第5話 少女と夢
静かに嗚咽を漏らしながらなんとか完食し、体力を使い果たしたのか眠くなってきた。半日でこんなに人間らしくなってしまったのか…
明日からまた憂鬱な平日が始まってしまう…。なんとか今日という日にしがみつこうと粘ってみるがそんな努力も虚しく視界は暗転した。
――いっつも1人でボソボソしてて何が楽しいの?
――この文章…面白くなっ。こんな文書いて何が面白いの?
『…あんたらみたいに人のことバカにしてる人にわかるわけないでしょ。』
――はっ?あたしに逆らうなんて生意気〜…これからたっぷりいじめてやるから覚悟しとけよ。
やめてよ!……嫌だよ。
――はぁ。一体誰に似たのかしらねぇ?あ、あの人だったわ。その目…私になにか文句でも?そのふてぶてしい顔がムカつくのよ!
痛いよ!誰か……助けてっ!!
『はっ!はぁ……はぁ。な、なんだ、夢、、か。』
最悪だ……なんでよりにもよってこの夢を見るんだ。そうか、気が緩んでいたからだ。いくら明教さんが優しかろうが人間の本質は変わらない。安心しきったところを突いて利用してきたり、酷い目に合わされるなんて分かりきったことではないか。
「……んぁ、なんや?どうかしたんか?」
『……なんでもありません。起こしてしまい、すいませんでした。』
すると、明教さんが私の方へ近づき、おでこを小突いてきた。
「そんなわかりやすい嘘、ついちゃいかんよ。気づいてへんのか?すごい汗やし、目ぇ真っ赤でパンパンやで。また泣いたやろ。」
全く気づかなかった。触ってみると、嫌な湿り方で濡れた頬が自身が涙を流したことを主張してきた。これ以上無様な姿を見せまいと目に溜まってるであろう雫を手で拭おうとすると、手を掴まれた。
「あかんあかん!せっかくべっぴんさんやのに余計目が腫れてまうやろ。今冷やすもん持って来たるから待っとってな。」
何故だ……何故明教さんにはここまでバレてしまうのか。
渡された氷を目に当てながら考えているうちに、意識はまた暗闇へと落ちていった。