第9話 少女と授業
「じゃあ〜、この問題を石井さん!答えてくれるかしらぁ?」
『はい。x=2です。』
「っ…。せ、正解よ!座っていいわ。」
あー、最っ悪だ。これで10回目だぞ。この授業で当てられるの。それに……。
「おー!咲命頭ええんやなぁ!感心したわ!」
なんで担当時間外も教室にいるんだ。田中先生は。まぁ、元はと言えばおば……担任のせいであるが。事発端は数十分前にさかのぼる。
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「今から授業始めまーす!あ、良かったらぁ、田中先生も見ていってくださいよぉ!なにか、自分の授業に参考になることがあるかもしれませんよぉ?」
「あ、えっ?いいんですか!ありがとうございます!」
「もちろんですぅ!じゃあ、後ろで見ていてくださいねぇ!」
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この理不尽狂師め。自分が悪く思われたくないからって何も言わない、言えない性格の生徒にばかり当ててひどいと思うぞ。さすがに。
今は問題集を解いているのだが…。応用問題が分からない。こういう数学系は全くと言っていいほど、興味が無いため分からないところはほんとに分からない…どうしたものか。
「おっ?なんや。ここ分からんのか?」
誰かが目の前に来た!集中しすぎて気づかなかった!出来ないところがあると思われたらバカにされる…!!叩かれる…!嫌だっ…。内心ビクビクしながら顔を上げると明教さんが顔を覗き込んでいた。
「あ〜、ここか。ここな、大学入試レベル…しかも、難関大学レベルやからなぁ。難しく思うのも無理はないで。ゆっくり教えたるから、一緒に考えようか。教科書の聞かれる演習問題は終わっとるみたいやし。」
『は、はい…。ありがとうございます。』
「よっしゃ。まずはここからな。ここはxに3を代入してな?……。」
優しい…。しかも、担任よりはるかに分かりやすい。スラスラ解ける…。
「やっぱ咲命は頭ええなぁ!こんなムズい問題スラスラ解けるってすごいで!数学に苦手意識あるみたいやけど、数学の能力はあるからな。」
嬉しい…解けた。これなら、他の問題も…!!
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苦手な授業が田中先生のおかげで少し楽しく感じた。次の彼の授業も楽しみになってきた。