File1.17歳 女子高生 松本美咲
死んだ人間をバラバラにしたことがあるのは、医大生か殺人鬼くらいなものだろう。
僕の場合は、後者だ。もっとも、僕と違って医大生は死肉を食べたりはしないだろうが。
向かいから歩いてくる人々の流れを縫うように、昼下がりのビル街をずんずんと進んでいく。
時折すれ違った人と軽く肩がぶつかるが、そんなときすぐに軽く会釈をして、小声で「すみません」と言うのにもこのところすっかり慣れてきた。そうやってトラブル無く人混みを歩けるようになったのも、本当につい最近のことだ。
我ながら驚くほどのスピードで成長していってるのを感じる。なんといっても、日本に舞い戻ってきたのがつい1週間前のことだ。ちょっと前まで外国の田舎で暮らしていたことを考えれば、相当な順応スキルであろう。
人の流れからすっと横に逸れ、雑居ビルの一階のやけに明るいコンビニに入る。
バンが並んでいるコーナーに向かい、1番カロリーの高そうなのを1つ。それからいい感じのサンドイッチと、当たり障りのないおにぎりを1つ取ってレジに並ぶ。
1.2分経って僕の番となり、カウンターに品物を無造作に置くと、バイトであろう制服を着た女の子がそれを1つ1つスキャンしては袋に詰めていく。
何気なくレジの周りのホットスナックなんかを眺めて、ふと目の前の彼女の顔を見て、背中に衝撃が走った。
————美しい………
……おっと、危うく財布を落とすところだった。危ない危ない、平静を装わなければ。
ふう……にしても驚いた。こんなところにこんな素敵な女性がいるなんて。もう一度彼女の顔を見る。うむ、やはり尋常ではない。何も容姿が整ってるとかそういう話ではない。全くもって違う。顔立ちはむしろ凡庸、特筆すべき点はない、のだが……
目が、澄んでいる。瞳の奥に彼女の全てが見て取れた。言わば彼女の魂の純粋というか、曇りのない実直さに心奪われたのだ。
恐らく女子高生、2年生だろう。偏差値は50-60あたり、茶色く髪を染めている所から察するに、ほぼ私立の高校とみて間違いはない。となると、時間帯的に放課後であろうから、近くのそのレベルの私立高校となると…K高であろうか。ふむ、気に入った。
頭の中でここからの経路を確認する。財布の中身を漁っている振りをしつつ、女の子の名札をチラリと見る。よし。手早く会計を済ませ、小走りにコンビニを出てすぐ、迷いなく歩を進めていく。
途中、何度か制服を着た男女とすれ違った。おそらくこっちで間違いはないだろう。はやる気持ちを抑え、平静を装って歩く。
10分ほど歩いて、坂の上にそれらしき建物が見えてきた。ここまで来たはいいが、さてどうしたもんかと坂の下をふらふらしていると、2人の女生徒が何か喋りながら坂を降りてくるのが見える。まさに渡りに船。ちょうど坂を下りきろうという2人にスッと近づき、なるべく気弱そうに、それでいて優しそうに声を掛けた。
「ちょっといいかなぁ」
「へ?なんですか?」
「いやぁ、ちょっと事情があって娘を迎えにきたんだけど、どうすればいいか分からなくてねぇ。2年生で、○○っていうんだけど知らないかなぁ?」
「あっ、C組の○○ちゃんですか?知ってますよ!たぶんもう帰っちゃったと思いますけど…」
「ええっ本当かい?そっか、ありがとうね」
「いえいえ、それじゃあ…」
心優しい女生徒2人に礼を言い、すぐに坂を登っていく。
少し息を切らしてなんとか坂を登りきり、校門をくぐるとすぐ脇に小さな守衛室が見えた。四角い箱のようなその小屋の窓をコンコンと叩くと、奥から70過ぎと思しき老人がヌッと顔を出した。
「あの、2年の○○の父親なんですが、担任の先生と面談の予定がありまして、えーっと、どこへ行けばいいでしょうか?」
「えぇっ……と、あのですね、保護者カードはお持ちですかね?」
「えっ!ああっ……すみません、うっかり忘れてきちゃいました…」
「はいはい、そんじゃこれを首に掛けて行ってください。次回からは忘れないでくださいね。」
「あっどうも、はい。ありがとうございます。あの…それでどこに行けば…」
