第4話 少女と青年との接点
お風呂から出ると、替えの服が置いてあった。
どことなく…落ち着く匂いがする。着てみるとシャツなはずなのにワンピースみたいになってしまったが…仕方ないのだろう。
――そういえば、バイトはどうしたんだ?咲命の頭に後悔と不安な気持ちが過ぎった。バイト先のオーナーさんは優しくて何度も助けてくれたんだ、今すぐにでも行って働かなければ…そう思い、居間へ向かうと声が聞こえてきた。
「…はい。すいません。そういうことですので。しばらく休ませたってください。ほな。失礼します。」
電話を終え振り向くと明教さんは
「おおっ!咲命が働いてるところ、喫茶サンフラワーやったんやな!あそこのおっさんには、世話になったで。しばらくの間休みにしたったからゆっくり休んどき。今飯作ったるでな!」
しばらくすると、すごいいい匂いがした。どこか嗅いだことのある匂い。
「ほら、出来たで。あそこで働いとるんなら、見覚えあるんじゃないか?」
目をやると喫茶サンフラワーの看板メニューあんかけパスタがあった。このメニューはバイトに来たら店長さんに最初に教えられるメニューなのである。ただ、味や見た目に厳しすぎてやめる人が後を絶たないのが難点であるが…。
「ほら、冷めたら不味なるで。はよ食べや。」
そう言われたと同時に、腹の虫が急かすかのように鳴り響いた。
「ははっ。さすがに腹は正直やなぁ。さ、食べよか。」
『いただきます。』
1口食べると暖かい味がした。というのも、私と店長との出会いも今日のような出会いであったからだ。まぁ、あの時はゴミに追っかけ回されていたところを匿ってもらったのだが。
「どうしたん!口に合わんかったか!?」
なんて事を思い返していると明教さんが身を乗り出して心配そうに顔を伺っている。ふと頬に何かが流れ出す感触。何年ぶりだろうか。人前で涙が溢れるのは。
『だ、大丈夫です…。美味しい…です。』
現に最後に温かいご飯を食べた日を忘れていた。思い返してみれば4~5日の食事に関しての記憶があまり無い。
「おぉ。焦ったで。気にせんとゆっくり食べてな。」
―――温かく、少し塩味の効いたパスタと共に不思議で暖かい、久しぶりの幸せをよく味わった。
(すいません。こちらの手違いで、完成文が載っていなかったので大幅の付け足しを致しました。)