第8話 少女と再会
キーンコーンカーンコーン…
周りの蔑むような目と気色の悪い笑い声がこの音と共にピタリと止む。学生は授業中は苦手という人がほとんどだと思うが、私はこの時間が好きだ。
幸い…と言ってしまったら違う気もするが、友達も居なく、自由時間にはあんな感じなため、授業中にしか自由になれる時間が無い。そのため、勉強は好きな部類に入る。その上、壊滅的に頭が悪い訳でもないし、むしろいい方なので勉強は楽しい。
教科書を読んでいると教室のドアが開き、担任の先生ともう1人先生が入って…は?
「おー!咲命やないか。朝ぶりやなぁ!」
いや、なんであんたがここにいる。あと、さっきからうちの担任の目がハートになってる気がするのだが……。
「あっらぁ!咲命さん、こんなイケメンが居たなら教えてくれても良かったのに〜。」
忘れていた。このおば……いや、担任が無類の面食いであることに。明教さんは普通の人から見ればイケメンの部類に入る。間違いなく。
「じゃあ、田中先生。自己紹介お願いしますぅ。」
おい、声伸びて猫なで声になってるぞ、担任よ。気持ち悪い……。周りの様子を見てる限りでも、呆れた目で担任を見ている生徒がほぼであった。
「あ、改めて、田中明教って言います。そこにおる咲命は俺の従姉妹やから、仲良うしたってくれると嬉しいわ!俺は日本史の担当だからな!みんなよろしく!」
――最悪だ。なんでこの人はそんな事を言っちゃうのかなぁ……。視線が一気にこっちへ向いたような気がした。はぁ、私はいい意味でも、悪い意味でも目立ちたくないのだが……。
「じゃあ、自己紹介はこのくらいにして……1限目は数学IIだからねぇ。準備してよ〜?」
この系統の上機嫌のときの担任は決まって私にしか当ててこない。なんで喋らなきゃいけない?なんで…みんなの注目を浴びなければならない?良い意味での注目なら幾分かマシなのだろうが、私の場合は嫌な目線で見られるだけ。不快でしかない。
この後、めんどくさい展開になるってことが嫌でも分かり、深い溜息を吐いたと同時に、1時間目の授業開始のチャイムが鳴り響いたのだった。