「えっとね、昇降口はそっち。そんで、右手の階段を2階まで上がるとすぐ事務室がありますから、そこで聞いてください。」
「分かりました。ありがとうございます…」
守衛室を離れてスタスタと昇降口に向かい、薄暗い下駄箱の列の端に落ちてた適当なスリッパを履いて中に入る。
2階に上がり、そっと事務室を横切って教室の並ぶ廊下の方に進んでいく。
放課後の校内は閑散としており、グラウンドからかすかに声が聞こえてくる。日は既に傾き始めており、オレンジよりはまだ黄色に近い日光が、グラウンド側の窓から廊下に差し込んでくる。
さて、彼女の教室はどこだろう。とりあえず近くの教室の看板を見てみると、2年F組だった。おそらくこの階だろう。C…C…とぶつぶつ呟きながら廊下を進んでいくと………、あった。ここだ。
教室の中に入り、壁をぐるっと一面見渡す。すると、クラスの座席表が見つかった。えーっと、○○…○○…ビンゴ。やっぱりここの生徒だ。教室の壁の座席表をざっと見て、名前を暗記していく。そして数秒ののち、また廊下に出て、来た方向とは逆向きに歩いていく。階段をまた1階に降り、さっき窓からちらりと見えた体育館の方へ向かう。
体育館に近づくにつれ、木の床をボールが跳ねる音や、シューズのキュッキュッという音が中から響いてくる。
入り口で少し待っていると、汗だくの男子生徒が数人、中から出てきた。それを後ろからそっと追いかけていくと、体育館の脇の、プレハブ小屋のような建物に入っていくのが見えた。小屋の陰でまた少し待ち、男子生徒が出て行ったあとでその小屋に入る。
小屋の中は蒸し暑く、汗臭く、薄暗かった。いくつかの小部屋に分かれており、1番近くの部屋に入ると、一段と強い汗の匂いが全体に立ち込めていた。手早く棚を漁り、袋に入った制服を引っ張りだして、着る。そして今まで着ていたスーツをその袋に押し込む。
部屋の隅にあった鏡の前に立つ。ふむ、まだまだ着れるな。全然違和感は無い。
この格好ならより自由に動ける。袋を手に持ち、小屋を出る。
体育館から離れ、階段を上り、2階でぶらぶらと廊下を歩く。すると、1人の男子生徒が階段から降りてくるのが見えた。
「ねね、ちょっといい?君2年生?」
「はい?ええ、そうですけど…」
「あのさ、C組の××ちゃんって知ってるかな?」
「いや、知らないっすね…」
「そっかー、じゃあC組の女の子で誰か知ってる人いる?」
「ええっと…強いていれば**さんとかかな…」
「**さんて今学校にいると思う?」
「あー…確か文芸部だったと思うんで、まだ居るかな…いや分かんないっす」
「なるほど、どこ?」
「3階の奥っす」
「ん、ありがとう!」
気さくな感じで手を振り、怪訝な面持ちの男子生徒を置いて階段を上がり3階にいく。
ええ…奥ってどこだろう…とりあえず3階をぐるぐるしていると、確かに奥まったところに文芸部と書かれた部室があった。
がらりと戸を開ける。中では数人の生徒が机に向かい、何か書き物をしていたのが、一斉にこちらを向いた。
「あーーっと、C組の**さんている?」
「………はい、私ですけど」
部屋の対角線の方に座っていた小柄で大人しそうな女生徒が軽く手を上げ、立ち上がった。
「あっ君かい?えっとね、ちょっと大事な用があって、呼んでくるよう頼まれたから、来てくれないかな」
「あっ、はい…!」
女生徒は小走りでてくてくと入り口に向かって歩いてきた。かわいい。
「こっちなんだ、ついて来て」
そう言って手招きし、人気の無い方に連れ出す。女生徒もどことなく不安そうな顔でついてくる。
こんなところか…急に女生徒の後ろにまわると、右ポケットのナイフを取り出して彼女の首筋に当てた。
「……………!?」
「しっ…静かに。じゃなきゃ刺しちゃうよ?」
「えっ……あっ……は………」
「静かに」
「……っ………ぁ…………」
「………よしよし、いい子だね。」
「さて、本題だけど、○○ちゃんって知り合い?」
「…えっ!はっ、はい……まぁ……」
「うん、じゃあ携帯出して?
