている部分をしっかりと塗り直してあげた。まあこんなものか。

………

化粧を済ませ、テレビ台の方に行く。台の上には、友人や彼氏と思われる男との写真が立てられて並んでいた。その中の1枚に、ユニフォームを着た観月ちゃんとその他数名が体育館のような場所でピースしている写真があった。なるほど、彼女はバレーボールをやっているのか。それであんなに引き締まった脚をしていたのか。ようやく合点がいった。

その隣の勉強机を見ると、散乱している分厚い参考書に混じって、一冊の小さいノートが広げてあるのを見つけた。参考書をどけて中身を読んでみると、それは彼女の日記であった!しかもちゃんと継続して書いてある。

最高。この世に存在するもののうち限りなく最高に近いもの、それが可愛い女の子の日記帳。これは、これは持ち帰って家で読もう…

愛しむように表面を撫でたのち、そっと鞄の中にしまった。

「う…う……?」

突然、くぐもったような呻き声が聞こえた。

どうやら観月ちゃんが目を覚ましたらしい。

すぐにベッドの方に行って横に座り、優しく頭を撫でてやる。彼女は状況をよく飲み込めていないようだったが、横目でこちらを向くなり、いきなり目を見開いて暴れ始めた。

「こらこら、暴れちゃあダメだよ観月ちゃん。縄が食い込んで怪我をしてしまう。」

そう言ってまた馬乗りになり、片手で頭を、もう片手で鼻をつまむ。それから彼女に顔を近づけて目を合わせ、

「これ以上暴れたら息が出来なくて死んじゃうよ?いいのかい?」

と言うと、やがて大人しくなっていった。やれやれ。ベッドから降り、セーターを着た彼女のお腹をさすりながら優しく語りかける。

「観月ちゃんは日本文学が好きなのかな?この前芥川を読んでいたよね。実は僕も芥川が好きなんだ。気が合うよね!

「それから北原白秋の詩集がお気に入りなのかな?本棚にあったから読んでみたんだけど、なかなか良い作品だね。

「写真を見たんだけど、バレーボールをやっているんだね。それでこんなにスタイルが良いのか…やっぱり大学ではモテるのかな?」

そう言って、今度はぴったりとしたジーンズに包まれた彼女の太ももを撫でる。彼女は小刻みに震えながらこちらを睨み付けていた。

「男とのツーショットもあったけど、彼氏がいるのかい?まあこれだけ可愛けりゃ彼氏ぐらいいるだろうね。それになかなかの好青年じゃないか。チャラついた男だったらどうしようかと思ったけど安心したよ。

「僕は君が処女か非処女であるかなんて別に気にしないんだ。性体験の有無で味が変わったりはしないからね。そんな些細なことを気にするような男じゃないのさ。

「それにしても、%%大学なんてなかなか良いところに行ってるじゃないか。私立だが、この辺りじゃそこそこレベルが高い。しっかり勉強したんだねぇ、感心感心。

「実はね…ここだけの話なんだけど、僕は学校というものに行ったことがないんだよね。学生のふりをすることはあるけど、今持ってる知識は全部独学。さっき玄関で君に聞かせてみせたガス周りの知識も自力で身につけたんだ。それってなかなかの特技だと思わないかい?」

太ももから手を離し、今度は顎の下をさわさわと触る。ちょうど猫をじゃらすように。

「ちなみに、さっき言った僕が学校に行ったことがないって話は誰にもしちゃダメだよ?僕と君との約束だ。いいね?

「そうだ、さっき君の日記を見つけてしまったよ。恥ずかしいかい?ごめんね。あれは大切に読ませてもらうよ。出来れば"食事"の前か、少しはしたないけど"食事"中に読もうかな。きっと極上のひと時になるだろうね。」

………

そうやって彼女と話していると、いつの間にかなり時間が経ってしまっているのに気づいた。

「さて、じゃあそろそろ頃合いかな。もうすっかり夜だしね。すごく名残惜しいけど切り上げようか。」

そう言って立ち上がり、一度廊下の方に出る。それから誰もいないのを確認して外に出て、階下に置いておいた巨大なスーツケースを持ってまた部屋に戻る。

「今から君はこの中に入るんだ。でも、その前におやすみしちゃおうね。怖い?大丈夫だよ、すぐ済むからね。」

そう言うなり彼女に目隠しをし、再度馬乗りになり、ふぅ…と息をして、それから一気に彼女の首を絞めた。彼女はまたガタガタを暴れて抵抗したが、1分ほどで静かになった。

マットレスからベルトを外し、彼女の体を折りたたんでスーツケースに仕舞った。それから色々な道具を鞄の中に全て片付け、スーツの襟を正す。よし、帰るか。

予め人通りの少ないルートを探しておいたため、ほとんど人とすれ違うことなく帰ってこられた。ここからが大変だ。

彼女を風呂場に持っていき、縄を解き、服を脱がし、綺麗に洗ってから解体を始める。

今回注文を受けていたのは尻の肉と腕丸ごと一本、相変わらずの眼球と歯と内臓のいくつかであった。切り出し、一旦箱に入れておく。これでまたしばらく生活に困らない。

汗だくになりながらノコギリを引き、シャワーで血を洗い流し、全部終わったのは実に3時間後。すでに夜も更け、すっかりヘトヘトになっていた。

だが、これからは楽しい楽しいディナーのお時間である。綺麗に切り出した太もも肉を手に、ルンルンでキッチンへ向かう。

今回もステーキ。ミディアムレア。軽く叩いて塩胡椒。油多めかつ強火で外はカリッと、中はふっくらに焼き上げる。もう片方のお肉は冷凍しておいてまた今度、ローストにでもしようかと思っている。

テーブルをセッティングし、この日のために選んでおいた赤ワインを注ぎ、ナイフ、フォーク、そして真ん中にステーキを置く。

おっと、そうだった。日記を持ってこなくちゃ。鞄を漁り、日記帳を取り出す。

これで全て整った。ワインを掲げ、乾杯!

ひと口含み、香りを楽しむ。良いワインだ。

さて、そしていよいよステーキにナイフを通す。焼き加減もバッチリ。そろりそろりと口に運び、それから一気に噛み締める。

椅子の背もたれに深く深くもたれかかりながら。

殺人鬼は、歓喜の涙を一筋零した。

前回は思いのほか多くの方に読んで頂けました。もしこの話も最後まで読んでくださった方がいたら、一言でもいいので感想を頂けると幸いです。

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