第6話 少女と朝
チュン……チュン……
小鳥達が朝を伝えるかのように囀っている…嫌な朝だ。私は平日の朝を酷く嫌うのである。なんで、好きなことをして貶されて罵られるような場所へ行かなければ行けないのだろうか。
「おー、起きたか?朝飯出来とるで。」
明教さんはスーツを身に纏い、朝支度を終わらせていた。私も学校に行かなければならない(行きたくはないが)ので大急ぎで準備する。幸い、家に帰らなくてもリュックの中に制服入れていた。前、家に置いておいたら、クズにビリビリにされたからな。
一通り支度をして食卓へ行くと、こんがりきつね色に焼かれたトーストとその上に鎮座しているベーコンエッグ、それから、程よく水滴が付いている色とりどりのサラダが出迎えてくれた。
「今日から、新しい1週間の始まりや。いっぱい食べて、パワーつけんとな!」
――朝からそのテンションにはついていけない……。満面の笑みで席に着いた明教さんが、食べ始めたのを見て自分もいただくことにした。
トーストを1口かじると、サクッとした食感とジュワッとバターの味わいが口いっぱいに広がって今まであまり、朝食を取ってこなかった自分からしたら、新しい幸せを見つけたみたいで嬉しかった。
それと同時に、もし自分が普通の家庭に生まれたなら、こんな事が毎日味わえたのかと思うと少しだけゴミとクズに向けて邪な感情が芽生えた気がした。
「まぁた、難しそうな顔して。でも、泣き跡綺麗に消えたな。良かったわ。」
そう言って頭を撫でてきた。こんなことされた事、記憶の中では無いから戸惑いを隠せないでいると
「あ…気持ち悪かった?ごめんなぁ、つい無意識に撫でてしもうたわ。」
普段なら、振り払って睨むくらいのことをしてしまうのだが…何故か出来なかった。いや、したくなかった。
「おっ!?もうこんな時間なんか!咲命も、遅刻するで!」
時刻の針は7時30分を過ぎていた。今から出れば余裕を持って行ける時間だが…ここからだと所要時間も、道も分からない。
「あ、そういえばあのおっさんに学校聞いたから地図書いといたで。ほな、俺もう行かないかんから。合鍵も渡しとくで、鍵閉めといてや。」
慌ただしく出ていった明教さんを見送り、地図に目をやる…分かりやすいな。しかも、家より、よっぽど近い。
これなら、ちょっと家事しても遅刻することは無いだろう。あの様子から見るに、食器は台所の流しに置きっぱなしであろう。油ものを乗せたお皿はそのままに、コップや箸なんかを洗っていく。
全て洗い終わる頃には時計の針は7時50分を指していた。荷物を持ち、戸締りや電気の消灯を確認して靴を履きドアを開いた。
心地よい風が髪を撫でる。今までは、この風も嫌いだったのだが、今日の気持ちは少しだけ晴れやかなものとなった。
「いってきます。」