「うん、そう。そしたらLINE開いて?○○ちゃんと友達だよね?個別チャットを開いてくれるかな?
「いい子だ。そしたらね、こう打つんだ。
-急にごめんねー!○○ちゃんにどうしても会いたいって人がいるの!
-今バイト中だと思うけど、終わったらでいいからそこのコンビニの隣の公園に来てくれないかな?
-よろしく!!
OK、それでいい。そしたらトーク履歴を全部消して?そう、そこを押すんだ…。そう。
「よし、携帯はしまっていいよ。
「これで終わりだ、君は解放だ。ただし、このことを誰かに言っちゃいけないよ?もし君が言ったのが分かったら、次は君を殺さなきゃいけなくなるからねぇ…いいね?」
彼女は恐る恐るコクコクとうなずく。
彼女の喉からナイフをゆっくり外し、トンと背中を押す。
「そのまままっすぐ、教室に戻りなさい」
彼女は少し小走りに、ぎこちなく部室に帰っていった。
さーてと、あとは彼女が来るのを待つだけだ。
学校を出て坂を下りきると、もう太陽は沈みかけていた。部活が終わったらしい生徒たちが、ちらほらと群れて下校していくのが見えた。
一旦準備をらするために家に戻り、荷物をまとめてリュックに詰め、そのまま約束の公園に向かった。
公園に着いた頃はもう日は沈みきり、空からオレンジ色はほとんど消えてかけていたが、案の定まだ彼女は来ていなかった。そのまま木の影に隠れ、彼女が来るのを待つ。
…ぼーっと立っていると、色んなことを思い出す。
初めて殺したのは、女子大生だった。彼女の綺麗な栗色の髪の毛を、今でも大切に保管している。
次に殺したのは女子高生だった。今でもあの可愛らしい顔がありありと浮かんでくる。彼女の親指の爪を丁寧に剥がして保管しており、時々取り出しては眺めている。
それから何人殺しただろうか、日記には細かく書き留めているが、ちゃんと思い出すことは出来ない。ああ、でもあの子はかなり印象的だったな……ん?…あっ!来た!やった!
やっと来た彼女は怪訝そうに、公園内をキョロキョロしながら歩いていた。
僕は喜びをぐっと堪え、走り寄りながら彼女の後ろからおーーい!と声を掛けた。
彼女はパッと振り返り、僕の顔を見て、少しの期待感と、大いなる不安感の混じり合った表情を見せた。
ちょい不安そうだな…少し安心させよう。
「ごめんね、待たせちゃったかな?」
「いや、今来たとこ…ですけど」
「そっか、○○さん…だよね?僕は%%っていうんだ。3年生の。」
「あ、はい…。で、あの、用件は…?」
「ああ、ごめんね。でも、ここではちょっと言いづらい話だから、もう少し静かな方に行きたいな」
「はい、いいですけど…」
じゃあこっちへ…と言って彼女を公園の奥の方、歩道から離れた方へ誘う。
「ここでいいかな。申し訳ないんだけど、3秒だけ目をつぶってくれない?」
「はぁ……」
「うん、ありがとう。1…2…」
彼女の周りを回るように、歩道から彼女を隠すように立ち、さっきと同じようにナイフを取り出して彼女の喉に当てる。
「3。はい、ありがとう。目を開けて。んで、静かに。まあ別に騒いでもいいけど」
「あっ…えっ………」
彼女は一瞬何が起こったか理解出来ていないようだったが、僕の方を目線だけでチラリと見て、それから首に伸びた僕の腕を見下ろして、全てを理解したようだった。
「よし、それじゃそのまま前に歩いて。」
強張った彼女の腕をガッチリと掴み、そのまま2人で並列したまま横に歩く。そして、より一層奥まった場所にある公衆トイレの男の方を指差した。
彼女は少しの間戸惑っていたが、もう一度指を差したら素直に入ってくれた。よかった。
幸いトイレの中には誰もいなかったので、そのまんま彼女を個室の一つに押し込み、いっしょに入って鍵を掛けた。
さて、こうなればもう勝ったようなものだ。
まず彼女に服を全て脱ぐよう言う。彼女は少し躊躇ったものの、ナイフを額に押し付けたら小声で「やります…やりますから…」と言って恥ずかしそうに脱いでいった。それらを一枚一枚綺麗に畳んでバッグにしまう。パンティを自分で脱ぐのは流石に堪えるようだったので、半ば強引にずり下ろして脱がせてあげた。彼女は抵抗しなかった。衣服を仕舞い終えたのち後ろを向かせガムテープで目隠しをし、口に綿を詰めて口もガムテで塞ぐ。それから両腕をダクトテープで後ろでぐるぐるに固定し、指もまとめて止める。
そして脚は念入りに、太ももとふくらはぎと爪先をぐるぐる巻きにする。
そして最後に、彼女を便器に座らせてその上に乗り、彼女の喉に両手をあてがって強く締める。
彼女を頭を振り、体をよじらせて必死に抵抗したが、やがて静かになっていった。
彼女が息絶えたあと、すぐに彼女を抱え上げ、持ってきた大きなスポーツバッグに詰める。
すっかり詰め終えて、そしてそれを背中に背負い、ぐっと足に力を込めてトイレを出た。
一歩一歩必死にあるいて、やっと家に着いたのは1時間ほど後だった。玄関に入った瞬間、彼女を床にゆっくりと横たえ、一緒に横になる。疲れた…。華奢な女の子、とはいえ人1人を担いで歩くのは相当しんどい。だがこの重みも肩の痛みも、彼女のものと思えばむしろ愛おしい。一目惚れとはいえ、数時間前まで互いに存在すら知らなかった2人が、今こうして並んで寝転がっているなんて。なんという星の巡り合わせと言うべきか。まあ、無理やりその星を巡り合わせたのは僕なんだが。
よし、じゃあそろそろ行こうか。自分の膝をひとつポンと叩いて、彼女の下にスッと手を差し込んでそのまま抱きかかえる。よいっ……しょっ………と!なんとか持ち上がった。そのまま風呂場へ彼女を連れて行く。
肘で風呂場の電気を付け、彼女を浴槽に横たえる。そしてジーっとバッグのジッパーを下ろし、彼女を袋から出してあげた。このままじゃあ苦しいだろうから、ガムテープも取ってあげなきゃね。丁寧に上から、目隠し、猿轡、腕、脚…と解いていく。あ、ちょっと肌がベタついちゃってるなぁ…洗い流しておこうか。シャワーヘッドを手に取り、水を出し、意味もなくわざわざ温度を調節してあげてから彼女の身体に満遍なく掛けてあげる。それにしても彼女のこの太もも!水を全て弾き返すかというほどの瑞々しさ!光を反射してキラキラと煌めく綺麗な肌!想像以上だ。
シャワーを止め、彼女の身体をタオルで拭き、一旦風呂場を出て道具を取りにいく。段ボール箱に無造作に入れられた多種多様な金属製の器具。その中から使いそうなものをいくつか取り出してポケットに突っ込み、それから壁にかけてある大きな斧やナイフも取り外して両手に持ち、風呂場に戻る。じゃあ始めようか。
…っとと、その前に大事なことを忘れていた。床に投げ出してあった彼女のリュックサックを漁り、生徒手帳を取り出す。これがなくちゃ始まらない。浴槽の縁の、見える場所に立て掛けた。よし、これで完璧だ。
気を取り直して、彼女の解体にかかる。とはいえ、僕が欲しいのは彼女の太もも肉だけなのだが。あとは不味いから、適当にバラして捨てやすくする。まずは肩口。ナイフで大胆に切り込んでいって、そのあとノコギリでゴリゴリいく。やはり締めたてだからか、ノコギリを引くたび盛大に血が飛び散る。顔に飛んできた血を適当に服で拭ってどんどん切り進んでいく。
「松本美咲ちゃんね…可愛い名前だ」
もう片方の腕にもナイフを入れる。
「誕生日は6月15日…17歳。そうか、ついこの前だったんだねぇ。おめでとう!」
切り落とした腕も刻んで細かくしていく。
「住所…ふむふむ…へぇ、ここからあんまり遠くないんだねぇ、嬉しいなぁ」
暑い。額の汗を拭う。
「えーーっと…おっ、お兄さんがいるんだねぇ、兄弟ってのはいいものだ」
首は後回しにして、脚にとりかかる。
「さーてお待ちかねの太ももだ。ここは綺麗にナイフで切り取らなくちゃ。味に関わるからね…そうだ、新しいナイフを使おうか」
左ポケットをごそごそ漁って、真新しい小型ナイフを取り出す。それを滑らかな肌にぐっと差し込み、するすると皮を剥いでいく。
それからひと塊、両脚でふた塊、太ももの肉を切り出した。
ここまでやってしまえば、後は作業である。脚を乱雑に切り落とし、それから首を落とす。そうしたら胴体とまとめてバラバラに。黒いゴミ袋に全て放り込み、臭い消しと消毒液をこれでもかと言うほど振りかけてから、口をキツく縛り、その上に何重にもゴミ袋を被せる。これらは後々山に持っていって、キャンプファイヤーの燃料にする。これまでもずっとやってきたやり方だ。
おっとおっとそうだった。そういやずっと前から手と眼球とあばら骨の注文が入ってたんだった。
世の中には想像もつかないような変態がいるもので、若い女性、こと女子高生ともなると身体の一部を大金を払ってコレクトしたがる連中が山ほどいる。食うわけでもないのにどうしてそんなもの欲しがるのか。僕には理解し難いが、まあ半端じゃない金をくれるのだから文句は言うまい。
右の手のひらと両目の眼球、あばら骨を何本か適当に切り出してそれぞれポリ袋に入れておく。これらは後で洗浄、冷凍処理等したのち箱詰めして仲介人に郵送する。これだけで手数料を差し引いても○○○○○万円になるのだから割のいい商売である。いやまあリスクを考えれば妥当か。
なんとか首尾よく太もも肉を手に入れられ、いよいよ興奮が抑えきれなくなってきた。
これまで何度も喜びを覆い隠してきたが、もはやその必要もない。思いっきりスキップをしながら、肉をキッチンへと運ぶ。やっと、やっとここまで来た。あとは焼くだけ、美味しく焼いてあげるだけだ。
包丁で肉に切れ込みを入れ、それから全体を満遍なく叩いてあげる。そしたら塩、胡椒を振り、軽く馴染ませる。
フライパンを熱し、そこに思い切りよく肉を投入する。始めは強火で。いい感じのところで裏返し、焼き色を付ける。
焼けたな、と思ったら一度お皿に移し、アルミホイルで包んで中まで火を通す。数分待って、またフライパンに移して中火で焼き、最後にソースを絡ませて完成。青のお皿と白のお皿で迷ったが、彼女のことを思って白に。
テーブルは既にセッティングが済ませてある。焼けた肉をテーブルに乗せ、席に着く。グラスに赤ワインを注ぎ、軽く回して香りを楽しむ。やはり、いい香りだ。
さて、それじゃあ頂くとしようか。彼女の、17年1ヶ月の、その長い人生の鼓動を。
彼女の一生に、乾杯。
ナイフとフォークを手に取り、肉汁溢れる美味しそうなお肉を一口大に切り分け、ゆっくり、まるで自分を焦らすように、ゆっくりと口へ運び、そしてまたゆっくりと噛み締める。口いっばいに広がる血の香りを感じながら。
殺人鬼は、涙を流した。
彼が人肉を喰らうのと、私たちが牛肉を食らうのと、果たしてそこにどんな違いがあるのでしょうね。